昔の小中学生より現代の小中学生のほうが、忍耐強く正確に物事を理解しようという姿勢に欠けています。欠けているという自覚を持てればまだいいのですが、自分たちの理解力が欠けているのではなく、相手が不親切だから仕方がないぐらいに考えている場合もおおいにあります。
理解できない自分たちは悪くないというわけです。理解できない書き方をしているほうが悪い。ときにはご家庭全体がそう考えていたりもします。

しかし、入試問題があくまでもあえてわかりにくいこと(相当わかりにくいですよ)を細々と質問してくる形式になっている以上、不親切な相手のほうがこちらがわかるまで歩み寄るべきなのだという発想では当然合格できません。すべて責任を持って理解するところまで近づいていくことは、問題を解くこちら側の義務だからです。
日常生活が便利になりすぎたことが大きな原因でしょう。何をするにしても徹底的にわかりやすい映像がついてくる。

動画の説明も多いでしょう。ここをこうやって開ける・・・するとなるほどレバーが出てきた・・・これを倒すらしいという感じで、長い文章を読み取る必要がありません。ただ見ていればわかる。
活字を映像に変換させることなくふだんの生活は流れていきます。ところが試験問題はそうではないですね。ビーカーの中の食塩水が行ったり来たりする。5%とか8%とか濃度が出てきて、もうわけがわからない! とかんしゃくを起こしたりする。

文字から読み取る訓練をしないままで何とかなると考えてきたこと自体が間違いなのです。それがわかったわけですから、入試が終わってからも少しでも多めに活字を読みましょう。同時に、映像や動画を際限なく見る習慣は避けてください。
味覚と同じで、あまりに刺激の強いものばかり食べていると微妙な味がわからなくなってしまうからです。活字による微妙な表現はみんな気づかず読み飛ばしてしまう。そうならないように予防する必要がありそうです。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。