音読についてはその重要性を何度強調してもきりがないですね。国語でも英語でも大切です。昔の秀才はじつによく音読しました。
若いころ、湯川秀樹博士の自伝を読んだことがあります。湯川博士は日本ではじめてノーベル賞(物理学賞)を受賞されたすごい先生ですが、その湯川先生が本当に勉強になったと書かれていたのが子どものころの漢籍(漢文ですね)の素読でした。

おじいさまに直接習われた。大きな声でおじいさまが読む通りに復唱する。意味は正確にはわからなかったみたいですが、そもそも素読というのは内容がよくわからなくてもいいのだと言われていました。
声を出して百回も読めばひとりでにわかってくるというのです。ひたすら姿勢を正し、大きな声を出し繰り返し復唱する。

物理学の博士がそれがいちばん勉強になったとおっしゃるのも妙だなと当時は考えたりしていたのですが、いまは先生が示唆されようとしたところがわかるようになりました。
その音読を英語でさえあまりやらないという中学高校生(大学生もそうか)がいらっしゃるのは困ったものです。たくさん読みましたというので聞いてみると、2、3回で終わりにしている。小さな声で2、3回。それで音読はいつもしていますと胸を張る。

桁が違うでしょう。最低20回は読む。私が以前こう書いたら英語の先生に20回では足りませんと指摘されてしまいました。最低50回と書いてくださいと言われました。
読まなくたって意味はもう完全にわかっているから・・・という生徒がいます。しかし意味がわかるというのは、英語ではなく日本語の世界でしょう。英語の勉強であれば変な表現ですが、英語が英語のまま理解できるようになるべきです。

また「わかったよ、読めばいいんだろ」という感じで感情も何もこめないで音読するのでは効果がありません。感嘆文なんか本当に感嘆しながら読まないといけない。身体で覚えるという表現がありますが、全細胞にしみわたるように努力する。声に出すだけではなく、感情や感性まで総動員することで身体にしみわたる勉強が可能になります。くれぐれも「形だけ」にならないようにしてください。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。