Z会担当者コラム 自分で考えることのできる中学生になってほしい 「総合」担当者の今、思っていること

■第10回:『魚のいない海』を読んで

『魚のいない海』を読んで

フィリップ・キュリー/イヴ・ミズレー『魚のいない海』(NTT出版)を読む。

ヤバイよ漁業(この「ヤバイ」は言葉本来の意味です)。海に魚いないし。

まあ、結局は、人間が増えすぎたってことだろうね。

でも、一方では、プロの漁師さんたち、いわゆる外道や雑魚を海にバンバン捨てている。アマチュアの釣りのように生きたまま放すキャッチ&リリースではなく、死んじゃったやつをゴミとしてバンバン海に捨てている。

そうやって選別されて市場に出た魚も、すべて食べられるわけではなく、これまた、かなりの量が食べ残しやら何やらで廃棄されている。

とすれば、人間が実際に腹に収めている海産物の量と、漁業者がその命を奪った海産物の量との間には、相当の開きがあることになる。

なんだか、「付加価値」をつけるためだけに資源がムダに使われている気がしなくもない。

その意味で、「ヤバイよ漁業」の原因は漁業者だけにあるのではなく、当然我々にもある。

いくつか引用。

《FAOの統計は、各国からの申告にもとづいて作成されていることから、しばしば正確性を欠いている。多くの国が自国の漁獲量を過小申告していることは公然の事実である。例えば、イエメンは自国湾岸部海域でのマグロ漁を一〇〇〇トンと申告しているが、実際には、イエメンのマグロ販売量は四万トン近くもある!》(p73)

税金逃れのための過少申告のようなものですかね。

《また、ワトソンとポーリーは中国の申告に驚愕したという。》(p73)

もっと激しい過少申告か?

《というのは、中国以外の場所で漁獲量が頭打ちになり始めた一九八〇年から一九九八年の時期に、中国の漁獲量は飛躍的に増加したからである。》(p73)

うーむ、やはり人口増が激しいし、漁業技術も向上したせいだろう。

と、思ったら。

《彼らは漁場ごとに中国の漁獲量をさまざまな国の漁獲量と比較することで、中国の漁獲量には信憑性がないことを示し、中国の漁獲量がかなり過大申告されていることを突き止めた。(中略)その差は著しく、中国が一九九九年に発表した一〇一〇万トンの漁獲量は、実は五五〇万トンに過ぎなかったことが明らかになった。》(p74)

《過大申告に至った唯一の要因は、中国の社会主義経済体制である。行政責任者にとって当時の合言葉は、他の農産物同様に、水産物の収穫量の拡大であった。よって、中国の統計システムは暴走し、たとえ現実に則していなくとも、中央政府のかかげる目標を満たすように申告をした。》(p74)

企業の粉飾決算みたいなものですね。

しかしなあ。こういうのを読むと、かつて社会科や地理で習った各種統計数字も、かなりアヤシイもののように思えてくる。

社会科や地理では、そういうことも教えればいいのではないかな。統計数字を鵜呑みにしない姿勢。

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著者プロフィール

川渕 健二(かわふち けんじ)
おかしいものはおかしいと口に出して言えること、
他者と協同してそれを是正していける人が増えることを願う、
Z会の中高一貫コース「総合」担当者。釣りをこよなく愛する。

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