Coexisting with diff erent value systems ― The first step to improving the relationship between Japan and South Korea ―

異なる価値観との共存―日韓関係を改善する第一歩

北東アジアの国々

 日本の安全保障は朝鮮半島の安定に直結している。悪化し続けている現在の日韓関係は好ましいものではない。このような状況になる原因はどこにあるのだろうか。

 第二次世界大戦で敗戦国となった日本は、独立を回復した後、軍事国家としてのイメージを払拭し、平和国家として国際社会に認知されることに力を注いだ。日本が高度経済成長(1955~1970 年)で国力を高めつつあった頃、経済力では北朝鮮は韓国に勝っていた。北朝鮮との競争に勝たなければならなかった韓国は日本の経済援助を必要とし、日本も朝鮮半島の平和を重要視したことによって、日韓は 1965 年に国交正常化を果たす。

 やがて韓国の経済力は北朝鮮を追い抜いたものの、冷戦構造の中で、韓国はアメリカとの同盟と日本との協調を必要とした。ベルリンの壁が崩壊(1989 年)した後も、北朝鮮の核開発により朝鮮半島の緊張が高まり、拉致被害者をめぐり日朝関係も悪化した。韓国と日本の利害は、この時点ではまだ一致していた。

 しかし、2000 年代に入り中国は急激な経済成長を遂げ、その影響力が拡大するにつれて米国と対立することとなった。韓国は、アメリカとの同盟は維持しつつも、最大の貿易相手国である中国を重視しはじめた。さらに、文在寅大統領(2017 年就任)の南北融和政策と、安倍政権の対北政策は相反し、対北朝鮮政策をめぐる日韓協力も難しくなってきている。

 このような現状に対し、日本と韓国は新しい日韓関係のビジョンを持っていない。イデオロギー対立から解放された冷戦終結後の世界で、安全保障における軍事力の役割が相対的に低下し、政治的価値観は多様化した。自由主義、民主主義という価値観をアメリカと共有する日本にとって、冷戦時代とそれに続くアメリカ 1 強の時代は、日本を取り囲む情勢に対応しやすかった。しかし、これから日本は、異なる政治的価値観を持つ国とどのようにつき合っていくかを、自ら考えていかなければならない。韓国も同様の課題を背負っている。

 東洋英和女学院大学の冨樫あゆみ講師は、北東アジアの安全保障を研究している。彼女は政治的価値観の異なる国を理解するために、多角的な見方を身に付けることを学生に勧めている。彼女が指導している学生の中には、SNS を利用して、韓国の世論を肌感覚で掴もうとしている者もいる。日韓関係を改善する答えがすぐに見つからなくても、日本の立場からだけでなく、韓国の立場からも見ようとする気持ちを持つことが、両国の関係を改善する第一歩となるはずだ。

*ODA(Official Development Assistance) : 政府開発援助。政府が開発途上国に資金や技術の協力を行う協力活動。

 

冨樫あゆみ講師(東洋英和女学院大学 国際社会学部国際社会学科)

英国サセックス大学国際関係学修士号取得。ソウル大学校政治外交学部政治学博士号取得。政治学博士。専門は国際政治、北東アジア安全保障、韓国政治。主に韓国を中心として、日本や北朝鮮、米国、中国を含む北東アジア地域における安全保障を研究している。主な業績として、冨樫あゆみ著『日韓安全保障協力の検証―冷戦以後の「脅威」をめぐる力学』(亜紀書房、2017 年)など。

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