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工学部系統

青山学院大学 理工学部

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プロフィール

――青山学院大学理工学部の特色を教えてください。

【先生】これは他大学と比べて恵まれた環境だと思うのですが、一つの研究室を教授と助教で運営する体制になっており、それが制度化されています。必ず複数の教員がいることになりますから、目が行き届き、学生への指導が手厚くなるというメリットがあります。

また、今は電気と機械、情報と電気など、複数の学科にまたがる「境界領域」と言われる研究が増えています。ロボット工学などがその代表的なものですが、青山学院大学理工学部には境界領域をやりたいという学生が学科を超えて卒業研究ができる制度もあります。これも特色の一つでしょう。

また、電気電子工学科の特色ですが、1年生から実験の授業が多いです。とにかく実験重視で体験して覚えなさい、というのが私たち電気電子工学科の教育ポリシーです。実体験したものはなかなか忘れにくいものですからね。

【卒業生】機械、化学の実験もやりますし、旋盤の実習などもあります。他大学の電子工学系の出身者にその話をすると、けっこう驚かれますよ。

――先生の研究内容について教えてください。

【先生】「世の中の役に立つ電子回路」を作るのが研究の目標です。電子回路は全ての技術の基盤ですが、特に日常生活をより便利・快適・安全に、という視点からの技術開発を目指しています。専門分野としては電子回路工学、LSI設計になります。

私はNTTの研究職に就いていたこともあるのですが、その時代に現場で身をもって体験した通信機器の大変化がニつあります。一つはアナログ音声からデジタル音声への転換です。その経験を活かした、デジタルオーディオの基礎技術は現在の研究テーマにもなっています。

もう一つの大変化、それは公衆電話や家庭用電話から、自動車電話、携帯電話、そしてスマートフォンという形の変遷を通じて実感したことなのですが、通信機器の究極の姿は「持って歩く」ではなく「身に着ける」ものだということです。ここから生じたニつ目の研究テーマは、ウェアラブルな、すなわち「身に着けることができる電子機器」です。あるいは「ユビキタス」というキーワード。身に着けることによって「いつでも・どこでも」役に立つ、そんな器機の発達を支える電子回路技術です。

私の研究技術は福祉などの分野での活用を想定しているので、皆さんがイメージする「ウェアラブル電子機器」とは少し離れるかもしれません。例えば、研究の一つに指輪型の音声受信機があります。この指輪は交差点や横断歩道で目の不自由な方の信号の替わりに音を出すもので、ハンディキャップがある方の補助などを目的に研究開発を進めています。

――卒業研究のテーマは何ですか?

【大学生】デジタル音響器機の高音質化につながる研究です。アナログ信号をデジタルに変換することを「量子化」と言いますが、その際に使用する技術です。音楽レコーディングでは、一番最初の録音の時と、一番最後の再生の部分で使われる技術ですね。オーディオの世界で言う、いわゆる「1bitオーディオ」のことですが、この技術は普及品から高級オーディオまで幅広く利用されています。

僕はエレキギターの演奏を始めたのをきっかけに、音楽鑑賞が趣味になりました。その中で、なぜ音がでるのだろう?という好奇心がオーディオの構造自体への興味にもつながりましたし、情報を「0と1」で表すデジタル信号の世界にも興味が広がりました。

――その技術をこれからどんなことに活かしたいですか?

【大学生】先生が研究されている福祉分野のように、他の方の役に立つ形で活かしたいと思いますね。今はオーディオに利用されていますが、医療器機などの分野でも貢献できる可能性が高い技術とも言われています。

――学生時代の研究、そして現在のお仕事について教えてください。

【卒業生】学生時代には、時間をデジタル値に変換するということについて研究しました。専門的には「TDC」と言いますが、ニつの信号の時間差を調整する技術です。具体的に携帯電話を例にして説明しますと、携帯電話はその中にある発信器と基地局の発信器、両者が電波をやりとりして通話が行われる訳ですが、器機に誤差があるので、そのままでは周波数が微妙に合わず、通信がつながりません。このズレを感知し、調整して合わせるために使用するのが「TDC」という技術です。

高校時代から思い描いていた「携帯電話を作りたい」という夢を先生にお話したら、ベーシックな技術としてこういうのがあるよ、と助言をいただき、卒業論文のテーマになりましたし、大学院でもそのまま研究を続けました。

現在は半導体メーカーに勤務し、フラッシュメモリーの中の回路設計を担当しています。このフラッシュメモリーは携帯電話やゲーム機の重要な部品の一つです。つまり私の場合、高校の時にやりたかった夢がそのまま大学・大学院での研究となり、現在のものづくりの仕事までつながっているのです。

大学生活

――皆さんは、どういう理由で電子工学の道を志したのですか?

