どーんとこい!中学入試の算数
第18回 得なのはどっち?
2018.6.28
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大人でもちょっと手こずってしまうような、難問奇問が続出する中学入試の算数。
でもだいじょうぶ、コツさえつかめば怖くありません!
学習サポートセンターのカズが、算数を楽しく学ぶ方法を伝授します。
こんにちは。学習アドバイザーのカズです。
今回のテーマは「買い物」です。皆さんも日ごろ、次のような割引きの宣伝文句を目にしませんか。
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定価を吊り上げている場合もあるので、そこにも注意が必要ですが、いろいろな書き方をしていてもつまり「定価の○%引き」ってこと。今回は、そんな日常生活にも役立つような記事を書いてみました。
ちなみに、上記の最初の3つの割引き表現は、「定価の○%引き」という表現に直せば下のとおり。
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定価からの割引額とポイントで同じ割合だったら、現金を引いてくれるほうが断然オトク!
また、2着目半額は破格の安さに見えますが、1着目を割引きなしで買っていることを忘れてはいけません。
この間、お店の人に「2着目だけください。」と言ったら、笑われましたね。当たり前ですが、1着目を買わなければ、買おうと思った2着目は1着目に化けます。
の割引きについては、3%引いてくれているような錯覚をいだきますが、正確には、高いものほど割引率が2.9%引き(3÷103)に近づくという話です。たとえば、単品で1000円のものは29円引きになりますが、単品で100円のものは2円引きですので、実質2%引きでしかありません。また、単品で34円のものは、いくつ買っても割引き額は0円です。見た目と実際が意外と異なることを実感していただけるのではないでしょうか。
それでは、問題を見ていきましょう。
問題
1枚あたりの税込み定価が100円のゼットコインをサギ屋とトキ屋で売っています。売り方は次の通りです。
サギ屋:10枚までは定価で販売。それを越えるコインに対して、8枚買うごとに1枚のおまけがつきます。 トキ屋:値段はすべて定価の10%引き。 |
ただし、ゼットコインは1枚以上を買うものとし、余分に手に入れてもよいものとします。
(1)サギ屋で買ってもトキ屋で買っても同じ値段になるのは、何枚手に入れるときでしょうか。すべて答えなさい。
(2)サギ屋のほうがトキ屋よりも200円安く手に入れることができるのは、何枚手に入れるときでしょうか。もっとも少ない枚数を答えなさい。
ヒント (1)答えは9通りあります。多少の根性が必要かもしれませんが、規則性に気がつけば計算で求めることができます。 (2)8枚ごとに1枚のおまけだけだと、実質で約11%引きとなります。したがって、たくさん買うのであれば、どこかでサギ屋のほうが得になります。200円安くなる枚数も9通りありますが、(2)では、そのもっとも少ない枚数を答えます。 (参考)2018年度桜蔭中学校 第3問 |
この間、スーツを買うのに、コートとあわせて3着買ったら、2着目だけではなく3着目も半額にしてくれました。これは実質2着の価格で3着購入ですから、約33%引きです。この値引率ならまだ利益が出るということなんでしょうね。でも、これが10着目でも半額だったらどうでしょうか。これだと45%引になりますね。こんどお店に行ったら聞いてみたいと思います。
解答・解説はこちら
解答
(1)まず10枚買うとき、サギ屋は1000円、トキ屋は900円です。また、そこから9枚手に入れるごとに、サギ屋は800円、トキ屋は810円かかります。したがって、追加購入を
(1000-900)÷(810-800)=10(回)
繰り返すと、サギ屋とトキ屋の購入価格は同じになります。よって、はじめて同じ価格になるのは
10+9×10=100(枚)
のときです。
その後、9枚ごとにサギ屋のほうが10円安くなりますが、それ以外ではトキ屋のほうが10円安いです。したがって、おまけが1回ある10枚を手に入れるための値段はどちらも900円です。つまり、
110枚、120枚、130枚、…
を手に入れるときも同じ価格になり、おまけがつくときの枚数は
109枚、118枚、127枚、…、
これを続けていくと181枚、190枚が出てきますが、180枚を手に入れるためにサギ屋では、(10枚)+(9枚追加を18回)+(8枚)と考えて
1000+800×18+800=16200(円) (実際には181枚を手に入れることになります)
トキ屋では
90×180=16200(円)
ここでは同じです。しかし、190枚を手に入れるためにサギ屋では、(10枚)+(9枚追加を20回)と考えて
1000+800×20=17000(円)
トキ屋では
90×190=17100(円)
181枚目から190枚のなかに、おまけで手に入れたコインが2枚あるので、サギ屋のほうが安くなります。
以上から、求める答えは
100枚、110枚、120枚、130枚、140枚、150枚、160枚、170枚、180枚 (答)
の9通りになります。
(2)(1)から、はじめて同じ値段になるのは100枚のときです。その後、9枚追加するごとにサギ屋のほうが10円得するので、サギ屋のほうが200円得になるのは
100+9×(200÷10)=280(枚) (答)
のときです。
ちなみに、(2)もすべてを求めるのであれば
280、290、…、360(枚)
の9通りということになります。
いかがでしたでしょうか。
これでお買い物に行ってもだいじょうぶですね。「缶詰の5個目半額セール」などの文言にだまされることはないでしょう(これは実質1割引きということです)。この記事をきっかけに、スーパーなどの値引きがどのようなものなのか理解が深まれば幸いです。お子さまと一緒に、どれだけ買ったらどちらが安くなるのかを考えてみてもよいかもしれません。
それでは、また来月をお楽しみに!
まだZ会員ではない方
プロフィール
出題・文
学習サポートセンター カズ
Z会の学習サポートセンターで、日夜会員のみなさんからの質問相談に応じている。