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大学生
山口未来さん

先生
逸村裕先生

卒業生
小野永貴さん
 

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス



●プロフィール




筑波大学情報学群には3つの学類がありますが、それぞれの学びの違いは何でしょうか?


先生
簡単に説明しますと、「情報科学類」ではコンピューターサイエンスを中心に学び、「情報メディア創成学類」は情報コンテンツメディアを学びます。
そして「知識情報・図書館学類」では、インターネットや図書館など「知識共有の場」における、仕組みの企画・運営やそれを支える情報システム、また近年普及しているデジタル図書、学術文献DBなどについて学びます。図書館という古くからの社会インフラを学ぶ場でもあり、知識と情報を共有する場としての図書館やコンピューターサイエンスを学ぶ場でもあるわけです。このように「知識情報・図書館学類」は、いろんな学びの側面を持ち合わせているのです。


「図書館学」とはどういう学問ですか?


先生
「図書館学」は19世紀からある学問ですが、図書館の歴史自体は、古代オリエントやエジプトの時代までさかのぼり、非常に古いんですね。つまりその時代から、知識を分類するという作業が当時の学者によって行われていました。「図書館学」は、その後世界中の知識を集めたいという人間の根本的な欲望みたいなものと、科学という色彩を帯びて、19世紀頃のヨーロッパで学問として成り立ちました。
ちょっと前までの図書館学とは、知識(本)をきれいに分類して、それを探し出せるようにする仕組みを考える学問でした。また知識を求めている人に対して「図書館員」という媒体者が情報を探す手伝いをする、その方法の研究などを主にやっていました。それがコンピューターによるデータベース管理の時代に入り、現在では情報学やシステム情報処理も図書館学の一部になっています。
ですから本学類では1年次の最初からプログラミングを勉強します。「OPAC」という図書館で本を検索するための蔵書目録システムがありますが、この「OPAC」を用いて、2年次の1学期からシステムを作る必修科目も用意しています。

先生の研究されている専門分野に関して教えてください。


先生
私はもともと大学図書館員を11年ほどやりまして、その後教員になり、文部科学省の役人も6年ほど経験しています。その間、一貫して「大学図書館と学術情報流通」を研究テーマとしてきました。
「大学図書館」というキーワードでの研究テーマは様々にありまして、電子化の時代における電子ジャーナルなど電子情報源、学術データの普及、「機関リポジトリ」とオープンアクセスの問題、また、図書館においていかに学生の学力補強ができるか、学習意欲を高めることができるか等の問題解決も研究テーマです。
また、デジタル・ネイティブと呼ばれる世代の学生に関する情報検索行動の研究も、継続的に行っています。

「機関リポジトリ」とはどのようなものでしょうか?


先生
「機関リポジトリ」の「機関」とは大学などを意味し、「リポジトリ」は貯蔵庫を意味します。つまり「電子図書館」の一種です。特に大学教授や研究者が作成した論文や研究成果資料などの「学術情報」をデジタル化して、各大学が管理し、インターネットを経由して学生や一般の人に「自由閲覧(オープンアクセス)」してもらおうという動きです。
これまでこうした学術ライブラリーは、民間の出版社が中心に行ってきました。例えば先だってiPS細胞研究でノーベル賞を受賞した山中先生も対象論文は『CELL』という化学系学術誌に発表しています。しかしこうした商業的な学術雑誌の購読料は年々上がっていて、購入する大学にとってはかなりの負担になってきています。
そこで大学が主導して「機関リポジトリ」を設置し、教授の研究発表を無償で公開して学生や一般の人に対して知識の共有を図ろうとしています。私が現在、その旗振り役をしておりまして、すでに全国で約200の大学に「機関リポジトリ」が設置されました。将来的には、博士号を出している全国の大学での設置を目指しています。

「機関リポジトリ」が普及することの意義は何でしょうか?


先生
多くの人に等しく知の共有が図れることと同時に、大学の研究成果を公表することは、社会に対する大学側の説明責任(CSR)の一環ともなるものです。
また、高校生を含む学生に対しても先生方の最新研究が「機関リポジトリ」を通して見えてくるということは重要だと考えています。特に人文社会系においては、日本語の論文が中心ですから、「機関リポジトリ」を通して研究成果にアクセスしてもらうことで、多くの高校生にも学問研究に関心を持っていただけるきっかけが提供できると思います。

先生の研究のやりがいはどこにありますか?


先生
科学研究の成果を情報という観点から伝えていくことが、私の役目だと認識しています。より社会に普及させるための研究であり、科学の推進にもつながるものであるというのが、やりがいになりますね。

小野さんは大学院でどのような研究をされているのですか?


