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夏休みの難関、自由研究のテーマ決め(2)

【インタビュー】目的は世紀の大発見じゃない! テーマは考えながら深めていくもの。

自由研究のいちばんの難関、テーマ決め

――子どもが自分でテーマを決めることが大事だとはわかりましたが、実際は「何を研究したらいいのかわからない」「決めて~!」というお子さまも多いようです。

そう、テーマ決めがいちばん難しいんですよね。

テーマを考えるうえで覚えておいてほしいことが3つあります。1つは、テーマを考えるという作業自体が、意味があるということ。もう1つは、すばらしい発見をすることが「いい研究」なのではなく、前よりももっといい問いをもてるようになることに自由研究の意義があるということ。最後の1つは、あらかじめテーマを決め、そこに向かって調べていくよりも、調べながらテーマを深めていくほうがいい、ということ。

 

――どういうことでしょうか。

たとえば「ぼくは毎朝なかなか起きられない。なんで?」という素朴な疑問をきっかけに、「睡眠」に興味をもった子がいたとします。そこで「みんなは何時間ぐらい寝ているの?」と気になって調べ始め、しだいに、「それじゃ大人は何時間ぐらい寝ているの?」「昔はどうだった?」などと新たな疑問が生まれ、さらに調べを進める。その結果、「大人と子どもの睡眠時間は、このくらい違うとわかった。でも今度は、健康のためには何時間寝ないといけないのかがわからなくなった」となる――。

これは最初から「健康を維持するには何時間寝ないといけないのか」とテーマを決めて、本などで調べて「わかった。終わり」というよりも、成功しているといえるでしょう。

 

――どうしてでしょうか。

自分で課題を見つけ、掘り下げていくうちに発見と新しい疑問が生まれ、また掘り下げる。これを「問題解決のサイクル」といいます。この「問題解決のサイクル」をくり返すことで、主体的に学ぶ力がついていくからです。また、自分で調べて得た発見や新たな疑問は、次の学びや意欲につながるすばらしい成果です。これからの社会で求められる、”新たな価値を創造する力”をつけていくでしょう。

 

――なるほど! 最初から見栄えのする結果を想定し、その結果が出るように調べる、という進め方をしがちですが、そうではないのですね。

そうなんです。だからこそ、最初は本当に小さな興味でいいんです。

お子さま自身でテーマを絞ることができないようなら、保護者の方はお子さまの「これに興味がある」というものを見つけ、「それを自由研究にしたらどう?」と声をかけてみてはいかがでしょうか。たとえば、「マンガが好き」でもいいと思いますよ。主人公のどんなところがかっこいいのか、似たようなキャラクターはほかにいないのか調べるうちに、「ヒーロー大研究」になるかもしれません。それも立派な研究です。

 

「興味のあること」がない子はどうしたらいいの?

――はっきりと「これに興味がある」というものを持っていない子どもの場合はどうしたらいいでしょう。「何が好き?」と聞いても、「別に……」というお子さまも。

好きなものやことがはっきりしないお子さまには、最初に選択肢を示してあげるといいと思います。

教科書を見ながら1学期の授業を振り返り、おもしろかったことや発見したことを聞いたり、子ども新聞などの記事を読み直して「何か気になったニュースはあった?」と探したり。あるいは生き物が好きなお子さまなら動物園や水族館に行く、本が好きなお子さまには図書館で読みたい本を選ばせるのもいい方法です。何もないところから思いつくのは難しいので、何かを見たり場所を移したりして、お子さまの興味を見つけます。

それで、たとえば水族館のアシカにお子さまが“食いついた”なら、「帰ったら一緒に図鑑でアシカを調べてみようよ」などという声かけをすることで、研究につなげることができます。

 

――そういったことに食いつかず、お菓子を食べながらゲームばかりしているような場合は?

お菓子やゲームも、立派な題材になりますよ。たとえばお菓子好きな子には、「一緒にお菓子作りに挑戦してみようか。世界のお菓子を調べてもいいね」と提案できます。

 

――最初から自分でテーマを見つけようとしなくてもいいということでしょうか

慣れないうちはうまくテーマを見つけられないものです。最初は選択肢を与えて選ばせつつ、発想の広げ方を教える。やがて少しずつ自分で疑問を抱き、問題解決のサイクルをまわすことができるようになっていくでしょう。

研究を進めるときも同様に、行き詰まっているようなら「お菓子が膨らまなかったね。どうしてかなぁ」などと、次の研究につながるヒントを与えてもいいと思いますよ。

ただし、自分で疑問に思って調べることが大事なのですから、押しつけはダメ。また、「お菓子が膨らまなかったけれど、おいしいからよかったじゃない。がんばったわね」などと、安易ななぐさめも要注意です。せっかくの「どうしたらいいんだろう」という疑問の芽をつぶしてしまいかねません。

 

プロフィール

西岡 加名恵 (にしおか・かなえ)

京都大学大学院教育学研究科教授。
京都大学大学院教育学研究科修士課程修了後、英バーミンガム大学大学院教育学研究科博士課程を修了、Ph.Ⅾ(Education)取得。鳴門教育大学学校教育学部講師、京都大学大学院教育学研究科准教授などを経て現職に。カリキュラム論、教育評価論など教育方法学を専門とし、各地の学校に入って、調べ学習などアクティブ・ラーニングを行う際の評価について研究を進める。近著に『アクティブ・ラーニング 調べ学習編』『アクティブ・ラーニング 学習発表編』(共にPHP刊)がある。

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