自分の専門教科は国語なのですが、ときどき受験間際になって国語のテスト問題を解き終わらないのですが・・・と相談にいらっしゃる受験生がいます。読みきれない。書ききれない。とくに難解な長文を出す高校の問題が終わらない。
工夫して早く読みなさいとしか言えないですよ。とにかく早く読む。だからこそ、低学年のときからこちらは読書をしなさいとずーっと言ってきたのです。一日20分でいいから毎日読みなさいと。

読みきれないとおっしゃる生徒は、中3の夏ごろから教室にいらした方が多い。そのころはさすがに「読書でもしようか」という余裕がなくなっています。全教科やることがたくさんある。本当はそれまでにしっかり読んでおかなければならなかった。しかし、その当時は「読んでおかないと将来困りますよ」とアドヴァイスしてくださる方がいらっしゃらなかったのでしょう。いまの世の中活字を読まなくてもいくらでも生活できてしまう。その結果、受験が近づいて慌てることになった。

私たちは活字を読み、それを映像化させます。無意識のうちにそうしている。たとえば「熊が出た」と書いてある。熊の映像を思い浮かべますね。何色ですか? 黒色か褐色か灰色か。 熊だけではありません。山や樹木も何となく思い浮かべるはずです。場合によっては動きまで想像する人もいるでしょう。立ち上がっていますか? 四足ですか?
文章をすばやく読むためには、どうしてもそういうやわらかな想像力が必要なのです。ところが読む習慣のない人は想像するのに手間がかかる。

読むものははじめは何でもかまいません。サッカーが好きならサッカー選手の、芸能界に興味があるなら芸能人のエッセーで十分です。音読しなくてもいいですよ。読んで楽しむ。読むことに没頭する。それを日々心がける。
あいだを空けるとせっかくの習慣がすぐになくなってしまいます。筋力トレーニングと同じであると考えてください。サボれば衰えます。毎日読むことをご自分に課してください。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。