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CONTENTS

●プロフィール    ●大学生活について     ●就職活動、仕事について
●5年後に向けて    ●高校生へのアドバイス
 


●大学生活について




早稲田大学を受験した理由は何ですか?


大学生
早稲田大学を選んだ理由の1つは、早稲田というネームバリューに憧れていたからです。また、総合的な大学であることと、地方からも学生が集まってきますので、様々な人と出会えると思いました。 創造理工学部を選んだのは、将来、人工衛星やスペースシャトルのようなロケットをつくりたいと思ったからです。また、ロケットの図面を書くことなどがしたくて、この学科に決めました。
学科まで絞ったのは高3の夏でしたが、早稲田には基幹理工学部に機械科学・航空学科があり、どちらにするか迷っていました。オープンキャンパスに参加した時に、機械科学・航空学科よりも総合機械工学科の方が、自分のやりたいことにマッチするのではないかと思い、最終的にここに決めました。


卒業生
私は個人の趣味で、機械系に進みたいと思っていました。そこで、いろいろな大学の機械系を見て回りましたが、早稲田の自由な校風と力強い感じが自分には一番合うと思い、決めました。

ほかにどのような志望理由で入学された方がいますか?


先生
理工系はどの大学もそうですが、まじめで、理科や数学などの科目が好きな学生が入ってきます。
実験がありますから、勉強をしないわけにはいきません。夏休みは、本部(早稲田キャンパス)だと学生は構内に入ることができませんが、理工系は実験がありますから、申請を出せばいつでも入れます。実際に理工系のキャンパスには学生がいつでもいます。ですから、どんな分野でもそうですが、まず理工系の勉強が好きであることが必要です。学生もそこのところはよくわかっていると思います。

実際に入学してみての感想はいかがでしたか?


大学生
高校生の頃の大学生というと、遊んでバイトして、ちょっと勉強というイメージでした(笑)。その頃は、大学のアカデミックな雰囲気というのは知らなくて、研究室ってそもそも何?という、ぼんやりとした状態だったのです。
しかし入学してみると、やっぱり勉強する場だったのだと再認識しました(笑)。
あと、私は女子高だったので、男性がほとんどの機械科の雰囲気に少し違和感があり、慣れるのには少々時間がかかりました。

先生
機械科は130〜140名くらいの学生がいて、うち女性は7名だけです。約5パーセントですね。

特徴的な授業やカリキュラムはありますか?


大学生
総合機械工学科は、座学というか、ただ講義を聞いて勉強するという学科ではありません。ここでよく言われるのは、「実際に手を動かして考えなさい」という言葉で、実際の授業もそういうものが多いです。
例えば、ミニチュアの機械エンジンを図面を引いて加工するとか、芝刈り機のエンジンを分解して組み立てるなど、実際に手を動かして勉強する授業が印象に残っています。

先生
2007年に理工学部が再編されて、基幹理工学部と創造理工学部、先進理工学部の3学部に分かれ、機械科も基幹理工学部と創造理工学部の2つの分野に分かれました。
カリキュラムも変わり、創造理工学部の総合機械工学科は、手を動かしたり、現実のものに触れることを重視した科目を並べました。
例えば、ビジュアルシンキングという科目では紙で人間の手のようなものをつくるなど、様々なモノづくりを行っています。折れやすいスパゲッティを使い、重い物を載せても大丈夫な構造物をつくる、スパゲティ・ビルド・コンテストもあります。
一般的には、こういう構造で、こういう設計をして、こういう計算をすれば強いものができるなど、はじめに理論や理屈を考えることになりますが、私たちのカリキュラムでは、まずやってみる、体験してみる、つくってみるのです。実際にやってみると、あっけなく折れたり、すごく強いものができたりします。そこで、なぜ強くなったのかなどと、理屈を考えるわけです。体験して、それから理論を考える。理論は難しくて、たいていの学生は好きではありません。しかし、最初に実験することでモチベーションが得られているため、取り組みやすい。こういう計算も必要なんだということもわかってくる。そういうモノづくりのモチベーションを高めるカリキュラム構成にしています。

卒業生
僕が入学したのは再編前なので、そういう授業は受けていません。しかし、授業全般が高校の時とは違っていました。
材料の力学や流体の力学の場合、数式をいじるということは高校の授業と同じでも、対象が見えた状態、例えば、動きなどを理論立てて数式にするというのは、高校までの勉強とは違います。実際的なイメージがつきやすいものが多かったので、非常に面白くて楽しかったです。

大学での学びは仕事に役立ってますか?


