Mexican Workers Supporting Agricultural America – Then and Now –

農業大国アメリカを支えるメキシコ人労働者-その歴史と今-

今日、自動車産業に代わって、アメリカ経済を牽引しているのは、巨大IT企業の4社、Google、Amazon、Facebook、Apple、通称GAFAだと言われている。しかし、この国は同時に世界に冠たる農業大国でもある。この国は3億人を越える人口を抱えながら食料の多くを自給できている。とうもろこしと大豆の生産量は世界第一位で、世界全体の生産量の約35%を占めている。また、世界で輸出されているこの2つの穀物の約40%がアメリカ産である。この農業大国を底辺で支えているのは、実はメキシコからやって来る季節労働者だ。

メキシコ北部(対米国国境至近)の荒寥たる土地

1941年、アメリカは武器貸与法*を成立させ、イギリスに大量の武器を供給しはじめた。続く日本との開戦により、ヨーロッパと太平洋に兵隊を送り出すことになった。アメリカ人男性が武器の生産工場と戦場へ駆り出されることにより農業労働者が不足した。この空白に、代替労働力として、メキシコ人が雇用されたのだ。
農業で年間を通じて最も人手を必要とする時期は、種蒔きと収穫である。必要な時だけ作業をし、それ以外の時は元の場所へ帰ってもらえるような労働者を、アメリカの農場は求めた。地続きのメキシコからの季節労働者は、それに打ってつけの存在だった。しかも、国家間の経済格差のため、彼らは安い賃金でも働いた。以来、今日に至るまで、アメリカの農業は労働力の調整弁として、低賃金で働くメキシコからの季節労働者に支えられている。世界に輸出されている農産物の多くは彼らの手によって収穫されたものだ。
アメリカのメキシコ移民については、こうした歴史的背景を踏まえて考えるべきだろう。日本が輸入している農産物はアメリカ産が最も多いのだから、日本人にも関係のある問題だ。メキシコは日本にとって大切な国だ。欧米列強との不平等条約の撤廃を国是としていた明治政府が、1888年にメキシコと締結した条約こそが、初めての平等な条約だったのである。
亜細亜大学の中野達司教授は、上記のようなメキシコとアメリカの関係を研究してきた。その研究は、今日の日本を考える上でも重要だ。中野教授は、「労働力はモノではない、人として扱うべきだ」という姿勢で、アメリカにおけるメキシコ人の季節労働者や移民の問題を研究している。現在の日本の移民問題を考える時にも、このような姿勢が大切ではないだろうか。
*ドイツと戦うイギリスを支援するために成立。これによりアメリカは対外政策を孤立主義から転換することになった。

 

中野達司教授(亜細亜大学国際関係学部)

南北アメリカ大陸の結節点の地域研究として、メキシコとアメリカの関係を研究している。現在、その集大成として、ネイティブアメリカンの時代も視野に入れた、メキシコとアメリカ合衆国の国境史をまとめようとしている。著書に『メキシコの悲哀』(松籟者,2010年)がある。担当している専門科目「体験で学ぶ地球環境論」では、アルピニストで同大学の卒業生でもある野口健特別招聘教授と共に、富士山の清掃活動なども行っている。

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