Satellites Keep Watch Over Arctic Ice

人工衛星が見守る北極の氷

日本の探検家だった植村直巳は、1978年、犬ぞりに乗り、一人で北極点に到達した。この偉業を支えたものの一つが、NASAが開発した無線機DCP(DATA Collection Platform)だった。地球を周回する気象衛星ニンパス6号は、植村の持つDCPが発信する電波をとらえ、植村の位置、気温、風力、天候を記録し、ワシントンの宇宙科学センターを経由して、1日遅れで彼のいる場所を彼自身に伝えていた。北極点に目印はない。DCPがなければ、植村は北極点到達を証明できなかった。その技術を発展させたのが現代のGPS(全地球測位システム)である。ニンバス6号のような人工衛星に搭載されたセンサーが紫外線、赤外線、マイクロ波などで地球を観測する技術をリモートセンシングと呼ぶ。
日本は気象衛星ひまわりを打ち上げ、日本の天気予報に役立ててきた。ひまわりの熱赤外線センサーで観測した画像では、温度が低い雲は白く、温度が高い海は黒く見える。これが天気予報の番組で私たちにおなじみのひまわりの画像だ。また、JAXAが2015年に打ち上げたGCOM-W1衛星には、世界最高性能のマイクロ波放射計AMSR2が搭載されている。NASAやJAXAが打ち上げた衛星の観測データは、世界中の研究者に公開され、様々な研究に役立てられている。
東海大学は1974年、情報技術センター(TRIC)を設立し、リモートセンシングを活用した研究を行ってきた。ここには数多くの衛星を自動で追尾し、その観測データを受信するシステムがある。また、JAXAだけでなく国土地理院、海上保安庁、海外ではNASAやESA(ヨーロッパ宇宙機関)と協力している。長幸平教授はTRICの所長で、長年リモートセンシング技術の研究に取り組んでいる。近年、彼が特に力を入れているのは、地球温暖化の影響が顕著に表れる海氷域の観測である。

この2枚の写真は、人工衛星が撮影した1982年と2012年の北極の夏の海氷分布の様子だ。2012年の写真で赤く表示されている部分が両者の差だ。1982年に比べて2012年には北極の海氷域が小さくなっていることがわかる。温暖化で北極の海氷が融けていると考えられる。白い海氷は太陽光を反射し、温暖化を抑制してくれる効果がある。しかし、温暖化で融けるとその海域が太陽光を吸収し、益々温暖化が進むことになる。北極の海氷が融ければ、全世界の気候に大きな影響を与える。リモートセンシングは、こうした地球規模の課題を考えるためのデータを得る重要な技術なのだ。
1982 年(左)と2012 年(右)の北極の氷の様子

 

長幸平教授(東海大学情報理工学部/ 情報技術センター)

リモートセンシングによる地球観測や、そのデータを処理する画像情報工学が専門。海氷観測に関わる研究だけでなく、東日本大震災等の大規模災害の前後の様子やその復興状況を、衛星観測とSNS情報を組み合わせて監視する災害監視システムの開発・運用にも取り組んでいる。

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