卒業生
大学で勉強することはすべて基礎ですから、役立っているかと聞かれたら、すべて役立っています。特に、三力と呼ばれる、熱力学、流体力学、材料力学は、直接関連しています。
自動車で言うと、車両の空気抵抗を考える場合には流体力学が必要ですし、エンジン内の燃焼に関しては熱力学、ボディをつくるには材料力学が使われます。ただ、車1台をつくるという作業は分業制になりますから、どの部分に関わるか、どこに配属されるかによって、必要な学問が異なります。それでも、担当以外のことを知っておくことは大変重要で、知らなければ他部署の人としっかり話をすることができません。ですから、どの学問も基礎知識として必要なものばかりです。

印象に残った授業などはありましたか?


大学生
先生からスパゲティ・ビルド・コンテストのお話がありましたが、それと同じ授業で、おもりをいかに速く2メートルまで持ち上げて落とすか、というコンテストもありました。そういう装置をつくりなさいということです。おもりを上げて落とすだけの簡単な装置ですが、おもりが動いている時には、スイッチを触ってはいけない。つまり、一度スイッチを入れたら、持ち上げて落とすまでの動作を連続して行わなくてはダメなんです。このコンテストは、印象に残っています。

卒業生
1年生の時の授業で、車のBMWの絵を描いてきなさいという課題がありました。絵を提出後、先生は絵を見せながら、この絵はうまい、この絵はへただと批評をしました。へたな絵というのは、BMWの特徴である、きれいな丸味を表現できていない絵のことでした。そんなことをあとから言われてもって感じでしたが(笑)、エンジニアとしては、そういう観察眼が大事だったわけです。受験勉強とは別の世界だったので、その授業はショッキングでした。

先生
機械系は特別です。電気系もそうですが、高校の授業科目とは切り離されています。
物理学科や化学科、数学科などの授業は、高校の勉強の延長線上にあります。ところが、機械系や電気系などのエンジニアリング系の勉強は、まったくということはないですが、直接関係はありません。物理で言えば、力学の部分は基礎としてありますが、車や飛行機、電車などのメカニズムの話は、高校では一切出てきません。大学に入って初めて勉強するのです。
機械科を目指している学生は、そういうことに興味があり、そういうものをつくりたいなど、将来そういう仕事に就きたいと思っています。機械系に入った学生に聞くと、自動車をやりたい学生、飛行機や宇宙ロケットをやりたい学生、ロボットをやりたい学生の割合がほぼ3分の1ずつに分かれます。だいたい毎年同じ割合です。機械科の場合、そういう具体的なイメージを持って大学を受験するわけです。

卒業生
今の先生のお話は、視点が違うという見方もできます。
高校の時に、行列(数学で習う計算式)を勉強しますが、なぜこんな書き方で計算をしなければならないのか納得できませんでした。でも、実際に大学に入って、ロボットの動きを制御しようと思った時に、行列という書式で数式を表現することが、いかに効率的で便利なのかがわかりました。モノづくりをするという視点に立ってはじめて、行列が便利な道具だったことがわかりました。ですから、高校の時に勉強しておく必要があったのです。

先生
高校では、行列にどういう意味があるのかは教えません。ただ計算式を教えるだけです。意味がわかれば、大事なことだとわかりますから、一生懸命勉強すると思いますね。

ほかに特徴的なカリキュラムはありますか?


