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大学生
橋本崚さん

先生
川内美彦先生

卒業生
小柳綾さん
 

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス



●プロフィール




ライフデザイン学部では、どういうことを学ぶのでしょうか?


先生
ライフデザイン学部とは、人間を中心に据えて、人間にとって幸せな生き方、健康、暮らし、そして生活環境を創造する「ライフデザイン」とは何かを考えていく学部です。
その中でも人間環境デザイン学科では、3年次からの専門として、空間デザインコース、生活環境デザインコース、プロダクトデザインコースの3コースに分かれて、すべての人にとってやさしい「ユニバーサル・デザイン」を軸にした、空間・生活環境・プロダクトなどのデザインについて専門的に学べる学科です。
空間デザインコースは、建築物やまちづくりなどのデザインを学ぶコースで、小柳さんが専攻していたコースですね。プロダクトデザインコースは、生活を豊かにする製品デザイン、コンピュータを使ったメカトロニクス、おもちゃ製作などを幅広く学ぶコースで、橋本君が現在所属しています。生活環境デザインコースでは、住宅や障害のある人や高齢の人の身体の機能を支える補助器具などについて学びます。


文系理系のどちらに属する学部でしょうか?


先生
ライフデザイン学部にはほかにも、生活支援学科と健康スポーツ学科がありますが、この2つは文系ですね。一方、人間環境デザイン学科も基本的には文系ですが、文理融合的な内容ですので、文理どちらの学生も受験してきます。ちなみに、受験科目は文系科目だけでも受けられますし、理系が得意な学生は理系科目を選択して受験することもできます。
本学には理工学部にも建築学科があり、こちらは理系学科です。文系だけどユニバーサル・デザインに基づいた建築を学びたいという学生は本学科で学ぶことになります。コンピュータやプログラミングを使ったプロダクトデザインもありますから、文理を問わず学べます。

先生の研究内容について教えてください。


先生
私の専門は「ユニバーサル・デザイン」です。「人間環境デザイン学科」では、すべての専門において根底に流れているのがユニバーサル・デザインですから、1年次では全員がユニバーサル・デザインについて学びます。ユニバーサル・デザインというのは、障害のある人を含むすべての利用者を中心にした考え方です。
私は大学教授・研究者というよりも、国などに対して、ユニバーサル・デザインという概念を取り入れた制度作りの働きかけをしてきた側です。そのスタンスは今でも同じですので、国の政策や制度等に関して、ユニバーサル・デザインの考え方がどのように入っているのかを、チェックしたり提案していくことが、研究活動になっています。
例えば、先日国会で「障害者差別解消法」という法律が成立しましたが、その案を作る段階では、識者を集めた「部会」が組織されました。そこに参加して、ユニバーサル・デザインに関する意見提案をした、というのも私の活動の一環です。
また、バリアフリーに関する法律には設計ガイドラインというものがありますが、そうしたガイドライン作りにも参加して、定期的にグレードアップのお手伝いをしています。このように、法制度そのものに働きかけていく実践活動が私の主な研究です。
実践活動という意味では、現在は、東日本大震災後の仮設住宅での取り組みも行っています。震災後の仮設住宅では、高齢の人や障害のある人を考えた対策が不十分であるため、例えば自宅のお風呂に入れない、といった方がたくさんいます。そういう方々のために、「障害のある人にも使いやすい仮設住宅をつくりましょう」という取り組みを行っています。

「ユニバーサル・デザイン」と「バリアフリー」はどのように異なるのでしょうか?


先生
「バリアフリー」は、ある特定の方、例えば障害のある人や高齢の人などに対して、その方が抱えている目の前の問題を解決しようという考え方です。
一方で「ユニバーサル・デザイン」は、もっと状況の全体像を俯瞰して、なぜ社会の中でそうした一部の人が問題を抱えるようなことが起こるのかを、根本的に考える大枠での取り組みです。バリアフリーを個別の対処とすると、ユニバーサル・デザインは、もっと大きな社会システムという枠の中で解決していかなければいけない問題ということになります。 また、ユニバーサル・デザインという場合は、障害のある人や問題を抱えた人だけを対象とするのではなく、すべての人にもメリットがあるデザインという点で、バリアフリーとは少し概念が異なっています。
ただ、ユニバーサル・デザインの難しいところは、「これが正解です」という規格のようなものが確立されていないところですね。このことが、ユニバーサル・デザインをわかりにくいものにしていると思います。

小柳さんは現在、どのようなお仕事をされていますか?


