物事に上達しようと思ったら素直にならないといけません。我流を捨てることです。いずれはご自身による工夫が必要にはなってくるかもしれませんが、入口のところで勝手なことをしないというのは大切な要素だと思います。
当人は勝手なことをしているつもりはないのですよ。しかし、指導するほうから見ると勝手なことをしている。その心の隙が非常にもったいない。

たとえばこういうことがあります。
漢字を練習するときに意味を調べて、3回ずつ書いてごらんと言っています。声に出して発音しながら書いてごらんと。
かりに「実践」という熟語を覚えようとしているとしますね。「実戦」という言葉もある。どう違いますか? まず辞書で確認する。そのあとで実践、実践、実践と発音しながら3回書く。

全然やらないわけではないのです。みんなやってくれる。ただ決められた通りにはやらない人も出てきます。まず「何となくわかるから」と言って「実践」と「実戦」の違いを調べない。質問してみると「実戦」は確かにわかっても「実践」の意味は正確に言えなかったりしますね。そのままでよしとしている。
さらにこの字は簡単だからという判断で1回しか書かない。あるいは1回も書かずに見ただけで終わりにしている。

それでも確かに小テストはできるかもしれません。ただそうやって楽に楽にしていこうという姿勢が非常に危険ではあると思います。出だしで言われた通りにできないようでは先にいってますますそうなってくる。前回も書いた英語の音読二十回が十回になり五回になり・・・とうとうやったりやらなくなったりになる。
それは工夫ではないですよ。部活の後輩が毎日1キロは走りなさいというあなたのせっかくのアドヴァイスを勝手に200メートルに短縮していたらどう思いますか? 工夫しているなあと感心したりしますか? それとも、素直に努力できないようではだめだなあと思いますか? 同じことだと考えてください。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。