時間がない時間がないと嘆きながら時間をむだにしていることは大人でもよくあります。春期講習のある日、教室でこういう光景を目撃しました。
1時間目の国語の授業が終わった。私は明日の宿題を告げてから黒板を消しはじめました。わざと丁寧に消すのですが、それは丁寧さというものを考えさせるためでもあります。何をするのにも1つ1つの作業を丁寧にというメッセージですね。さらに授業の価値の一部は、スタート時点の黒板がどれぐらいきれいかで決まるという気持ちもあります。

2、3分かかりますかね。教室を出て行こうとした。するとつい数分前に告げた宿題をやっている子がいました。10分間の休み時間内にやれるところまでやってしまおうというのでしょう。
なるほど考えているなと感心しました。15分はかからない問題です。しかし、10分だとちょっと短い。ぜんぶやり切る必要はないですね。少しでも見ておけば帰宅してからうんと楽になるでしょう。

ひょっとすると今日はすべての授業でそうするつもりかなと思ったので、それとなく観察していました。すると次の休み時間も終わったばかりの教科の宿題をやっています。きのうまではこうではなかった。ということは・・・おそらく今日だけ帰ってからやるべきことが詰まっているのでしょう。お稽古事とか部活の関係とか、ご家族やお友だちとの約束かもしれません。だから休み時間を活用している。

受験生でもないのにそうしたことを冷静に考えられるのは偉いと思いました。勉強していたから偉いという意味ではありませんよ。伸縮自在な要素がある時間というものを自己の管理下に置いているところが偉い。
こういう「大人の判断」ができるようにならないといくら潤沢に時間があっても、結局足りなかったということになりかねません。何をやるかということより、どこでどうやるかということのほうがよほど大事です。日々、油断なく作戦をたててください。

連載バックナンバー

著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。