武内校長先生

開学から137年、永きにわたり都立高校のトップを走り続けて来た日比谷高校。自校作成問題の導入など新しい試みにも積極的に取り組み、その存在感はますます大きくなるばかり。137年間色褪せることのない魅力を放ち続ける都立屈指の人気校はどのような生徒を求めているのか、校長の武内先生に聞いてみました。
(文・尾内通子)

※本インタビューは、中3生向け情報誌『合格学』にも掲載しています。

東京都立日比谷高等学校 校長 武内 彰先生
【略歴】1987年東京理科大学理学先行専攻科物理学専攻修了。同年以降、物理の教師として都立高校の教壇に立ち、都立西高等学校副校長などを経て、2012年(平成24年)より現職。共著に『楽しくわかる物理100時間』上・下(日本評論社)、『物理なぜなぜ事典1,2』東京物理サークル編著(日本評論社)がある。

東京都立日比谷高校

1878年(明治11年)東京府第一中学として開校。「文武両道」を校訓に掲げ、広く社会で活躍するリーダーの育成に取り組む都立屈指の名門校。卒業生には、大佛次郎、谷崎潤一郎などの作家、ノーベル医学・生理学賞を受賞した利根川進など、各界の名だたる著名人が名を連ねる。2007年度(平成19年度)より文部科学省からスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の認定を受け、2014年度(平成26年度)には東京都教育委員会から「積極的に国際理解教育を推進する先導的学校」の1つとして「東京グローバル 10」に認定される。

▼東京都立日比谷高等学校公式Webサイト
http://www.hibiya-h.metro.tokyo.jp/

学びはすべてつながっている

まず始めに、受験生にお伝えしたいことは「学びはすべてつながっている。先を見据えて受験勉強に取り組んでほしい」ということです。これは日ごろから日比谷生にも伝えていることなのですが、受験生になると、どうしても目先のことに意識が向き、視野が狭くなりがちです。不安を打ち消そうと、やみくもに問題を片付けようとします。しかし、そのような勉強をやっていては、なかなか学力は向上しません。今学び取ろうとしている知識は、この先の学びの土台となるものです。そのことをしっかり認識して、受験勉強に取り組んでください。

入試問題に込められた メッセージを読み取ってほしい

 日比谷高校は、将来社会で活躍するリーダーの育成を目指し、日々教育活動に取り組んでいますが、入試問題についても同じ考えに基づいて作成しています。毎年受験生たちが対策に苦労するグループ作成問題、自校作成問題の記述問題は日比谷の目指すところや考えが色濃く出た問題と言えます。

 この記述問題を通して、私たちは受験生の論理的思考力をみたいと考えています。なぜ論理的思考力なのか?というと、論理的思考力こそが次の世代のリーダーに求められる資質と考えているからです。日本は資源小国です。このような国が持続的に発展していくためには、イノベーションを起こし、新しい技術や価値を創造していくしかありません。では、イノベーションを生み出すのに欠かせない能力とは何か?というと、それは新しいものを考え出す力、つまり創造的思考力ということになります。そして、その土台となるのが論理的思考力です。日比谷高校では日々の教科学習や活動の中で思考力を鍛える機会を積極的に設けて学生のレベルアップに励んでいますが、論理的思考力は一朝一夕で身につくものではありません。そこで、日比谷高校では高校3年間の取り組みをより効果的なものにするためにも、ある程度基本的な思考力をもっている人に入ってきてほしいと考え、論理的思考力を試すのに最適な記述問題を高校受験で課すことにしているのです。中学時代はどうしてもインプット中心の勉強になってしまいがちですが、日比谷高校を目指す受験生には、インプットした知識を論理的にアウトプットするトレーニングをしっかり積んで入試に臨んでほしいと思っています。
 
 日比谷高校に限らず、入試問題には必ずその学校のメッセージが込められています。出題の意図を読み解き、その意図に答えられるような受験対策ができたら理想的ですね。

※グループ作成問題、自校作成問題って何?
日比谷高校は東京都より進学指導重点校の指定を受けているため、2001年度より英語(リスニング以外)、数学、国語の3教科について独自の入試問題を作成し、入試を実施してきた。2014年度からは進学指導重点校をはじめとする都立難関校が複数のグループをつくり、共同で入試問題(グループ作成問題)を作成し、必要に応じ一部を学校オリジナルの問題(自校作成問題)と差し替えて入試を実施するようになった。なお、英語のリスニング、理科、社会の入試問題はその他の都立高校と同じ入試問題が使用されている。

教科学習の枠を飛び越えた さまざまな活動が 日比谷生を成長させる

日比谷高校は、文武両道を校訓にしているだけあり、生徒たちは学校行事にも熱心に取り組み、部活動の加入率も95%を超えます。それに加え、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)と東京グローバル10の指定校としてのさまざまな探究活動にも取り組んでいます。その中には生徒たちが企画立案したものもあるんですよ。生徒たちは、勉強・部活をしながら、行事に取り組み、その上で探究活動を行うわけですから、相当たいへんだと思いますが、そんな濃密な毎日をとても楽しんでいます。何事も積極的に取り組む集団の中で切磋琢磨し合う生徒たちはとてもタフで、見ていて本当に頼もしいです。このような環境で自分を鍛えてみたいという受験生はぜひ日比谷高校を目指してみてください。

最後の瞬間まで努力をし切れるか、 それが勝負の分かれめ。

受験を前にして不安がない人などいません。誰だって不安で心細いです。大学受験を前にした日比谷生だって例外ではありません。日々鍛練をし、努力をしている彼らにとっても大学受験は断崖絶壁に挑んでいくような途方もない挑戦です。ギリギリなんとか頂上に到達できるかというせめぎ合いの中で受験勉強に取り組んでいきます。それでも日比谷生が高いレベルで結果を出せるのは、最後の最後まであきらめないからです。あきらめないから目標の地にたどり着くことができるのです。高校受験も同じです。あきらめたら終わり。だからあきらめないで。これは日比谷生にもよく言うのですが、「弱気になるのは最後でいい。それまでは強気で行きなさい。現実的な判断をするのは最後でいい」……この言葉をみなさんにも贈りたいと思います。来年の春、入学式でお会いできるのを楽しみにしています。
-----------------------------武内先生、ありがとうございました!-----------------------------

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