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2006年度 「新」司法試験合格者発表
2006.09.28

 21日、法務省が2006年度から導入された新司法試験の合格者を発表しました。合格者数は 1,009人、受験者数は 2,091人、合格率は48.3%となりました。今週のWeekly Eye-zでは、結果の詳細と、新たな制度である新司法試験について解説していきます。
〔参考〕法務省HP:平成18年新司法試験の結果

「新」司法試験の概要

■「新」司法試験とは

 法科大学院修了者を対象にした司法試験。質の高い法曹人口を増やすため、2006年度から導入された。

■「新」司法試験導入の背景

 近年、「専門的な知識を要する法的紛争の増加」、「弁護士人口の地域的偏在の是正」 などを理由に、「法曹人口の大幅な増加」の必要性が叫ばれている。そこで国は「2004年には司法試験合格者を年間1,500人に、2010年には3,000人に」という目標を掲げ、法曹養成制度の改革に着手し始めた。
※法曹人口が目標どおりの増加をたどれば、2018年ころまでには、実働法曹人口は5万人規模(法曹1人当たりの国民の数は約2,400人)に達することが見込まれている。

■従来の司法試験との違い

 しかし、ただ司法試験の合格者を増やすだけでは、法曹の質が低下してしまう。また、従来の司法試験(以下、旧司法試験)は、

  ◇合格者数の増加にも関わらず受験競争は依然として激しく、受験技術優先の傾向が顕著。
  ◇学生が予備校に大幅に依存し、「大学離れ」「ダブルスクール化」という状況を招いている。

 というマイナス面が指摘されていたため、「(これまでの)司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を新たに整備する」として、2002年法律改正がなされ、2004年からの法科大学院設置と2006年度新司法試験導入が決定した。

■「新」司法試験 受験までの流れ

 
1.統一適性試験に合格=法科大学院入学資格
統一適性試験は、(財)日弁連法務研究財団主催の「法科大学院統一適性試験」と、大学入試センター主催の「法科大学院適性試験」の2つがあり、どちらを受験すべきかは各法科大学院が指定する。

2.各大学院独自の入学試験に合格

3.法科大学院修了=新司法試験受験資格
■修業年限
大学院の標準修業年限は3年。ただし、法学既修者(≠法学部卒業者。各大学院実施の認定試験による)は2年。
■その他の受験資格
法科大学院に行かなくても、「司法試験予備試験」に合格すれば新司法試験を受験できる。ただし、この試験が実施されるのは、従来の司法試験廃止後の2011年からの予定。

4.新司法試験(2006年度〜)に合格
■試験科目
短答式3科目(公法系、民事系、刑事系)と論文式4科目(公法系、民事系、刑事系、選択1科目) 。 短答式と論文式は同時期に行われ、受験者はすべて両方の試験を受験する。口述試験は実施されない。
■受験制限
受験資格を得てから、5年間で3回まで受験可能。
※ 2004、05年度の司法試験も新司法試験の受験とみなされ、回数制限の対象としてカウントされる。

5.司法修習(1年間)

6.弁護士・検察官・裁判官に

■旧司法試験について
(※2010年までは旧司法試験と「新」司法試験が並存する)

 今年度の合格発表は11月。 2次試験には口述試験が課され、合格率は例年3%程度。2005年度は、受験者数 39,428人、合格者1,464人で、合格率は3.71%だったが、今年度は500〜600人と大幅に減る見通し。合格後、1年4カ月間の司法修習を経て、法曹(裁判官、検察官、弁護士)の仕事に就くことができる。

試験
受験資格要件
科目
形式
1次試験 なし 一般教養・外国語 短答式及び
論文式
2次
試験
短答式
試験
一次試験合格者または
大学の教養課程修了者
憲法・民法・刑法から各20問 5択のマーク式
論文式
試験
短答式試験合格者 憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・刑事訴訟法から各2問 各問2000字
程度
口述試験 論文式試験合格者 憲法・民法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法 口頭試問

「新」司法試験、合格率は48.3%
 では、「新」司法試験の合格状況を見ていこう。

■受験者数・合格者数

 今年度の受験者数は、法科大学院の法学既修者コース(2年コース)を今年の春に修了した2,091名。 そのうち1,009名が合格した。

「新」司法試験 受験者数・合格者数
受験者

合格者
(※1)

合格率 短答式試験
合格者
(※2)
2,091
1,009
48.3%
1,684
※1 各科目において素点の25%点以上かつ、短答式試験と論文式試験の総合点915点以上の者。
※2 各科目において満点の40%点以上かつ、各科目の合計得点が210点以上の成績を得た者。

  合格者の平均年齢は28.87歳で、最高年齢は58歳、最低年齢は23歳となった。法務省の記録が残る1962年以降では最高齢とされた昨年度の平均年齢29.03歳の数値は下回ったが、取り立てて変化なしというところ。さらに性別構成を見ると、男性781人(77.4%)、女性228人(22.6%)だった。
 また、合格者の司法試験受験回数(2004、2005年度の旧試験、2006年度の新試験が対象)は、1回:748人、2回:247人、3回:14人で、7割以上の受験生が1回での合格を果たしていることが分かる。
〔参考〕旧司法試験第二次試験 受験者数・合格者数

