数学の先生がよく「ミスしたところは勝手に消しゴムで消さないように」という指示を出されています。間違えたところがあとでわかるように、きちんと赤で訂正しなければいけない。ところがどうあっても慌てて消してしまう生徒がいる。恥ずかしいから一刻も早くなかったことにしたいという心理なのでしょう。そして正しい答を写しておしまいにしてしまう。
気持ちはわからないでもないのですが、そこはやはりきちんと赤で直しておいてください。

本当の自分と向き合うことはじつに大切なことです。できていないのなら「できていないご自身」ときちんと向き合う。そして何が悪かったのだろう、どうしたら次はできるようになるだろうと冷静に分析する。ごまかさない気持ちがないと進歩しません。
同じく何でもかんでも「ケアレスミス」で済まそうとする生徒がいますが、それもまた本当の自分と向き合う気持ちが不足しています。大きなミスをする自分が許せない。だからすべてケアレスミスであり、本当はできていてもおかしくなかったという物語を作ってしまう。

ときにはご家庭全体で「ケアレスミスが多いね」で終わらせようとしていることさえあります。親子ともどもお子さんがまだまだ努力不足であると認識したくないということなのでしょう。
それではいつまでたっても向上しません。できなかったところはできなかったものとしてできるようにしていかなければならない。「できなかった→できるようになった」は大変な進歩ですが、「間違えたのにできるような気がしていた→だから真剣に見直す気が起きない」ではまったく進歩がないことがわかりますか。

間違えること自体は恥ずかしいことではありません。同じことを三度も四度も間違えることこそ、恥ずかしいと言えば恥ずかしい。真剣に自分のものにしようとしていないからです。
いずれにせよ等身大の自己に真剣に向き合う気持ちは何よりも大切にしてほしいと思います。勉強のことだけではないですね。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。