1980年代ある公立中学校(東京都)では、担任の先生があたりまえのように新聞のコラムをまとめさせる宿題を出していました。国語の宿題ではないのですよ。それぐらいのことはできたほうがいいという判断で、クラスの宿題として出されていた。
自分の教えていた生徒がその課題に取り組んでいたので、私は知っているのです。サボるのはほんの数人で、放課後残されたりしていたそうです。

現在の平均的な公立中学校で、その種の宿題を出せるかといったらちょっと難しいのではないでしょうか。トップクラスの子は難なくまとめられるでしょうが、文章を読むのが苦痛であるという生徒だと新聞のコラムの内容そのものが理解できない日があるかもしれません。そういう意味では三十年前と比べて文章を読んだり書いたりする力が上がっているかどうかは非常に微妙です。私個人は平均値は下がっているという印象を持ちます。

理由はいろいろあるでしょうが、いずれにせよ文章をまとめる力はこれからの人生で大変な財産になります。ある長さの文章をたとえば50字でまとめる。これはすばやく要点をとらえられる人間であるということです。100字でまとめる。的確に要旨をまとめる力がある証拠です。200字でまとめる。豊かな表現力を持っていることは間違いありませんね。
人の話を聞くときもこうした力を持っている人は、ポイントをはずさずにすむでしょう。

でも新聞のコラムなんかまとめる気にならないよという方に提案したいのですが、まとめるのはどんな文章でもいいのですよ。私の勉強法の話でもいい。この記事は1回の分量がだいたい800字ぐらいになるように書いています。それを150字ぐらいにまとめてみたらいい。勉強ができるようになる方法論ばかりですから、まとめて害になることは一つもありません。何を削り、どことどこをつなげるかというようなことを考えてやってみるといいと思います。
いずれにせよ、ある程度習慣化することが大切です。

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著者プロフィール

長野正毅先生

Z会進学教室渋谷教室長。
80年代より小・中・高校生(大学受験生)の学習指導に携わり、
97年よりZ会の教室に講師として勤務。担当は国語。
受験国語にとどまらない確かな指導は、生徒はもちろん、保護者からの絶大な支持を集める。

30余年にわたる指導において先生が目撃してきた
できる子の学習法
できる子を育てる家庭の秘訣
について綴ったブログが大人気(日本ブログ村「高校受験」カテゴリーで1位)。
2015年にはブログの記事を集めた書籍「励ます力」を出版。