二次試験
受験者

合格者
合格率
短答式試験
合格者
論文式試験
合格者

2005年度

39,428
1,464
3.71%
7,637
1,454
2004年度
43,367
1,483
3.42%
7,438
1,536
2003年度
45,372
1,170
2.58%
6,986
1,201
(注)論文試験と口述試験は同一年度に合格しなくてもよい。

■法科大学院別合格者数
新司法試験 法科大学院別合格者数
法科大学院 2006年度
受験者数 合格者数 合格率
1
中央大学 239 131 54.8%
2
東京大学 170 120 70.6%
3
慶應義塾大学 164 104 63.4%
4
京都大学 129 87 67.4%
5
一橋大学 53 44 83.0%
6
明治大学 95 43 45.3%
7
神戸大学 62 40 64.5%
8
同志社大学 88 35 39.8%
9
関西学院大学 64 28 43.8%
10
立命館大学 102 27 26.5%
 
 法科大学院別に見ると、最も合格者数が多かったのは中央大学法科大学院だった。ただし、合格率を見ると、54.8%となっており、全体の合格率をやや上回るにとどまった。合格率では、島根大学法科大学院の1名受験で1名合格の100%を除外すると、一橋大学法科大学院の83.0%が最も高い数値となった。
 大学従来の試験において、2年連続で最多合格者数を誇った早稲田大学は、合格者が12名(合格率63%)となっているが、これは法学未修者コース(3年コース)を標準にしているため、受験者が少なかったのが原因とされている。
〔参考〕旧司法試験 大学別合格者数
※( )は2004年度の順位
大学
2005年度
2004年度
1
早稲田大学 (1)
228

226

2
東京大学 (1)
225
226
3
慶應義塾大学 (3)
132
170
4
中央大学 (5)
122
121
5
京都大学 (4)
116
147
6
大阪大学 (8)
57
45
7
一橋大学 (6)
51
57
8
同志社大学 (10)
48
30
9
名古屋大学 (12)
32
26
10
神戸大学 (9)
30
33
北海道大学 (18)
30
16


法曹志望者は、動向を要チェック
■司法試験予想合格率の誤算

 新制度が決定した当初は、法科大学院修了者の新司法試験合格率は7、8割になるとされていた。従来の司法試験の「3%」と比較すると雲泥の差であり、期待を集めた初年(2004年)度の法科大学院の「志願倍率」は13.0倍(実質倍率は4.4倍)となった。

法科大学院入学者選抜実施状況概要
年度
募集人員
志願者
志願倍率
受験者
合格者
入学者
過欠員
既修者

未修者

2006(74大学) 5,815 40,341 6.9 29,592 10,006 2,179 3,605 -31
2005(74大学)
5,825
41,756
7.2
30,310
9,681
2,063
3,481
-281
2004(68大学)
5,590
72,800
13.0
40,810
9,171
2,350
3,417
177

注1.「受験者数」は、2段階選抜において第1段階選抜で不合格となったものは除く。
注2.「入学者」の「既修者」は修業年限2年の短縮コース入学者。「未修者」は同3年の標準コース入学者。


 しかし、当初想定していたよりも大幅に上回る数の法科大学院が参入し、どう計算しても7、8割という合格率は実現困難となってしまった。法務省は2004年10月、新司法試験実施の初年度となる2006年度の合格者数を新・旧の両試験とも800人ずつとし、受験者が約2,300人とされる新試験の合格率を34%とする試算を発表して大学院側の反発を買い、その後、新試験の合格者数を900〜1,100人とした経緯がある。しかし、それでも実際の合格率は5割に満たない結果であり、前年度の浪人や法学未修者(修業年限3年)が参入する2007年度以降は、2〜3割程度に留まると言われる。

 当初の予定より大幅に合格率が低くなることが明らかになり、法科大学院志願者は減少傾向にある(上表参照)。初年度、全入学者の48.4%を占めた社会人は、37.7%(2005年度)、33.3%(2006年度)にまで落ち込んでいる。その程度の合格率では、高い学費を払い、休・退職してまで法科大学院で学ぶのはかなりリスクが高い、と考える人が増えるのは当然であろう。

■法科大学院の序列化

 また、乱立した法科大学院の序列化も必至と見られている。新司法試験では、合格者を輩出できなかった法科大学院が4校あった。また、合格者数はそこそこ輩出しても、合格率の低い法科大学院もあり、改善していかなければ志願者は集まりにくくなるであろう。
 来年度は法科大学院のめだまのひとつであった法学未修者コースの修了生が新試験を受験する。未修者コース修了生をどれだけ合格まで導くことができるのか注目されるところである。
 
■法曹志望者は動向を要チェック

 この過渡期におけるさまざまな状況は、今後の司法試験制度のあり方、法科大学院の序列化、学部在学中の身の処し方、さらには法学部入試にも影響を与えることになると考えられる(現に法科大学院が開設された2004年度は、東大をはじめ多くの大学で法学部定員が削減された)。
 法曹志望者は、こうした動向を継続してチェックし、スムーズに司法試験合格にたどりつく道筋をよく考えていく必要があるだろう。
 


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