卒業生
修士時代は電子図書館システムの研究をしていました。これは検索システムから電子資料、電子書籍までをどう扱うかという研究です。現在は、「学生の情報利用行動」を研究しており、主に高校生が様々な図書館や書店等をどう使い分けて学習しているのか調査しています。最終的には図書館と学生の両者が使いやすいシステムとはどういうものかを導くものです。



小野さんは高校で「情報科」教員もされていますが、どのような授業をされていますか?


卒業生
「情報科」は、教科書を含め2013年度に改訂されるのですが、現在の教科書は、中学生の頃からインターネットを駆使している高校生にとっては、少々内容が古いんですね。そこで、日々ニュースで流れる時事的な話題を授業に取り込み、生徒の授業に対する関心を引き付けるような授業をしています。
僕も高校時代そうでしたが、高校生くらいだとよほど興味が向かない限り、授業へは集中できませんからね(笑)。

「情報科」の授業内容を教えてください。


卒業生
「情報A」では、パソコンの基礎からやりますが、情報社会の中でコンピューターを安全に使うにはどうしたらいいかというセキュリティの話もしますし、著作権や知的財産権、検索エンジンやウェブサイトの仕組みについても教えています。
また、授業ではプレゼンテーションを重視しています。他の人に情報を効率的に伝えるにはどうしたらいいのか、その手段として文章の作り方やレイアウトデザインなども扱いますし、また、口や身振り手振りでいかに伝えるかといったプレゼンテクニックも教えます。

小野さんは起業もされていますね。


卒業生
そうですね。鰍オずくラボというソフト制作会社を起業して、図書館検索システムや教育の発展につながるソフト開発を行ってきました。
僕の中で一貫しているのは、コンピューターやインターネットなどの情報網を活用して、図書館、学校、自宅を含む教育の場をより良いものにしていきたい、という思いです。

先生
小野君は本学類でたくさんのレジェンド(伝説)を残している学生なんですよ(笑)。

卒業生
いやいや(笑)。レジェンドというほどではないですが、例えば、まだYouTubeもない時代に、筑波大は約10年前から学園祭をネット配信していたんですよ。
その学園祭のライブ配信動画に、僕はネット上で初めて「コメント機能」というのを付けたんです。それを見た「ドワンゴ」という会社の人が興味を持ってくださり、技術指導をしに来てくださいました。その2カ月後くらいにニコニコ生放送というのが始まって、コメント機能が一躍メジャーになりましたね(笑)。
あと今でも一番の達成感を感じているのが、学園祭で研究内容を発表した「近未来書籍カフェ」という展示ですね。毎年の学園祭では、広島風お好み焼きなどの屋台が優勝するのですが、本と電子書籍を並べて、居心地のいい空間を作るという「近未来書籍カフェ」が優勝したのは今でもいい思い出です。学術と一般の人を喜ばすエンターテイメントの融合というコンセプトは、僕の目指している1つのテーマでしたし、また、研究室が優勝するのはつくば祭で初めてでした。

山口さんは1年生ですが、授業以外ではどんなことに取り組んでいますか?


大学生
現在3つのサークルに所属しています。筑波大学の宿舎祭で「ヤドカリ祭」というのがあり、その実行委員と、「Study for two」という教科書リサイクルを通して国際協力する学生主体の団体の活動、そして今一番頑張っているのが、「スパイスアップカフェALDOR(アルドア)」という学生カフェ団体での活動ですね。
サークル活動によって、他の学類や他大の学生、また、地域の様々な方々との交流が生まれるので視野が広がり楽しいです。



  

 

  

●インタビューに答えてくれた方々


 


先生
逸村裕先生  

筑波大学情報学群知識情報・図書館学類教授
私立清風高校出身。慶應義塾大学文学部図書館・情報学科卒業。慶應義塾大学大学院文学研究科図書館・情報学専攻修士課程、愛知淑徳大学文学研究科図書館情報学専攻博士後期課程を終了。上智大学図書館員、愛知淑徳大学助教授、名古屋大学大学院人間情報学研究科助教授、文部科学省研究振興局学術調査官などを経て、2006年4月より現職。

   


卒業生
小野永貴さん

お茶の水女子大学附属高等学校教諭、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程
国立東京学芸大学附属高校出身。筑波大学図書館情報専門学群(現・情報学群)図書館情報処理主専攻卒業。在学中には時代を先駆けた学園祭のライブ動画配信や、デジタル書籍を使った展示などを行う。筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士前期課程修了。現在、大学院で研究を行い、お茶の水女子大学附属高校「情報科」教諭、亜細亜大学非常勤講師、株式会社しずくラボ代表取締役社長も務める。

   


大学生
山口未来さん

筑波大学情報学群知識情報・図書館学類1年生(2012年度取材当時)
山形県立米沢興譲館高校出身。中学・高校時代は吹奏楽部に所属。楽譜の管理に苦労するなか自ら楽譜検索のデータベース作成に挑戦し、その楽しさを知る。幼少のころから図書館が好きだったこともあり、筑波大学を志望。将来は大学院への進学や出版社への就職を考えている。

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