どーんとこい!中学入試の算数

第20回  「なぜ」を考える力

大人でもちょっと手こずってしまうような、難問奇問が続出する中学入試の算数。
でもだいじょうぶ、コツさえつかめば怖くありません!
学習サポートセンターのカズが、算数を楽しく学ぶ方法を伝授します。

こんにちは。学習アドバイザーのカズです。今回は、平均の速さについて考えます。

たとえば、行きは時速40km、帰りは時速60kmの平均の速さはいくつでしょうか? 答えは時速50kmにはなりませんよ。

中学受験では、せいぜい正しい「平均の速さ」を求めさせるところまでしか出題されませんが、これからの未来を生きる子どもたちには、「どうして時速50kmではないのか」を説明できる力をつけてほしいですね。

棋士の藤井聡太七段は、将棋ソフトを使用して将棋の勉強をしているそうですが、朝日新聞に寄稿した文章ではこんなことを言っていました。

ソフトによる、既存の常識にとらわれない将棋に触れたことは、自分にとって有益だったと確信しているが、一方でソフトを使うことはリスクをはらんでもいる。一つ間違えれば、思考そのものをソフトに委ねて、自ら考えるのを放棄することになりかねないからだ。これからもソフトの価値観を取り入れつつ、自分の読みも大事にしていきたいと思う。

(朝日新聞(朝刊)2018年4月6日)

とてもすばらしいコメントです。感動しました。受験算数についても同じですね。解き方を知り、身につけることは大切なことですが、より高みを極めるためには、「なぜ、そうなるのか」を考え、自分でも思考し続けることが非常に大切です。

そこで今回は、そういった「なぜ」を考える力が必要なことを実感していただきましょう。

問題

はしっ太くんは、陸上部の選手です。いつも片道5kmのゆるやかな坂を上って練習しています。行きは分速80m、帰りは分速120mで走ります。

(1)あるい太くんは、はしっ太くんと同じ時間をかけて往復を一定の速さで走ります。このときの速さを求めなさい。

(2)(1)で求めた平均の速さは「分速100m」にはなりません。どうしてそうなるのかを説明しなさい。

 

 

ヒント

(1)ぱっと見は、平均の速さということで「分速100m」のような気がします。ここは、往復の距離と往復にかかった時間を出して計算してみましょう。

(2)正しい計算の仕方はわかっても、どうしてそうなるのかは意外と説明しにくいもの。そもそも「速さ」とは何か? どういう場合に2つの数字の平均が使えるのか。そのあたりを考えてみるとよいでしょう。

(参考)

2018年度学習院女子中等部 第3問

2017年度慶應義塾中等部 第2問(1)

(2)のような問題は答えが一通りではなく、採点が難しいです。したがって、よほどのことがない限り中学入試に出ることはないでしょう。しかし、これからの時代に必要な能力は、まちがいなく「なぜ」を考えることのできる力です。マニュアルがあって、その通りにやればできるものは、それこそ AI(人工知能)の得意分野ですもんね。

では、早速ですが、解答を見てみましょう。

解答・解説はこちら

解答

(1)5kmは5000mだから、往復にかかった時間は

   (分)

   (後のことを考えて、あえて必要以上の約分はしていません)

したがって、10000mを走るのに分かかったのだから

   10000÷=4×24=96(m/分)

すなわち、求める速さは分速96mになります。 (答)

 

(2)速さは、(距離)÷(時間)で求められる「割合」です。したがって、「同じ距離」を走ったときの2つの数値の平均は、たして2でわることはできません。2つの数値が「同じ時間」で走ったときにだけ、たして2でわって平均を計算することができます。

たとえば、分速80mで50分、分速120mで50分走ったときの平均の速さは分速100mになります。

いかがでしたでしょうか。割合は単純に平均を計算してはいけないということです。速さで実感できなければ、食塩水の問題や極端な事例を考えてみるとよいでしょう。

たとえば、2%の食塩水150gと8%の食塩水150gを混ぜると、5%の食塩水が300gできます。2%の食塩水200gと8%の食塩水100gを混ぜると、4%の食塩水が300gできます。前者は、2と8をたして2でわって5を導くことができますが、後者はそのような計算ができません。食塩水の場合には、重さの同じものどうしでなければたして2でわる平均は使えません。2%の食塩水299gと8%の食塩水1gを混ぜたときを考えてみると、感覚的にも、2%に近い濃度になることが実感できると思います。

こういった錯覚は、日常生活にも潜んでいます。第18回でも紹介しましたが、「缶詰の5個目半額セール」のように、一部分を取り出してそのメリットを強調するけれど、全体ではそれほどの得にはなっていないというケースです。数字を使った表現でなくとも、メリットを強調し、デメリットは伏せて、主張を通すということはよくあることでしょう。

そういう意味で「半額って書いてあるから、とってもオトクなんだ!」と、短絡的に結論を出してはいけません。「なぜ」を考える力は、これからを生きる子どもたちに必須の力と言えるのです。

今回は以上です。また来月にお会いしましょう。

まだZ会員ではない方

プロフィール

出題・文

学習サポートセンター カズ

Z会の学習サポートセンターで、日夜会員のみなさんからの質問相談に応じている。

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