卒業生
私は現在、「奥野公章建築設計室」に勤務しています。
社名が示すように、個人の建築家が主宰する事務所ですので、建築業界では「アトリエ系建築設計事務所」と呼ばれています。所属部署といった区分もありませんので、業務は先生のアシスタントをはじめ、設計、図面作成から建築現場での工事監理、関係各社との打ち合わせなど、多岐に渡っています。
また現在、勤務して2年目になり「一級建築士」の取得が可能になったため、資格の学校に通い、一級建築士資格の取得を目標にしています。


先生
著名な建築家などは、ほとんどがアトリエ系の事務所を主宰されていますね。あまり商業主義に走らないというか、その建築家個人の個性、作家性を反映した建築事務所になります。 一方で、会社名の付いた建築設計事務所は「組織系」と呼ばれ、従業員も多く部署ごとに担当した業務を行います。

卒業生
うちの従業員数は一桁です。ですから上司と部下というより、先生と弟子たちというような雰囲気の会社です(笑)。

橋本さんはどのような大学生活を送られましたか?


大学生
いろいろな環境に出向いていろいろな人と話したりなど、人と関わる機会をなるべく多く持つようにしてきました。
バドミントンサークルに所属していましたが、そうすると他学部他学科の人たちと接する機会ができます。自分とは異なる考えを持った人たちと話し合うことで、他学科の人たちの知識も吸収でき、勉強の面でも刺激になりました。
大学祭では学生作品展などが開催されます。そうしたイベントに参加したり、また学外での作品制作コンペ等への参加でも、多くの人との出会いがあり、充実した学生生活につながっています。

先生
補足しますと、「人間環境デザイン学科」の学生は、学外コンペなどに積極的にチームを組んで応募しています。ですから、チームづくりに積極的な学生は同期だけでなく上級生などともつながりが密になり、そのあたりでも大学生活を豊かなものにしていると思います。

橋本さんは「トヨタ ユニバーサル・デザイン ワークショップ2011」で優秀賞を受賞されていますね?


大学生
はい、いただきました(笑)。
この時は震災で影響を受けた「北茨城の復興」というテーマで、東大や千葉大などのデザイン系の人たちと一緒に、チームで連携しながら作品をつくりました。 春から秋にかけてこのプロジェクトに関わりましたが、他大学の人たちはビジュアル面などのデザイン性を重視したのに対して、僕は「人を中心に考える」という学びを活かして、「現地で使う人たちのニーズ」にこだわってみました。
最終的に僕たちのチームは、北茨城の特産品であるシラスを使い、「シラスを育成するゲームアプリケーション」をつくり、優秀賞をいただくことができました。
単にゲームをするだけではなく、ゲームを通じて、ゲームユーザーと北茨城の漁港の人たちがつながれる仕組みづくりを工夫して、コミュニケーションが取れるゲームアプリになっています。

先生
ゲームアプリだったんですね。今の学生らしい発想です。(笑)。
ユーザーと産地をつなげた点は、非常に評価できますね。


  

 

  

●インタビューに答えてくれた方々


 


先生
川内美彦先生  

東洋大学ライフデザイン学部教授
国立呉工業高等専門学校建築学科卒業。高専卒業後、一級建築士の資格を取得し、自らの設計事務所を開業。その後、米国でユニバーサル・デザインを学ぶ。帰国後、横浜国立大学工学府社会空間システム学科建築学コースにて博士課程修了。

   


卒業生
小柳綾さん

奥野公章建築設計室勤務
私立和洋国府台女子高等学校出身。東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科空間デザインコース卒業。現在は担当物件の工事監理業務が中心。今の目標は、一級建築士の資格を取得すること。

   


大学生
橋本崚さん

東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科プロダクトデザインコース4年(2012年度取材当時)
埼玉県立熊谷西高等学校出身。バドミントンサークル代表、「トヨタUDワークショップ2011」で優秀賞受賞のほか、人間環境デザイン学科学生作品展でも出展と運営で活躍。卒業後はウェブ・デザイナーとしての就職が決まっている。

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