●プロフィール
先生の研究されている専門分野に関して教えてください。
■先生
私の専門は美術史・美術批評・視覚文化論です。博士論文のテーマは「セザンヌ」という画家についての考察でした。例えばセザンヌを考察する場合、単に絵に描かれていることや技法を考察するのではなく、他の画家との関係性、社会との関係性、文学との関係性など、美術を軸にして、人間文化の営みの相関関係を幅広く考察していくのが私の研究スタイルです。
美術は広く言えば「視覚文化」の一つのカテゴリーです。視覚文化には、美術のほかにも、イラスト、建築、写真など様々なカテゴリーがあり、これらも私の研究対象になっています。研究では、美術というジャンルにこだわらず、写真や建築についての文章を書くなど、幅広く「視覚文化」を研究考察しています。
写真や建築などの考察に際しては、どのようなことに視点を置くのですか?
■先生
私の場合、作家の人となりといったことよりも、作品そのものが時に作家も意図していなかったような意味を持ち始めることがあると考えており、そうしたことを考察の対象にしています。
例えば、1950年代には新潟や東北などの地方の街を舞台にした写真集などが多く出版されました。この時代を振り返ると、松本清張の『点と線』がベストセラーになったり、民俗学では柳田國男の『遠野物語』が再評価されたりしています。これは終戦後の占領下の時代が終わり、日本がどう変わったのかを隈なく見てみたいという、当時の日本人の時代精神、あるいは無意識が文化・芸術に投影された結果ではないかと考えています。
またある時期は、沖縄を舞台にした写真集が多く出版されたりもします。このように視覚文化には、その時代における人々の無意識など、様々な投影が見られることがあります。単なる一人の作家の一作品として見るのではなく、その作品を通して“時代全体を見ること”という視点が私の中にはあります。
ほかにも、形式や様式から見たり、ジェンダーという視点からも考察します。例えば、現代美術は女性アーティストが多いのに、なぜ過去には著名な女性画家がほとんどいなかったのか、などですね。このように「視覚文化」を多方面から考察していくのが私の研究です。
研究成果のアウトプットはどのようにされていますか?
■先生
私の場合は、学術論文のほかにも、美術系の雑誌や単行本に執筆することが多いです。展覧会カタログに文章を書くこともあります。
角谷さんは現在どのようなお仕事をされていますか?
■卒業生
大手総合商社傘下の専門商社に勤務しています。主に海外の発電所用の部品を、国営企業を中心とした発電所の運営事業者に輸出する仕事です。私は製品の船積み出荷に関係する貿易実務を担当しています。船積みの際に必要となる書類作成、販売先顧客への連絡・問い合わせ・入金管理業務などを行います。私が現在担当している販売顧客先は、タイの電力会社で、日常業務では英語を使うことが多いです。
角谷さんの大学時代の専門は何ですか?
■卒業生
最初は社会学を専攻していましたが、その後、林先生の「美術史ゼミ」に入り、美術史を専門にしました。
竹内さんのご専門は何ですか? また、大学ではどのような活動をしていますか?
■大学生
私も林先生のゼミに所属していまして、美術史を専門にしています。
現在スカッシュ・サークルに参加していて、2年次は幹部として、サークル運営にも携わりました。都内はスカッシュ・コートが少ないため、あまり練習ができないのがちょっと残念ですね。
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