現在は手書きの文字を書く機会が昔よりうんと減りました。打ちこみで表現することが多いですね。学校に提出するレポートも、その形をとることがあるはずです。そのほうがきれいに整理できますし、読むほうも読みやすいという利点はあるでしょう。ただ入学試験に関しては、いまだに手書きです。手書きの文字で、解答欄を埋めていく旧式なやり方があたりまえです。
いつかは変わってくるかもしれませんが、当分のあいだ現在の形が続いていくのは間違いないでしょう。

するとそこにものすごく大きな差が出てきます。丁寧に書く人と乱雑に書く人ですね。達筆かどうかということではないですよ。さほど上手ではなくても丁寧に書いている生徒はたくさんいます。逆に文字はあまり乱れていなくても雑に書く子もいます。
雑にというのは、たとえば「極端に薄い」、「一文字一文字が独立していない(草書体のようにくっついている)」、「濁点がつながって一つになっている」、「つまる音をきちんと小さく書いていない」「文字の大きさが揃っていない」などです。

読めないほど乱雑な文字を、悪気なく書いている生徒もいます。答案を見る先生は文字を丁寧に書いている人間と乱雑に書いている人間の心の中を推し量ることになります。時間に余裕があるにもかかわらず乱雑に書いている人間は、書く対象に対しての愛情が欠落していると考えるでしょう。読めないラブレターをもらったら、どなただって相手はいい加減な気持ちだなと推理するのと同じです。

そしてまたそうした文字を書いていることで、勉強中の自身の気持ちがどのへんにあるかという事実にも気づけるはずです。作業のいちばん手前にある文字でさえ丁寧に書けていない。その条件下でどれだけの成果をあげられますか。野球に例えれば全力で走ろうとしていないのと同じことです。全力で走ったほうがよいことは知っていても、ご自身が走っていない。
知っている「いいこと」をあなた自身がやっているかどうか。それがすべてですよ

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。