将棋界で中学生の新四段(プロ棋士)が大活躍して話題になっています。彼については以前から注目していていろいろな記事を読んできたのですが、いわゆる難関中学に通われているところにも興味を持ちました。
他の小中学生と違って将棋の勉強があるわけですよ。そちらが本職ということになります。本職の勉強をたくさんしなければならない。ところがテレビ映像から優秀なクラスメートからも尊敬されている様子がわかりました。これは秘密があるに違いない。

と思ったのですが、結局優秀な他の子と同じでした。彼もまた活字を読む習慣を持っていました。小学校四年生ぐらいから毎日大人の新聞を読んできたそうです。まず一面を読む。次に社会面から順に十数分読んできた。十数分というところまで、私がふだん生徒たちに話しているのとまったく同じです。大人の新聞を毎日15分ぐらい読みなさいと言ってきました。小学生にできたのですから中学生高校生の方は当然できるはずです。

特派員メモがお好きだと書かれていました。またアルコール依存症の方の特集がとくに印象に残ったとも。そういうことに好奇心が持てるのは大人の証拠です。
本も好まれるそうです。司馬遼太郎、新田次郎、沢木耕太郎という名前があがっていました。では皆さんも今日からこの作家を読めばいいのかというとそういうことではない。この先生方を見つけるまでに、彼自身がどれだけ膨大な読書をしてきたかということに思いをめぐらせてみてください。

いろいろと比較して、はじめて面白さはわかるものです。そうやってあれこれ回り道をしてご自身が本当に好きな作家に出会う。その「旅路」全体が大切なのであり、秀才のどなたかが読んでいるものを読みさえすれば手っ取り早く力がつくというものではありません。自分なりの旅路を作らないと。
できるようになりたいけどほとんど読まないというのは、力持ちになりたいけど筋力トレーニングはほとんどしないというのと同じです。覚悟を決めるしかないですよ。


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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。