【大学生】電子工学系へ、という進路は、高3の夏あたりに決めました。電気というのは社会の中でいろいろと使われているものですし、自分の可能性を広げられるのではないかと思ったからです。

主に1年次に一般教養科目、2年次に専門基礎科目、3年次に専門応用科目を学びます。この専門応用科目を学んでいる時、目指す専門分野が見えてきますね。青山学院大学理工学部では、研究室への配属は3年次の終わりなので、専門分野をじっくり選択できると思います。

【卒業生】高校時代は数学と物理が得意でしたし、とりあえず理工系に行きたかったので、大学の説明会で具体的なことを伺いました。どんな業界、職種の就職につながるという話まで伺っていたんです。そうした中、もともと携帯電話を作ってみたいという夢がありましたので、電気電子工学科を志望しました。ものづくりの中でも、特に「便利な物を小さくしたい」という思いがあったのです。決めたのは高2の夏でした。

そして大学で先生の丁寧で興味深い授業を受けているうちに、アナログ回路の設計という分野にとても魅力を感じました。ちょっとした細かな操作、設計でいろいろと動作が変わる。これはものづくりの醍醐味を十分に体験できるだろうなと思ったのです。

【大学生】私も研究室を決めた大きな理由は、先生です。もともと電子回路は得意分野と思っていましたが、その中でも決め手になったのは先生のお人柄です。電子回路の授業中やテスト前などで質問した時に、非常に丁寧に教えてくださいました。

そして授業もわかりやすかったことから研究室に入りたいと思いました。学生の自主性はもちろん大事ですが、やはり良い先生と出会うと、授業や研究にもますますやる気が出ますからね。

――先生のきっかけも教えてください。

【先生】私の子ども時代、大分昔になってしまいましたが(笑)、その頃のテレビは真空管でした。高校生の皆さんは真空管を見たことがあるでしょうか? テレビの中をのぞくと見える真空管の、その光がとても素敵に見えました。故障すると電気屋さんが来て修理してくれる。それも子供心にすごいな、と感じていました。当時は音楽もアナログレコードの時代です。黒く回っている円盤に針を落とすと音が出る、その不思議さは今でも忘れられません。そんなきっかけで電気関係のことに興味を持ち、小学生の時から憧れを持っていました。

大学で電子工学の道に進むことになる直接的なきっかけはニつあります。一つは中学の時にアマチュア無線の免許を取りたくて勉強したことです(結局取りませんでしたけど)。そしてもう一つはNゲージの鉄道模型。あの列車の電子制御ができたらよいな、と思ったんですね。大学時代はコンピュータが導入されて間もない時代でしたが、鉄道をコンピュータで制御してみたい、と国鉄の技術研究所を志望しました。しかし、当時国鉄は大赤字で求人が少なかった時代ですから、就職の夢はかないませんでしたが。

NTTの研究開発職、そして大学の先生になりました

【先生】50歳まで研究職を務める傍ら、大学の非常勤講師も兼任しました。日本電信電話公社が民営化でNTTになりますが、当時ちょうどアナログ通信からデジタル通信への転換期でしたので、その対応のための技術研究が全盛期でした。

そしてその研究が一段落してくると、その技術をブラッシュアップして応用していく段階になります。デジタルオーディオが生まれ、電器メーカーとの共同開発も行いました。それも普及してくると、今度は福祉、その他の分野へと技術が波及して広がっていく訳です。

研究職から、同じ企業の関連会社へ、という流れももちろんありますが、企業の研究者の立場からすると、大学の研究職というのは「自分の夢を実現できる現場」とも言えるものでして、多くの研究者は大学に憧れます。縁あって青山学院大学で教鞭をとれることになり、幸せだと思っています。

就職活動・仕事

――就職先をどのように決めましたか?

