テストではさまざまな観点から処理能力が試されます。「自力で」どう判断しどう道を切り開くか。助けてもらわなければできないのでは非常にまずいのであって、依頼心いっぱいでは何もうまくいかなくなります。
日々の生活内で「みんながわかっていることがなかなかわからない」という状況は、ご本人自身が強い気持ちで改めていかなければならないと思います。意地悪ではなく、そういう力をつけることが学力向上につながってくるからです。

具体的に書くとこういうことです。
テストの日に受付のボードに学年とクラスと名簿、さらに教室番号を貼りだしています。それを見てご自身の名前を確認し、指定された教室に入ってテスト監督がやってくるのを待つという流れになっています。
9割以上の方は問題なく教室に入っていきます。つまりここまで掲示してあれば、それが当然であるということです。

ちょっとだけまごまごする人もいますが、基本的に「そこに書いてあるだろう?」と声をかければ自力で見つけて教室に向かいます。
ところが――偏差値とは関係なく――単純なことがなかなかできない人も出てきます。そこはやはり改善の意欲を持たないといけない。そんなことが自力でできないようでは、複雑な課題をこなせるわけがないからです。そこでこちらはすぐに教えずに、ちゃんとボードを見なさいと指示します。1回でも2回でも自力でやれたという達成感を持たせたいと考えるからです。

ところが中にはご本人がはなからあきらめてしまうケースがある。ボードを見ようともしない。いまにも泣きそうな表情で、自分のクラスはどこですか? と頼ってくる。そこまで言われればもちろん全面的に助けるのですが、貴重なチャンスを1回分つぶしてしまったという気持ちは残ります。
多くの場合、彼らは日常生活であまりにも依頼心が強いのです。整理整頓も準備もスケジュール管理もすべて他人任せになっていたりする。勉強以前に大きな差がついています。それはご家庭全体で考えられる要素ではないかと思います。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。