A scientific“ flower” blooming in Fukushima

福島で咲かせる科学の花

右のセンサで卵子の生死を判別する様子

1965年にノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎は、科学を易しい言葉で説明している。「ふしぎだと思うこと、これが科学の芽です。よく観察してたしかめ、そして考えること、これが科学の茎です。そうして最後になぞがとける、これが科学の花です。」「芽」から「茎」に育つためには、問いを立てることと視野の広さが求められる。前者は何をどう調べれば「ふしぎ」を解明できるかを考えることで、後者は自分の専門分野に拘らず、あらゆる分野から着想を得ることだ。
日本大学の村山嘉延准教授は現在、「生命とは何か」という「芽」(研究テーマ)に取り組んでいる。卵子の研究もその一環だ。卵子は一つの細胞で、膜につつまれた分子の集まりだ。そこには「司令塔」がなく、受精前の卵子内の分子はバラバラに秩序なく動いている。ところがそこに精子が入り込むと、卵子内の分子は「司令塔」がないまま、細胞分裂を始めて成長する。村山准教授は、一見無秩序に動く卵子内の分子が、全体としては秩序をもって生命となっていくのは何故か、という問いを立てた。卵子が受精によって生命になるのだから、受精後のこの秩序を調べることが、生命を理解するヒントになる。
村山准教授は、生命へと向かう卵子内の秩序を考える時、自立分散協調技術を想起したという。例えばある街の電気を供給している電力会社が、その街の個々の建物への電力供給をコントロールするのは中央制御だ。これに対し、自立分散協調とは、隣り合う家やビルがお互いに電気を融通しあい、街全体として消費する電力を供給可能な範囲に収めるという仕組みだ。個々の家やビルが自分と近接する建物のことしか考慮しない様子が、卵子内の分子の動きを考えるのに役立つ。彼は工学部電気電子工学科に所属しており、その環境がこの着想につながった。
変化の激しい現代社会を生きる私たちにとって、問いを立てることと広い視野を持つことは重要だ。それを極限まで突き詰めているのが科学者だ。卵子の研究は、村山准教授の問いのほんの一部に過ぎない。彼は他にもたくさんの問いを立てながら、「生命とは何か」という花を咲かせようとしている。

 

村山嘉延准教授(日本大学工学部電気電子工学科)

専門は医用生体工学、生体材料学、発生生物学。福島キャンパスにある次世代工学技術研究センターで、再生医療や生殖補助医療のための支援装置の開発や、超音波を用いた新しい診断・検査技術の開発など、工学技術の医療への応用を研究している。

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