【卒業生】まず、「ものづくり」へのこだわりがあったので、メーカーをターゲットにしました。大学の授業や卒業研究を通じて回路の勉強が楽しくなったので、回路設計がやりたかったのです。基礎的な技術で、何にでも搭載されている部品ですから、その分野に携われば、結果的にいろいろなものづくりに関われると考えました。今実際にやっているのは、フラッシュメモリーの中の記憶回路、読み出し回路の設計です。

【先生】仕事内容は、学生時代の研究にかなり近い分野ですよね。今の就職活動は「マッチング」と言いまして、会社が求める人材と、学生がやりたいことをすりあわせることを重視しますが、とても上手くいった例ではないでしょうか。

【卒業生】確かにつながっていますね。高校時代の夢が実りつつあると思います。

【先生】大学に入ることはゴールではなく、人生の一つの通過点です。あまり偏差値や人気にこだわらず、自分に合った大学を目指すのがよいと思っています。「どの大学に行きたいか?」を考えるより、「どのようなことを学び、どのような職業に就きたいか?」という視点から、保護者の方や学校の先生に進路を相談してみるとよいでしょう。どの大学に行くのかは、その後で考えてもよいと思います。また、高校での勉学に勤しんで、好きな分野を探すことも大切だと思います。

――専門技術以外に、研究室での経験が社会で活かされていますか?

【卒業生】大学・大学院時代は、プレゼンテーションの技術など先輩からも厳しく鍛えられますので、どういう分野に就職しても役に立つと思います。

【先生】上級生が下級生の面倒をみるというのは私の研究室の伝統です。つまり縦の関係がきちんとできているということです。また、研究開発上での倫理、リテラシーに関する教育も重視しています。例えば実験レポートなどで他者のレポートからのコピペ(コピーアンドペースト)があった場合などは、普通はワープロ文書での提出を許可しているところを、ペナルティとして手書きで提出させたりしています。

【卒業生】学部でも倫理面では厳しいですし、大学院では「技術者倫理」という科目もあります。企業の世界では、一層シビアになってくる問題ですから、このような心構えはとても重要だと思っています。

5年後のプラン

――5年後に皆さんは何をしているでしょうか?

【大学生】技術力のある人間になっていたいですね。業界としては、日常生活で使われているものをつくるメーカーに就職したいです。自分が作ったものが世界中の人に使われている、そうなったら良いなと思います。

【卒業生】就職して3年目で、SSD、ミニSDに用いられているメモリーの基盤技術や、ゲーム機・携帯電話の部品の製造にも携わっています。今は、与えられた仕事の中でそれなりの工夫をして設計をしている、という段階ですが、いずれは、自分が考えた機能や仕様、設計を製品化して、自分の考えたものを形にできたら良いですね。

【先生】やはりエンジニアとしてやりがいを感じるのは、自分で考えた原理が製品となって世に出て行くことでしょうね。頭の中で考えたことが形となって、良い評価を得た時の達成感は何ものにも代え難いものがあります。研究者としては、国際会議で発表が終わった瞬間、会場からスタンディングオベーションで迎えられた時の高揚感も同じくらいの気持ちになりますね。研究には終わりはありませんから、私は恐らく5年後にも同じ研究を続けていると思います。そして自分が高齢者になった時、今研究している機器が、自分の役に立つ物でもあったら良いですね。

アドバイス

――大学受験を控えた高校生にアドバイスをお願いします。

【大学生】一般論になってしまいますが、勉強する癖をつけておくということでしょうか。テスト前にコツコツやるような生活習慣です。大学では自立心、自発性が必要ですから、自分をコントロールするための基礎として、この生活習慣づくりは重要ではないでしょうか。

【卒業生】私は、会社員として英語の必要性を感じています。高校から、そして大学卒業後もずっと勉強し続けることが必要かなと思います。

【先生】日本語の力が全ての基礎となるので、やはり本をたくさん読んで、日本語力を高めていただきたい。 そして、何より「考えること」です。研究で一番大事なのは、「習うこと」「覚えること」ではなく、「なぜ?」と考える行為です。でもこの「なぜ?」に対しては、手っ取り早く正解を得ることはできません。我々は答えをいろいろと考えて想像します。その中から、一番合理的で、一番シンプルな答え、というのが「正解に近いもの」です。それを見つけていくのが、研究開発、という行為なのです。

大学の専門課程に入って一番戸惑うのがここです。多くの学生は、高校時代に、効率良く受験勉強をこなすために、例題、過去問から多くの正解を覚え、こういうパターンならこうだ、という要領で正解を得ることに慣れすぎている傾向にあります。考えることが苦手だと、学習していないことに対して対応ができないまま、専門科目で出会う新しい概念についていけなくなってしまいます。ですから高校生のうちから「なぜ?」と考える習慣はぜひつけてほしいと思います。

――高校の各教科の中で、そういう「考える」習慣が必要なのですね?

