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家庭で磨く言語技術 (2)

 【2015年3月26日】

 

【インタビュー】言語技術は良好な人間関係につながる(2)

 

家庭では「なぜ?」を心がける 質問は具体的に!

――家庭で言語技術を教える意味はありますか。

 もちろんです。自分で考え、発言し、意見をぶつけあって調整するという経験は、絶対に必要。学校では周りの人の顔色をうかがってしまい、自由に発言しにくいという現状があるならば、家庭をその場にしたいものです。小学生のうちに言語技術を磨いた子どもは、思春期になっても親に対して必要なことをきちんと話すので、良好な親子関係が維持できますよ。

――では、具体的な方法をお教えください。

 まず、親子の対話のなかで、子どもにできるだけ「なぜ?」と問うことが基本です。根拠を説明させることは、論理的な思考をはぐくむ第一歩になります。
 たとえばテレビでサッカーを観ながら、「どっちが勝つかな」「●●チームだよ」「なぜ?」。ドラマを観ながら、「あなただったら、このときどんな行動をした?」「わたしならこうしたかなぁ」「どうして?」というぐあいです。
 注意したいのは、「どう?」と、漠然とした質問をしないことです。「今日、どうだった?」と聞かれても、子どもは答え方がわかりません。言語技術が身についていない子どもが相手であるほど、「今日は放課後になにをして遊んだの?」というように、できるだけ焦点をしぼった質問にしましょう。
 もう1点注意したいのが、しつこくしないこと。食事中や遊びに没頭しているときにいちいち質問すると、子どもはイヤになってしまいます。一緒にテレビを観たり、本を読んだりするときや、「これがいい!」「これはイヤ!」と子どもが主張したタイミングで質問するといいでしょう。

「別に」「わからない」はダメ! 察しの悪い親になる

――子どもが話に乗って来なかったらどうしたらいいですか? 話しかけても「別に」「微妙」、単純な質問にも「わからない」と答えることがよくあります。

 「別に」や「わからない」は、コミュニケーションや思考を放棄する無責任な態度です。「“別に”は禁止」とはっきり伝えましょう。
 ただし、質問が漠然としているため、答えられないことがあります。前述のように焦点をしぼって質問し直してみるといいでしょう。また、思考の手がかりがなくて「わからない」と答えている可能性もあります。どこまでわかるか確認するといいですね。
 たとえば「おやつはなにがいい?」「わからない」なら、「なにがあるかわかる?」「甘いお菓子としょっぱいお菓子、どっちがいい?」「これとこれ、どっちがいい?」と、具体化して、必ず答えさせる。

――大人が「別に」「わからない」を受け入れると、思考し言葉にする経験が減ってしまいますね。

 そうです。自分の気持ちを分析する機会も減ります。
 日ごろから察しの悪い親になることも、家庭で言語技術を磨くうえで基本となる態度です。「ママ、紙」と言われても、「紙がどうしたの?」と察しの悪いフリをして、「ママ、宿題の絵をかくから画用紙をとって」と、文章として言えるまで、根気よくつきあいましょう。
 ただしこれも毎回では子どもがイライラします。3回に1回くらいでいいでしょう。

絵本の分析や「問答ゲーム」を実践し、親子で論理的思考を身につける

――ほかに、言語技術を磨くトレーニングはありますか?

 低学年なら、絵本を分析しながら読むことがすすめられます。絵を見ながら「この犬は、どんな気持ちなのかな?」「どうしてそう思ったの?」と問いかけ、分析させます。子どもが「悲しそう。だって眉毛が下がっているんだもん」と、根拠を示しつつ考えを話せたら、「そうかあ、この犬を見て悲しそうって思ったんだね」と受け止めると、子どもは「こういう言い方をすると、相手にわかってもらえるんだ」と理解できます。
 高学年の場合、子どもの好きな本やマンガを題材にしてもいいですね。

――好きな話題なら、子どもも話にのってきそうですね。

 「問答ゲーム」もすすめられます。「●●は好きですか?」と質問し、「わたしは●●が好きです。なぜなら△△だからです」という整った文章で答えるまで、質問を繰り返すというゲームです。たとえば「あなたは縄跳びが好きですか?」「好きです」「だれが好きなの?」「わたしです」「きちんとそれを入れて言ってみて」「わたしは縄跳びが好きです」「どうして?」「おもしろいからです」「続けて話してみて」という対話になります。正しい文章を組み立てる力、論理的に伝える力を育てることが目的です。ゲーム形式にするのは、子どもの感情を傷つけず、目的を認識させやすいから。週1回程度のペースでやってみましょう。
 親が論理的に話せなければ、子どもは習得が困難です。親子で一緒にトレーニングをするといいですね。

――ありがとうございました。

「問答ゲーム」の例
三森ゆりか先生
三森ゆりか(さんもり・ゆりか)先生

つくば言語技術教育研究所所長。上智大学外国語学部ドイツ語学科卒。商社勤務を経て上智大学大学院中退。中高の4年間を旧西ドイツで過ごした経験、および商社勤務時代に海外の人との交渉に立ちあった経験から、言語技術の重要性を痛感。ドイツ式の言語技術教育システムを参考に独自でカリキュラムを考案し、1990年に上記研究所を開設。これまで幼稚園児から高校生まで、約1000人の生徒にトレーニングを実施してきたほか、およそ10校の小学校〜高校でも指導。日本サッカー協会が開校したJFAアカデミーでも指導している。著書に『論理的に考える力を引き出す―親子でできるコミュニケーション・スキルのトレーニング』(一声社)ほかがある。


 

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