先生
早稲田の基幹理工学部は、大学に入学してから学科に分かれますが、創造理工学部と先進理工学部は、学科ごとに募集を行っています。
多くの大学は、大学に入学した時点では専門が決められていません。最近の高校生は、受験の時に自分の専門を決められないことが多く、入学していろいろ勉強してから決められるようにした方がいいのではないかと考えられ、近年はそういう受験方法がとられるようになったのです。 しかし、創造理工学部では、高校生の時からこれを勉強したいと決めている、モチベーションの高い学生を採りたいと考え、学科ごとの募集を行っています。
入学した時から、機械なら機械、建築なら建築の勉強に触れ、より味わい、その学問の意味を理解する。そのような教育を考えるべきではないかと思っています。1年生から専門科目が設置され、モノづくりのための教育が始まりますから、学生は1年から好きなことができます。すぐにモノづくりをしたい学生とって、有意義なカリキュラムだと思いますね。

 

 

●就職活動、仕事について




どのように就職活動を行いましたか?


卒業生
僕の場合は、博士号(ドクター)を取り、専門を活かせる会社を探す選択をしました。ドクターを取った人を募集する企業は、その専門性を求めていますから、面接は、自分のやりたいことと企業が求めている専門性が一致しているのかという確認と、人物評価で決まるのではないでしょうか。僕の場合は、それほど苦労することなく就職できました。ただ、専門性を持つということは強みではありますが、専門に限定されるというマイナス面も持ち合わせています。


先生
ドクターの就職活動というのは、学部生とは少し異なります。学会などに出席すると、そこで様々な会社の人と話す機会があり、自分のやっている研究がどういうものかがわかってもらえますから、一本釣りのような形になることもあります。
今は、自動車会社や電気メーカーでも、本当に最先端の研究をする人は、ドクターを持つ必要があります。ドクターでなければ、研究所の部長にはなれません。実際、日立製作所ではかなりの人がドクターを持っています。もし、マスターで入ったら、そこで研究を重ねてドクターを取るようにしないと、先端のところは触れさせてもらえません。
国際的にみると、アメリカやヨーロッパで先端のことを行う企業では、みんなドクターを持っています。これまで、日本では持っていない人も多くいましたが、それでは対等に話ができません。ですから、そのことに気づいている企業は、これからどんどんドクターを採用していくでしょうね。

藤倉さんはもう就職を考えていますか?


大学生
今就職活動中ですが、機械科としてその知識が活かせるモノづくりができる企業を重点的に考えています。説明会やセミナーへは少しずつ参加するようにもしています。就職支援サイトや直接企業とコンタクトがとれるようなサイトがありますから、それを見れば、説明会の日程などの情報を知ることができます。

同期の方はどのようなところに就職されていますか?


卒業生
日立、東芝、パナソニックなどの電機メーカーや、トヨタ、日産、いすゞなどの自動車メーカーへの就職が大多数です。コンサルティング会社やシンクタンクに就職した人もいます。

先生
シンクタンクだと、野村総研や三菱総研などですね。理工系の知識をベースにして、調査やコンサルティングを行いますから、大学院の学生を多く採用しています。
理工系は、今は大学院の修士は当たり前になっていて、多くの企業が、大学院の学生を採用する方向に変わってきています。私の研究室では、ここ数年は学生のほぼ100パーセントが大学院へ進学しています。学科全体でも85パーセントぐらいが進学です。

仕事のやりがいは何ですか?


卒業生
研究という仕事は、おぼろげな目標に向かってぼんやりとしたイメージがあるものを、どう具体的にするのかということです。そのプロセスは誰もやったことがありませんから、自分の勘を信じて手探りで進めるしかありません。やりがいは、そのぼんやりとしたものを実際のものとして結実させることでしょうか。
できるかどうかわからないことにチャレンジする仕事ですから、悪く言えば、初めは大風呂敷を広げるわけです。許可をもらってチャレンジし、うまくいった時は、嘘にならなかったと(笑)、安心感と喜びを感じます。逆に、それが嘘になってしまった、できなかったという結論も大事ではありますが、それが続くとご飯が食べられません(笑)。そういう意味では綱渡りの部分もありますし、不安やプレッシャーを感じることもあります。ですから、覚悟を決めて提案しているのです。

先生
博士号を持っていることは、その提案が誤りにはならないという証のようなものですから、会社側の期待は大きいと思います。博士号を取った人は、様々な課題があった時に、それを解決する方向性を示すことができます。単に知識が多いだけではなく、方法論や道筋を示せるところが重要なのです。

 

 


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