どーんとこい!中学入試の算数

第14回  東大生も悩む!? 図形問題

大人でもちょっと手こずってしまうような、難問奇問が続出する中学入試の算数。
でもだいじょうぶ、コツさえつかめば怖くありません!
学習サポートセンターのカズが、算数を楽しく学ぶ方法を伝授します。

昨年度、いちばん人気だった記事は「図形のひらめき問題」でした。そこで、今回も図形の問題に挑戦していただきます。

図形の問題にもいろいろあるのですが、カズが魅力的に感じるのは、「難しそうに見えて、本当に難しい」問題ではなく、「簡単そうに見えて、深く考えさせられる」問題です。人と人との関係でも、見た目もビシッと決まっているまじめそうな人が意外と抜けている一面を持っていたり、ほんわかした雰囲気の持ち主が鋭い意見を発したり、意外な一面を見つけるとなんだかうれしく、親しみ深く感じることも多いですよね。気づけるとうれしい意外な一面とは、その人のよい面で、算数の問題であれば意外と「考えさせられる」、人であれば「かわいい」とふと思ってしまうようなところでしょうか。

今回は、算数のそんな問題です。小問集合のなかの1問ではありますが、実際の入試では、実力のある受験生も苦労したのではないでしょうか。東大生でも、すぐに解ける人はそう多くはないような気がします。解いてみたあとに、「この問題、かわいい!」となればうれしいです。

問題

次の図について、BD:DCをもっとも簡単な整数の比で表しなさい。

(1)三角形ABCは、角Aが直角でAB:ACが2:3の直角三角形です。ADとBCが垂直になるように、点Dを辺BC上にとります。

(2)2つの三角形を組み合わせてできた手裏剣型四角形(凹四角形)があります。このとき

      角ADBと角ADCは120°、角BACは60°

      AB:AC=1:2

   です。

ヒント

今回参考にした実際の入試問題は、多少のアレンジはしましたが、ほぼ(2)と同じです。単独で出題されたら、とまどう受験生も多いのではないでしょうか。(1)があることで、かなり解きやすくはなっているはずです。

(参考)

2017年度洛南高等学校附属中学校 第2問(3)

解答・解説はこちら

解答

(1)三角形ABDと三角形CADが相似な三角形であることを示します。

角Bは、180°から角ADBと角BADを引いた角度になりますので、角ADBが直角であることから、

   (角B)=180°-(角ADB)-(角BAD)

       =180°-90°-(角BAD)

       =90°-(角BAD)……①

次に、角CADは、角BACから角BADを引いた角になりますので、角BACが直角であることから、

   (角CAD)=(角BAC)-(角BAD)

        =90°-(角BAD)……②

①と②から、角Bと角CADは等しく、角ADBと角CDAは直角ですから、三角形ABDと三角形CADは3つの角度が同じになっている相似な三角形です。したがって、

   AB:AC=2:3(2つの三角形の最も長い辺の比)

であることから

   BD:AD=2:3(2つの三角形の最も短い辺の比)

   DA:DC=2:3(2つの三角形の2番目の長さの辺の比)

すなわち、AD(=DA)を6とすれば

   BD=4、DC=9

よって

   BD:DC=4:9 (答)

※注 中学では、相似な三角形を示すのに、2つの角度が同じであれば相似といってしまってかまいません。ここでは、中学受験用の解答のため、3つの角度が同じになることまで書いています。

 

(2)三角形ABDと三角形CADが相似な三角形であることを示します。

角Bは、180°から角ADBと角BADを引いた角度になりますので、角ADBが120°であることから

   (角B)=180°-(角ADB)-(角BAD)

       =180°-120°-(角BAD)

       =60°-(角BAD)……①

次に、角CADは、角BACから角BADを引いた角になりますので、角BACが60°であることから

   (角CAD)=(角BAC)-(角BAD)

        =60°-(角BAD)……②

①と②から、角Bと角CADは等しく、角ADBと角CDAは120°ですから、三角形ABDと三角形CADは3つの角度が同じになっている相似な三角形です。したがって、

   AB:AC=1:2(2つの三角形のもっとも長い辺の比)

であることから

   BD:AD=1:2(2つの三角形のもっとも短い辺の比)

   DA:DC=1:2(2つの三角形の2番目の長さの辺の比)

すなわち、AD(=DA)を2とすれば

   BD=1、DC=4

よって

   BD:DC=1:4 (答)

いかがでしたでしょうか。(1)と(2)の考え方はほぼ一緒ですね。

(1)については、Z会中学受験コース5年生8月号で習う「相似」の問題だとわかれば、難なく解ける問題です。しかし、(2)は一見すると、補助線を引いて解く問題のようにも見えるため、知識のある方ほどとまどったかもしれませんね。

※2018年度の洛南高等学校附属中学校の大問4の(2)の問題は、前年度を踏襲して出題されたものと思いますが、さらに難しくなっています。相似に気づくのは容易ですが、その後が続きません。(3)もかわいい問題ですが、相当に難易度が高いと思います。図形問題に自信のある方は、ぜひこちらの問題にも挑戦してみてください。

 「人は見かけで判断してはいけない」とはよく言われますが、図形問題についても言えそうですね。読者のみなさんが、解答を見て、

   なーんだ、かわいい問題じゃん!

と思ってくれればうれしいです。

それでは、また来月をお楽しみに。

まだZ会員ではない方

プロフィール

出題・文

学習サポートセンター カズ

Z会の学習サポートセンターで、日夜会員のみなさんからの質問相談に応じている。

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