たとえば何かテストを受けたとします。五つ問題があった。科目はどれでもいいことにしましょう。Aさんは四つできて80点、Bさんは二つできて40点でした。80点のAさんは喜んで40点のBさんはがっかりする。
ただこういうことがありました。Aさんは高得点に満足してやり直しをしない。心のどこかに一つぐらいはミスしたって仕方ないじゃないかという気持ちもある。Bさんのほうは三つもミスしてしまったと反省して、その三つを自力で解けるところまで持っていきました。

同じテストを実施したらどうなりますか。Aさんは相変わらず80点の高得点をとるでしょう。しかしBさんはミスした三問を完璧に復習したわけですから、同じテストであれば100点をとるでしょう。そのテストに関する限り、あっという間にAさんはBさんに追い越されています。
こうしたことの積み重ねが、できる人とそれほどでもない人の差につながってくるのです。

テストでも学校の授業でも通信添削でも塾や予備校の授業でも、それぞれ「わからないところ」というものがありますね。人それぞれです。仮にわからないところがほとんどない人でも、僅かに残っている不明の点をそのままにしておけば結局実力は変わりません。わからないところがたくさんあった人でも穴をぜんぶ埋めてしまえば、少なくともそのテーマに関するかぎりどんな秀才にも負けなくなるでしょう。
自分のできないところを見つける。そしてそれをできるレベルまで高める。勉強というのはその繰り返しです。

できないところを見つけるためにテストを受けているのに、できないことがはっきりしたところをそのまま放っておくというのは、考えてみればすごく変な発想です。できない部分こそが自分に欠けているところであり、そこを埋めていくことで豊かになれるチャンスがある。
難しい問題ができるかどうかはたいした問題ではありません。大切なのはあなたができない問題をできるようにするクセをつけているかどうかということです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。