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「昆虫大学」学長 メレ山メレ子さん (2)

メレ山メレ子さんの名前にピンとこない人も、ブサかわ犬“わさお”を世に知らしめた大人気ブロガーと聞けば、俄然興味がわくだろう。旅先で出会った人や動物、日常のひとコマに軽妙な突っ込みを入れ、ブログ読者を爆笑必至の旅に誘うメレ山さんが、近年夢中になったのが「昆虫」。昨年は、虫の気持ちを代弁しつつ虫と虫愛好家の生態を紹介するという、例のない昆虫本を上梓した。本業はメーカー勤務の会社員。その素顔とは・・・。(取材・文=松田 慶子)

 【2015年7月9日】

 
 
わたしの原動力

 

ニート時代(?)に始めた旅行記 やがて“わさお”を世に送り出す

――卒業後は、しばらく司法試験を受けるために勉強されていたのですね。

そういう名目で、約2年間ニートのような生活をしていました(笑)。勉強せず、バイトしたりブログを書いたり。『メレ腐』を始めたのは、その時期です。

――就職された後も続けられていますね。むしろ、どんどん遠方に旅行するようになっている・・・。

どうしても司法試験に意欲がわかなくて就職したんですが、当初、仕事がイヤで(笑)。ネットの世界に逃げていた。逃げる世界があってよかったと思います。
旅行は、旅行記とセットで好きなんです。わたしは、おいしいものや地元の人とのふれあいよりは、コミュニケーションの食い違いのようなことをおもしろいと思うのです。地元のおじいちゃんが話しかけてくれるけれど何を言っているかわからないとか。そういう旅先の出来事を、メレ子を通して自分の考えや体験も混ぜて表現すると、寂しくない程度に反応が返ってくる。それがちょうどいいんです。

――秋田犬のわさおも、たまたま青森を旅したメレ子さんが道端の犬を見かけて「おもしろい顔だな」と思い、「わさおと呼ぼう」とブログで紹介しなければ、無名の犬でしたね。

おもしろそうなものには、寄っていっちゃうんですよ。

「おもしろそう」がエネルギー源 深掘りよりも、浅く広く

――'09年には影響力の高いブロガーに贈る「アルファブロガー・アワード」の「ブログ記事大賞」にも選出されました。近年は昆虫に夢中になっていらっしゃいますが、昆虫の世界と出合ったのは?

直接のきっかけは、ベトナムの国立公園で見たチョウの大群の記事をブログにアップしたことです。昆虫写真家の方がその記事を読み、ご自身のブログで紹介してくださったところ、日本チョウ類保全協会の方が会誌に記事を書きませんかと声をかけてくださった。そこから虫の研究家や愛好家と知りあうようになったんです。
虫そのものもおもしろいのですが、研究者や愛好家の方々もまたおもしろい。本当に虫のことしか頭にないんです。

――2012年には昆虫研究者やアーティストが集うイベント「昆虫大学」を主宰し、昨年は昆虫に関するご著書も上梓されました。もう立派な専門家ですね。

いえ、素人です。実は今、虫以外にも興味が広がって、菌研究者と行くキノコ狩りとか骨格標本をつくる市民活動にも参加しています。

――今度はキノコに骨ですか・・・。

深掘りするよりも、おもしろそうなところを転々とするほうが合っている。もともと自分には発信できるものがない。だからこそ、おもしろそうなものがあったら、寄っていかなくてはいけないという気持ちがあるんです。いろいろなところに出かけ、ブログを書き続けるエネルギーも、そこから来ていると思います。

――ジャーナリストなのですね!

野次馬なんですよ(笑)。

趣味と仕事、両方あるからいい “おもしろそう”の芽を大切に

――「子どもには好きな仕事で活躍してほしい」と親は思うものですが、メレ山さんのように本業を持ちながら、バランスよく好きな分野で活躍するというのも、理想像の一つです。

うーん。昆虫研究家のように、人生を一つの分野にかけるという生き方はうらやましいと思います。でもそれが見つからない人もいます。憧れの職業に就いてみたら、予想と違って心が折れてしまったという話も聞きます。使い分けられる顔がいくつかあるのは、精神的にもいいのではないでしょうか。

――執筆に専念されるご予定はない?

ないですね。仕事もがんばらないと(笑)。この調子で、もっとおもしろそうなことに寄っていきたいと思います。

――好きなことを自分で見つけられなかったり、「おもしろそう」と寄っていくことに尻込みしたりする子は多いものです。

昆虫のイベントや骨格標本の活動に参加している親子を見ると、親が仕事と子育て以外の、自分が自分でいられるようななにかをもっていれば、子どもも自然に好きなものを見つけ、それを大事にするようです。親御さんご自身が好きなものを見つけようとされるといいのかもしれませんね。その際は、虫やキノコのような生き物分野はおすすめです。肩書や立場に関係なく、迎え入れてくれますよ。

――ありがとうございました。

Profile

メレ山 メレ子 さん (Mereco Mereyama)

 1983年、大分県生まれ。東京大学法学部卒業。学生時代からブログを始め、メーカー勤務の傍ら、2006年より写真と文章による旅行記『メレンゲが腐るほど恋したい』スタート。2008年、青森県鰺ヶ沢町のイカ焼き店で飼われていた秋田犬を「わさお」と名付けブログで紹介したところ話題となり、わさおが一躍スター犬に。09年ブログが『メレンゲが腐るほど旅したい』(ブルース・インターアクションズ)として書籍化。一方、旅行先で虫の魅力に目覚め、虫に関する雑誌連載や寄稿を行うように。2012年からは昆虫研究者やアーティストが集うイベント「昆虫大学」を主宰。昆虫観察会やトークショーでも活躍。2014年『ときめき昆虫学』(イースト・プレス)上梓。


 

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