勉強というのは体力的な面ももちろん大切ですが、メンタルの部分はそれ以上に大切です。勉強する人間の精神面がどういう状態であるかということですね。
私は教室にいるのでよくわかるのですが、中学生が(全員ではありません)まったくあいさつができなくなったりする時期があります。そして、そういう時期は概して勉強のほうもうまくいかなくなっています。
面白い現象ですが、事実ですのでちょっと考えてみたいと思います。

逆にいまの自分の状態をそこから推し量ることもできそうですね。普通にあいさつができない(したくない?)時期は、勉強が円滑に進まない可能性があります。
あいさつをしなくなってしまった生徒に私はなぜあいさつをしない? と文句を言ったことは一度もありません。私自身そういう時期があったからです。くわしくは省きますが、周囲の大人に猛烈に腹をたてていた時期がある。はじめは両親に対する反発だったのが、やがて大人全体を敵にまわしたくなってきました。

大人はずるいから絶対に誰にも頭を下げないと心に決めた。自然に頭を下げたくなる相手もじつはたくさんいたのですが、いま頭を下げたら負けだと思ってとにかくあいさつしませんでした。
そういう「怒れる若者状態」のときは勉強どころではありませんでした。そのときの私と同じような何かが、彼らの中で進行している可能性はあります。私はこのことを保護者の方ではなく、生徒ご本人に気づかせたいという気持ちを持っています。

そんなにぴりぴりしていたら勉強どころじゃないだろうと。
推薦入試で合格していくような生徒たちは、本当に日ごろから愛想がいいですよ。あいさつだけではなく、こちらに向かって笑顔を見せてくださったりします。こんにちはで笑顔。さようならで笑顔。それだけ余裕があるのですね。
大きなことを成し遂げるために、精神的に柔らかな空気の中で生活できていることは大切な要素だと思います。心のありどころを確認するということですね。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。