学力をつけるためにはどうしても語彙力を高めないといけません。語彙力がないとすべてからまわりしてしまいます。言葉の力をつけることが出発点だと考えてください。
最近は中学高校生用の語彙力養成テキストも市販されています。1500語以上の言葉が整理されて載っている。順番に覚えていくといいのですが、残念ながら中学生ですと正しい使用法がつかみにくいときもありそうです。
たとえば「乖離」(かいり)という言葉が載っています。

乖離というのは辞書には「結びつきがなくなること」という説明が出ているでしょう。あるいは離れることとか。
あの人の意見と自分の意見にはだいぶ乖離があるという感じで使います。しかし名古屋駅から岡崎駅まではけっこう乖離があるとは使いません。こういうところが場数を踏んでいないと体得できない。中学生同士の会話に出てくる熟語ではありませんからこの言葉を正しく理解できている中学生は、活字で体得したということになります。

だから読書が大切だと強調するのですよ。乖離という言葉は、大人の読み物には頻繁に出てきます。何度も何度もぶつかっているうちに(なるほどこう使うのか)とわかってくる。そうやってぶつかる回数を増やす。
アイデンティティーなどという用語もそうですね。辞書をひいてもぴんとこないかもしれません。しかし、何度もぶつかっていくうちに「感じ」がつかめてくる。「自分らしさ」ぐらいの解釈でちょうどいいのかなとわかってくるはずです。

語彙のテキストを材料にご家族でお話してみてもいい。一日に5つぐらいですかね。取り上げてお互い「こんな言い方はあるだろうか?」と話してみる。お兄さんお姉さんがいらっしゃる方は、ときには輪に入っていただくといい。食後、今日も5つ見てみようかと本当に遊び感覚でいいのです。10分もかかりませんし、根をつめてやる必要もありません。言葉のやりとりを楽しむだけです。そういう文化的な空間自体が大切なのですよ。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。