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大学生
中野啓太さん

先生
本田由紀先生

卒業生
中山裕美子さん
 

CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス



●プロフィール




東京大学における教育学部の位置づけとは、どのようなものでしょうか?


先生
東京大学教育学部はいわゆる「教員養成系学部」ではなく、学問として教育学を追究する点が特徴だと思います。そして、「人間が変化すること」にまつわる様々な事柄を、いろいろな学問の切り口で研究する学際的な学部です。教育政策や実践の研究だけでなく、例えば、哲学・歴史といった人文科学もあれば、データに基づく実証分析を行う社会科学的アプローチもあり、ほかにも、心理学や、学校教育以外の社会教育を扱う分野、さらには筋肉や骨格、脳細胞の発達などを研究している自然科学に近い研究室もあります。
教育学部は、戦後にできました。これはつまり、悲惨な結果に終わった第2次世界大戦の反省から、民主的で科学に基づいた教育を実現していくため、その研究を行うためにできた学部ということなのです。


先生の研究内容について教えてください。


先生
私は教育社会学が専門ですが、「教育」「仕事」「家族」という、3つの社会領域の関係という視点から教育を捉えていく研究をしています。社会の中での教育を考える教育社会学の中でも、教育の外側、つまり「仕事」や「家族」に多くの関心を払って研究している立場だと思います。
具体的には、例えば「家族」と「教育」の関係ですと、家庭の中で、日頃子どもに対してどういう働きかけを行っていると、その子が学校の中で成績、あるいは学校を出た後の仕事生活でも良い面、悪い面が発揮されるか?といった研究があります。「教育」と「仕事」の関係ですと、例えば典型的な研究テーマとなるのが就職ですね。

学校、企業、家庭それぞれ、ひずみのようなものが社会問題になっていますね。


先生
90年代初頭のバブル経済の崩壊をきっかけにして、日本社会は大きく変容を遂げてきました。それ以前の数十年間続いてきた「教育」「仕事」「家族」の関係が、いろいろなところでうまくいかなくなってきています。そこで、どういうところにその弊害が現れ、それをどのようにしていくべきなのか、調査研究をした結果を提言してきました。
例えば、日本の就職というのは、世界的にみても特徴的で、新規学卒を一括採用するというやり方がずっと続いてきた訳ですが、それが90年代以降、様々な意味で壊れてきています。学校を卒業しても、うまく仕事につけない人が増えてきており、しかもその後の挽回が難しい状況があります。そこで、教育経験の違いが就職の結果やその後のキャリアにどのように影響しているのか、また、学校で学んだことがその後の仕事にどのように生かされているのかなどについて研究しています。実は日本では総じてあまり生かされていません。高校でも普通科の割合が非常に高いという特徴を持つ国なのですが、その中でも生かされている要素があるとすればそれは何か、どのような変革が有効か、といった研究もしています。

中野さんは学部生時代どのような専攻をされましたか?


大学生
「教育とICT」、それに「大学生の授業選択」について研究をしていました。
実は教育に関心を持ったのは大学に入ってからでした。もともとは「カルチュラル・スタディーズ(文化研究)」、つまり、その国の文化や人の行動といったものを観察したり、文献などから調査し、どういう権力がそこに働いているのか読み取っていくという学問に関心があり、東大を志望しました。

先生
中野さんは「情報学環」の教育部にも所属しているんですよね。

大学生
「情報学環」の教育部は東大が運営する専門学校のような組織です。他大学の学生や社会人もおり、皆が研究生として所属します。学内では大学の授業と区別する上で「副専攻」と呼んでいます。もともと高校時代からパソコンを自作もしていまして、そのパソコンでいったい何をやっていくか?ということを考えているうちに、「メディア」に関心がでてきたんです。情報学環では、ジャーナリズムとメディア、コミュニケーションという学問を学べましたので、それが受講の動機となりました。

中山さんのお仕事について教えてください。


卒業生
「Z会」の通信教育部門で、添削指導の品質管理全般を担当しています。例えば、添削者の先生に少しでも質の高い指導をしていただくため、研修会を開いたり、普段の添削の内容を確認し、フィードバックするなどの仕事をしています。
「Z会」という会社は、通信教育部門のほか、塾、書籍出版を事業の柱としています。当社の事業は、ひと言で言いますと、お客様である受験生や保護者の方に、受験・進学の面でソリューションを提供する、つまり現状の問題、課題を探し、解決策を提示していく仕事です。その方法はいろいろですが、大学受験教材においても、単に大学に入るための力だけでなく、それ以降、大学生活や、就職、その後の社会で過ごすための力をつける方法を提供するよう心がけています。商品は幼児を対象にしたものからありますので、相当に長い期間にわたってその人の成長に関っていくのが特徴だと思います。



  

 

  

●インタビューに答えてくれた方々


 


先生
本田由紀先生  

東京大学教育学学部教授
香川県立高松高等学校出身。東京大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程修了。日本労働研究機構研究員、東京大学社会科学研究所助教授、同大学院教育学研究科准教授を経て現職。 主な調査研究対象は、家族と教育、教育と仕事、仕事と家族という異なる社会領域間の関係について。90年代以降の日本社会で生じてきたこの3つの関係における問題(格差の拡大、「学校から職業への移行」の機能不全、仕事の不安定化による家族形成の困難化など)をどう立て直し、行政や草の根的な運動がいかに関わってゆくべきかを主要な研究テーマとしている。

   


卒業生
中山裕美子さん

株式会社Z会勤務
長崎県立長崎西高等学校出身。東京大学教育学部総合教育科学科比較教育社会学コース卒業後、Z会入社。通信教育の部門で添削指導の運営を担当している。中学時代より「教育制度は誰がどうやってつくっているのか?」という問題に興味を持ち、教育社会学を志した。大学における卒業論文のテーマは「中高一貫校における自己責任論」。

   


大学生
中野啓太さん

東京大学大学院教育学研究科修士課程1年生(2013年度取材同時)
私立開成高等学校出身。東京大学教育学部総合教育科学科を経て同大学院教育学研究科修士課程在学中。高校時代は模型部部長のほか、文化祭準備委員会スタッフを務めた。

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