Improving Pitching with a Smartwatch

スマートウォッチで球速向上

アベンジャーズ・シリーズのヒーローとして人気が高いアイアンマンは、トニー・スタークがパワードスーツを装着した姿だ。このパワードスーツはセンサーの塊である。それは人工知能ジャービスの制御下で、肉眼では見えない遠方の様子をカメラで捉え、後方から迫るミサイルをレーダーで感知する。同時にトニーの心拍数や血圧などを計測し、彼の肉体と精神の状態を数値化して客観的に把握している。目や耳、鼻などの器官は、人間が体の外側の情報を得るためのセンサーである。パワードスーツのカメラやレーダーはそれを拡張したものと言える。それに比べ、人間は拍動*1のような体の内側の情報を捉える力は弱く、動悸*2の緩急を感じる程度のことしかできない。
例えば野球選手がボールを投げた時、彼はボールの軌道を目で追い、球速を予測できる。しかし、ボールを投げる時の自分の腕の動きは、動かしている筋肉や骨の感覚で主観的に捉えることしかできない。コーチはその選手の投球を観察して分析し、投球の技術を向上させるアドバイスを彼に提供する。
経験豊かで有能なコーチは、トニーが知力と財力を傾けて開発したジャービスとパワードスーツのようなもので、誰もがそのサポートを受けられる訳ではない。青山学院大学のロペズ・ギヨーム准教授は、スマートウォッチを利用して、野球のピッチングを解析し、球速を改善させるシステムを開発した。

球速の改善をサポートするシステムは、スマートウォッチにロペズ准教授が開発したプログラムをインストールし、その加速度センサーで投球時の腕の動きを数値化して、改善点をアドバイスする。図1はシステムのスタート時の画面で、図2は投球後のフィードバックを表示した画面だ。腕の動きは前後、左右、ひねりの3つの動きを計測して数値化できる。投球時に得られた数値と、理想的な投球を行った場合の数値とを比較し、その差を埋めるための腕の動かした方のポイントが図2の画面のように表示される。このように、ロペズ准教授が目指しているのは、誰もが入手できる市販品のデバイスだけを使い、使ったその場でフィードバックが得られるシステム、つまり一人でスキルアップできるウェアラブル*3システムの開発である。

*1心臓が脈打つこと  *2心臓の鼓動が激しいこと  *3身に付けることができる

 

ロペズ・ギヨーム准教授(青山学院大学 理工学部情報テクノロジー学科)

専門はウェアラブルコンピューティング、マルチメディアデバイス、人間情報学、環境情報学。本文で紹介したシステムの他にも、テニスのサーブを改善するシステムや、拍動の間隔の変化を計測して、スポーツ選手の心理の解析を行うシステムも開発している。

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