いろいろなことに手を広げすぎる人がいますが、たいていの場合その作戦はあまり功を奏しません。よく言われることですが、問題集を三冊やるより一つの問題集を三度繰り返すほうが得る内容は大きいものです。
これは勉強に限らないでしょう。確実に自分の身につけるためにはよりよい方法を選ぶ必要があります。解答をすっかり覚えてしまったから・・・という人もいますが、解答を見ないでそっくり書けるようになったのであればそれだけで大成功です。

塾もあちらこちらかけもちする人がいますが、できればご自身の気に入られたところでじっくり勉強されたほうがいい。もっとも何か不満があるのならさっさとやめてしまうでしょうから、それはそれで問題ありません。よくあるのは、自分にぴったりの塾なのだがちょっとだけ物足りないというケースです。
そういうときは他塾をのぞくのではなく、通っているところの先生に特別に自分用の課題を出してもらうといいでしょう。

生徒から「もっと勉強したいのでいい課題はありませんか?」と頼られれば、一般的に私たちは大喜びでその生徒にぴったりあった課題を探します。べつの塾をかけもちして新しい人間関係の構築に苦労するよりよほど学習効果があがるでしょう。
課題をどんどんこなしてくださればこちらもさらに出す用意はありますが、その際もひたすら量をこなそうと考えるのではなく、終えた課題の徹底的な復習を心がけてほしいと思います。

またご本人にはなかなか見えづらい要素だと思いますが、ある先生の指導でうまくいきかけていた生徒がべつの先生の指導によって調子が崩れてしまうこともありえます。たとえばよく頑張っているなという評価型の先生とまだまだ努力が足りないぞというという叱咤型の先生に同時に指導されるとしますね。日々、自己イメージが両極端に揺れる。そうした小さなことから混乱してしまう生徒はたくさん見てきました。
指導方針は教室によって少しずつ違ってきます。分裂しないよう気をつけたいものですね。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。