史上最年少棋士の誕生で将棋界がにぎわっていますね。中学2年生だそうです。ある雑誌で彼のインタビューを読みました。将棋が大好きなのでぜんぶの時間を将棋に使っている。部活などもやっていないし他の活動にはあまり興味を持てない、将棋に没頭したいという内容が語られていました。
どこをどう読んでも、いやいや努力しているわけではない。ここはものすごく大切なところだと思います。

ときどきご自身で「けっこう勉強しているつもり」という生徒がいます。勉強しているつもりなのに成績は思ったほどよくない。私は大勢の生徒を見ていますから、そうした生徒が本当のトップ層と比べるとどれだけ勉強が足りないかということはよくわかっています。
何の世界でもそうでしょうが、トップにくるような人間は大変な喜びの中で、そのこと(勉強なら勉強に)に努力されている。嬉々としてという状態が結果を生むのです。

昔、ものすごく勉強ができる中3生に成績がいい秘訣は何か? と質問したことがありました。
すると彼は言下にこう答えた。「だれよりも勉強しているからですよ」これほどわかりやすい答はない。くわしく聞いてみると、彼より勉強している人間を彼はいままでに一人も知らないと断言していました。「けっこう勉強している」というのはこういう状態を指すものであり、いやいや長時間机に向かっているだけなどというのは勉強に対する解釈が違うのです。

もっとも私は全員がそうやって勉強しないとだめだと考えているわけではありません。それぞれの道があるでしょう。
ただトップ層の成績を収めたいのであれば、中学2年生のプロ棋士がそもそもほかのことはまったくやる気がしないというのと同じぐらい勉強に没頭しないと難しいのではないかと思います。彼らはじつは遊んでいるときも勉強のことを考えています。お風呂の中でさえ英文を思い浮かべていると言っていた優等生がいましたが、机の前だけでなく生活ぜんぶで勉強しているからできるのです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。