●プロフィール
先生の研究はどのようなものですか?
■先生
今後ますます高齢化社会が進みますから、家庭あるいは製造現場でも、支援が必要になってきます。しかし、少子化の問題で、人が人をマンツーマンで支援するには限界があります。そこで、様々な場面で人間を支援できるロボットが必要とされてきています。もちろん、人と人とのコミュニケーションは大事ですが、そこにロボットが入ることで、介護者の負担を減らすことができます。さらに、人対ロボットの方がリラックスできる場合もあるでしょう。場面場面であり方は変わりますが、快適な環境を実現できるようなロボットをつくりましょうということです。それには、様々なロボットの形や機能を考えなければなりません。それを踏まえて、どのように設計すればいいのか、どうつくればいいのか、それを考えるのが私の研究の中心テーマです。
実際にロボット化はどの程度進んでいるのでしょうか?
■先生
産業ロボットは実用化され、製造現場で活躍していますが、直接人間に対応する介護ロボットのようなものは、まだ研究段階です。というのも、様々な難しい問題があるからです。
例えば自動車の場合は、道路や信号、法律があり、運転技術を覚えて免許証を取得し、万一の場合の保険に入って、ようやく運転ができます。自動車をつくったからといって、すぐに運転できるわけではありません。自動車には危険が伴うからです。
同じように、ロボットが人間社会に入った場合、どういう問題があるのか、どういう人だったら使えるのかということまでをすべてクリアにしないと、実際に動かすことはできません。私たちは、社会や保険については専門ではありません。技術的な問題を解決したとしても、それだけではダメなのです。まず、全体的なところから話し合っていかないと先に進めません。それらの条件を実証するためのロボットをプラットホームと呼んでいますが、その整備が必要なのです。
例えば、こういうロボットだったら人間に役立つ、それなら安全性はどう確保するのかと、そこまでしっかり議論した上で、はじめて設計の話になるのです。今はまだ整備の段階で、それを研究しているところです。
菅岩さんは、どのような研究をしましたか?
■卒業生
私の博士論文は、ヒューマノイド(人間に似せたロボット)の上半身、つまり、腕と手を使って、器用なことをさせたいとチャレンジしたものです。ただ掴むだけではなくて、例えば、指の動きと腕の動きを連動させて、いろいろな道具を扱えるように制御するなど、様々なことが操作できるようにしていきました。
トヨタ自動車にお勤めですが、大学時代の勉強は役立っていますか?
■卒業生
もちろんです。
未来の車をつくる研究部署にいますので、具体なことは企業秘密ですが、一般的な話をしますと、車には、エンジンやトランスミッションなど、多くの電気系統が積まれています。その電気的なものとメカ的要素、さらにソフトウエアがトータルで動くことで、車は商品として成り立ちます。
大学時代に勉強したロボットをつくるという技術も同じで、ハードウエア、ソフトウエア、電気系などすべてがそろわないと、ロボットとして成り立ちません。大学時代に学んだことのすべてが、仕事に役立っています。
藤倉さんの研究テーマは?
■大学生
菅岩さんは腕と手の動きの研究をされていましたが、私の卒論のテーマは手に特化したものです。
ご存じのように、ペンにはいろいろな形状のものがあります。どのようなペンでも確実に持てる、掴めるように、その精度を高めることが私の研究テーマです。
菅岩さん同様、私も菅野先生の研究室に在籍しています。
■先生
人間共存ロボットをつくるというプロジェクトがあって、二人にはその中で研究を行ってもらいました。
大学時代に特に力を入れていたことはありますか?
■大学生
1年生から3年生まで、サークルに入りました。ガソリン車をどのように燃費よく走らせるかを研究するサークルでしたが、入った時には、エンジンに対する知識がまったくない状態でした。そこで、先輩から教えてもらったり、図書館に通って本を読むなどして、一生懸命勉強しました。
高校の時は卓球部だったので、卓球サークルにも興味がありましたが、せっかく機械工学科に入ったので、機械の知識がぼんやりしたまま社会に出るのはいやだと思い、その礎を築くという意味でも機械に詳しくなりたくて、そのサークルに入りました。
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