勉強のできるできないというのは、ある意味文化度の違いみたいなところがあります。これは優れている優れていないというお話ではありません。音楽に置き換えていただくとわかりやすいかもしれませんね。おうちの方皆さんが音楽がお好きで楽器演奏などを好まれれば、自然とお子さんもそうなってきます。ご家庭にいつも音楽が流れている。おうちの方が頻繁にピアノやギターを奏でている。そうした中で、音楽にまったく関心を抱かずに生活するのはむしろ難しいと思います。

以前、私が授業中に問題文で出てくる小説家のエピソードをちょっとだけ披露すると、必ずその小説家の本を買ったり借りたりして読む生徒がいました。志賀直哉、太宰治、芥川龍之介、川端康成・・・中学生にとってはちょっと難しいかもしれないと思ったので、むりして読まなくてもいいよと言いました。いまは自分が面白く感じるものだけを読めばいいよと。
ところが未知なもののほうが刺激的で面白いと言うのです。確かに退屈なものもあったけれども刺激的なものもあった。

昔から本は好きなのかと質問すると子どものころから大好きだと言う。そういう文化圏ですでに生活していたということですね。それでは遠慮なくということで、私は梶井基次郎や梅崎春生、田山花袋なんかも薦めてみた。いちいち感想は伝えに来ませんでしたが、高校生になってから「人が言うほど田山花袋の『蒲団』に嫌悪感は抱きませんでした」というようなことを話しに来ました。じつは私もそうだったので、こりゃ完全に同レベルだなと思いました。

オシャレをするとき、どの文化圏に属しているかで方向性がまるで違ってきます。ある人にとって短パン姿は非常にオシャレでも、ある人にとってはみっともないということになる。刈り上げた髪型を素敵だと感じる人もいれば、長髪でなければ恥ずかしいと考える人もいる。要するに文化圏の違いです。あなたは所属する文化圏の影響を強く受けています。勉強のことを考えるのであれば、自分が勉強に向いた文化圏で生活しているかどうか(友だち、娯楽、生活習慣、話題など)は常に意識されてもいいと思います。

連載バックナンバー

著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。