【先生】高校で勉強することは、運動に喩えると、筋トレや柔軟体操のような基礎訓練だと思います。例えば、腹筋運動は、体操の技やフィギュアスケートのジャンプのようにそれ自体を競い、評価の対象になるものではありません。でも、この基礎訓練がなければ安定して高度な演技はできない訳です。

私は高校時代は、英語も古典も歴史も、人生に必要ないと思っていました。でも今振り返ってみると全てが役立っているんですね。長い人生を考えると、無駄な勉強というものはないと思います。

この歳になると分かるのですが、昔の人は教育課程というものを本当によく考えていたと実感します。小中高それぞれで、本当に必要ないろいろなことのエッセンスを選りすぐって教えているんだなと。高校生ではまだ分からないかもしれませんが、どの勉強にも頑張って取り組んでほしいですね。

【卒業生】仰るとおりです。仕事に直接つながらない勉強でも、人生を楽しむために役立つんですよね。私は映画が好きですが、歴史がわかっていたら楽しいですし、旅行もそうです。今になって勉強し直すことがいろいろとあります。

【大学生】それと、高校では文化祭や体育祭など、学校の行事を楽しむということも大事かなと思います。僕の出身校はとても課外活動が盛んでしたが、行事や部活の体験で、横のつながり、縦のつながりができます。それは卒業後もずっと続く大切な間柄です。

【先生】彼のいた高校は行事の盛り上がりがすごいんだよね。進学校の上位校と言われる学校ほど、校内行事が盛んで、中途半端にはしません。やはり高校時代に培ったメリハリのある生活の土壌があると、大学に入って花が咲くと思います。オンとオフをハッキリさせて、頑張ってほしいと思います。そういう意味でも、受験勉強だけでない、余裕のある高校生活が送れると良いですね。

――最後に改めて、青山学院大学理工学部の素晴らしさを教えてください。

【卒業生】電気電子工学科の良さ、という点に限って言いますと、どのような分野にも就職できる多様性でしょうか。電力系、情報系、あるいは境界領域も含めて、全ての分野の基礎技術につながっていますから。

【大学生】学生視点からの見方になりますが、もともと青山学院大学は男子も女子もお洒落なイメージがあると思います。でも周りをみると、お洒落でいて、かつきちんと目標を持ち、行動力がある学生が多いと思います。自由な視点を持ち、実践力がある友人から、私も多くの刺激を受けています。

【先生】ミュージシャンになってCDデビューするような才能のある学生もいますが、例えば彼のバスケットボールの取り組みのように、学生自身がクラブチームを立ち上げた、という活動は異例です。大学と地域社会を結ぶ活動として、立派な功績だと思います。そういう真剣さが本当のお洒落だと思います。これは近年の理工系大学に共通する傾向と思いますが、本学の理工学部の教員も、防衛省、特許庁をはじめ官公庁、そして民間企業と、出身が様々です。社会経験が豊富なだけに「学生の人間形成のためにはいろいろな経験が重要」ということをよく理解している先生が多いと思います。本学では、勉強や研究だけでなく、プライベートなことも含めいろいろなことをバランスよく、という考え方を持つ学生が多いようですが、とにかく学生も教員も個性豊かでお互いを認め合うという点が、とても素晴らしいところだと思いますね。

大学構内のお気に入りスポット

――校内のおすすめのスポットやイベントを教えてください。

【大学生】淵野辺にある相模原キャンパスは、青山キャンパスとはまた違った良さがありますね。バスケットのコートもあって、そこにいる人とちょっと試合しようか、などと誘い合って、交流が始まります。緑豊かなゆったりとした環境の中、学生が自由に談笑したり、学習できるラウンジやスペースなどもあり、とても充実したキャンパスライフが送れます。

【先生】広大で自然豊かな美しいキャンパスの中に、国内外トップレベルの研究施設・設備が整う恵まれた環境が大きな魅力です。また、英語の授業内容も強化され、グローバルに活躍できる技術者・研究者をめざしたカリキュラムも本学理工学部らしい特色です。ぜひ皆さんも、相模原キャンパスにいらしてください。

青山学院大学 理工学部

自然科学の探究と技術の開発を目的とし、理学系、工学系あわせて6つの学科を設け、自然科学の基盤となるサイエンスの最先端研究はもとより、広く社会に貢献することを目指す多彩なテクノロジー研究開発を推進しています。