毎年、この時期の受験生に言っていることなのですが、受験生の方は偏差値を10上げようとか入試までにあと数十点上げようとか漠然とした目標を持たずに、毎日全教科で1点ずつ上げようという切実な気持ちを持ってください。
英数国、あるいは英数国理社で日々1点「だけ」上げればけっこうです。入試までまだまだ日数はあります。いまのあなたの志望校がどこであれ、毎日1点でも確実に上がれば合格できますよ。

もともと「志望校」であって記念受験ではない。であれば、届くか届かないかというぎりぎりのところにいらっしゃるはずです。一日1点、週に7点、月に30点上がれば絶対に届きますよ。
1点上げること自体はそれほど難しいことではありません。たとえば故意の反対語は「過失」であると覚えた。それだけで2点上がる。助動詞「れる・られる」の用法――受身・可能・自発・尊敬――を覚えた。それだけで4点ぐらい上がります。

一つ一つのことを真剣に、落とすまいとして意識的に努力すれば、漠然と偏差値を上げようなどという姿勢より、よほど地に足がついた勉強ができるでしょう。何でもそうですね。「ホームランバッターになろう」ではなく「次の1球を確実に打とう」というほうがはるかに結果が出る。
人間が何かできるところというのは本当にこの瞬間しかありません。昔のことはどうしようもないし、先のことはどうなるかわからない。すごい人(合格できるのは確かにすごい人です)になれるのはいまの瞬間しかない。

この勉強は1点ぶんになるだろうかということを常に意識してください。するとやってもやらなくてもいいということがだんだん少なくなってくるでしょう。どちらでもいいのであればやるしかない。どちらが1点獲得に近いかと言ったら、やるほうに決まっているからです。
覚えたかな? というのもよくありますね。だいたい覚えたような気がする。もう一度書いても書かなくてもいい。その場合は必ずもう一度書いてみてください。私の提唱したい「切実さ」というのはそういうことです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。