私はふだん教室で中1中2中3の国語の勉強を見ています。どんどん成績が伸びていく生徒もいるのですが、なかなか伸びない子もいます。なかなか伸びない生徒というのは頭が悪いわけではなく、だいたいはやることが多すぎて混乱しているのです。
公立高校でもたとえばある高校の校長先生は、特別なコースに進むのであれば部活動はむりだとはっきりおっしゃっていました。楽な部活動であっても楽しんでいる余裕はないというのです。

私立高校の特待生や最上位のクラスもそんな感じですね。そうしたクラスは国公立大学を目指すことになる。すると勉強以外のことのことをしている余裕はほとんどなくなってしまうのが現実です。暇がないというよりほかのことについて悩んだり迷ったりという精神的負担が邪魔になる。
生活を整理し、勉強を中心に持ってくる。それだけでは味気ないでしょうから趣味活動もいろいろ楽しみますが、基本はあくまでも勉強であり勉強の邪魔になる何かが出てきたらすぱっと捨てる気持ちがないと続きません。

文武両道というのはあくまでもそうありたいという理念であって、文武両道を目指していたから勉強が思うようにできなかったなどというのは本末転倒です。これはもっとも高い志望校を目指すのであればという話ですよ。それぞれ目標は違うわけで、その高さによって考え方は変わってきます。
逆に何となく楽しく生活を送って入れる高校や大学に入るという発想もあっていいと思います。どう生きたいかということですよ。

ただこの法則は現時点でもつねに働いています。部活動をすることは悪いことではありませんが、そちらが大変でろくに勉強ができないということであれば、最上位の高校を狙う人間としてはやはり本末転倒になりますね。
娯楽や趣味やお稽古ごとだけではなく、友だちづきあいも同じです。それぞれの時間はそれぞれの宝であり共通した財産ではありません。自分で大切にする、それしかないのです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。