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パティシエ 辻口博啓さん (2)

今回ズームアップするのはパティシエの辻口博啓さんだ。ケーキ店「モンサンクレール」やチョコレート専門店「ル ショコラ ドゥ アッシュ」、和スイーツ店「和楽紅屋」など、さまざまなスイーツの12ブランドを展開。近年は「スーパースイーツ製菓専門学校」の校長を務めるほか、「スイーツ育」を提唱するなど活躍のジャンルを広げている。なぜ、どうやって、そんなに前進し続けられる? エネルギー源をうかがった。(取材・文=松田慶子)

 【2015年4月9日】

 
 
原動力

祖父の死をきっかけに生を意識 逆算し、今すべきことを精いっぱいに

――では、目標に向かって努力し続ける、そのエネルギーはどこから?

「いずれ死んじゃうんだから、できること、やりたいことがあるなら精いっぱいやろう、という思いに尽きる。
ぼくはおじいちゃんっ子だったんですが、小学生のころ祖父が亡くなり、『死んだらどうなるんだろう』というテーマにぶち当たった。そして、『自分が自由に動ける時間は限られている。やれることをとことんやらないのは、もったいない』と考えるようになったんです。ケーキを知り、ケーキ職人を志すようになってからは、『与えられた時間のなかで、1人でも多くの人に感動してもらえるお菓子を作り続けよう』と。
だから、ぼくはいつも逆算している。死ぬときをゴールとし、何歳のときにどんなレベルの仕事をする、そのためには何歳までにこんな力をつけておくべき、と」

――「これができたから、次はこれに挑戦しよう」と、加算していくのではなく、逆算する?

「そう。だらだらしていると、チャンスに気づかない。『まだ次があるさ』となり、気づくとなにもしないままに年をとってしまう。ぼくはそれが怖いんです」

すべては喜ばれるお菓子のため 異業種とのコラボも積極的に

――辻口さんは、ケーキ以外にも和洋菓子、豆菓子を手がけるほか、農園経営にも着手している。

「それも、『感動してもらえるお菓子をつくる』という目標に向け、逆算してのこと。
1998年に「モンサンクレール」を立ち上げて以降、次々に店を開き、ご縁があってベトナムの茶園や三重県のイチゴハウスの経営も始めた。昨年はソウルの「バンヤンツリー」という高級ホテルの中にも出店しました。製菓専門学校を設立したほか、いくつかの大学で教べんもとっています。いずれも逆算し、『今だ』と思わなければ、怖くて挑戦なんかできなかった。
でも、それもこれもすべてお菓子のため。ぼくはお菓子が大好きで、お菓子の神様と心中したいと思っている(笑)。もっと新しいものをつくれないか、別な表現ができないかと、常に自分で壁をつくり、乗り越えてきた」

―― 一流パティシエの名を欲しいままにしている今も、次々に新しい壁が見つかるのだという。
「いずれはカカオ農園を経営し、自分がイメージするカカオを作りたい。そうすれば、もっと個性的なケーキを作ることができると思う」

「任せてもらえる」「喜ばれる」経験を子どもに多くさせたい

――子どもに、一生をかけたいと思えるほど夢中になるものを見つけ、精いっぱい生きてほしいと願う保護者の方は多いだろう。

「一生懸命に自分の『生』を生きるということは、教えづらいもの。『自分が本当にやりたいことをやろう』という子どもも、あまり見かけない。人目を気にして、突出することを嫌う子どもが大半ですね。
多くの子どもが、自信をもてないでいるのだと思う。常に親の顔を見て、親の意をくみ取ろうとする・・・。それも大事ではあるけれど、そればかりでは自立できないし、自分の道を歩めっこない。
だからこそ、親から離れて、1つのことを最初から最後まで自分でして、ほめられる経験が絶対必要。ぼくが子どもにお菓子作りを勧める理由もそこにあります」

――最初から最後まで・・・。大人はつい、手を出してしまいがちだ。

「見守ることは大事ですね。お菓子作りでなくてもいい。子どもが興味をもったことを、黙ってさせて欲しい。そのためにも、子どもが何に興味をもっているか、子どもを見て探ること。子どもをよく見ることに尽きると思いますよ」

――ありがとうございました。

Profile

辻口 博啓 さん (Hironobu Tsujiguchi)

パティシエ。1967年、石川県七尾市の和菓子屋の長男として生まれる。小学3年生でパティシエを志し18歳で上京。都内やフランスの菓子店で修業を積む。23歳のとき、史上最年少で「全国洋菓子技術コンクール優勝。29歳で世界大会『クープ・ド・モンド』優勝。その後も数々のコンテストで優勝し世界に名を馳せる。1998年、東京・自由が丘に「モンサンクレール」をオープン。コンセプトの異なるブランドを次々と展開する一方、石川県に「スーパースイーツ製菓専門学校」を開校するなど人材育成にも尽力。2011年、一般社団法人日本スイーツ協会を設立。スイーツを通し人間力を育てる「スイーツ育」を提唱。


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