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子どものストレス対処法(2)

【インタビュー2】ふだんからお子さんを観察し、お子さんの話に耳を傾けましょう。

ストレスが原因かなと思ったら


――どうやらストレスが原因のようだとわかったら、親はまず何をすればよいのでしょうか?

まず子どもの話をよく聞いてください。ただ低学年のお子さんだと、まだ十分に自分の状況を言語化できないと思いますので、そういう場合はお子さんの「行動観察」をしてみましょう。カウンセリングの現場でも、小さい子どもの場合は、診察室で話を聞くのではなく、現場へ行って、日常生活の様子を観察しデータをとることが情報収集の中心になります。ストレス反応がどういうときに出ているのか、前後の行動や時間帯などのデータを取っていきます。パターンのようなものが見えてきたら、行動観察で把握した事実とともに、子どもに「最近見ているとよく〇〇しているけれど、どうしたの?」(腹痛を訴えている子には、「こういうときよくお腹が痛いって言っているけれど、どうしたの?」など)と声かけしてみましょう。

声をかけるときは、困っていることを前提とした声かけをすることが大切です。たとえば「だいじょうぶ?」と声をかけられると、大人でもなかなか「だいじょうぶではない」とは答えづらいですよね。「困っていることはある?」のように困っていると訴えやすいように話しかけてください。

また、「聞く」ときは、子どもの話が終わるまで「聞き役に徹する」ことが大切です。子どもの話を聞いている最中、さまざまな感情や考えが去来すると思いますが、自分の主義主張、好き嫌い、価値判断は脇において、聞き役に徹してください。子どもの話を遮って、自分の思いを言い出すのは最悪の対応です。子どもの感情をそのまま受け止めて(子どもの感情に同意する必要はありません)、「そうだったんだね」と頷いてあげてください。

「聞く」ことが終わったら、今度はこれからどうするのか「相談」です。子どもがどうしたいのか、どうしてほしいと思っているのか聞いて、どこからどのように問題解決をしていくか話し合い、子どもに今後の方向を選択させます。解決策は子どもが決めるのがポイントです。

親子で手に負えないときは?


――聞いて、話し合った結果、どうやら親子の手には余る問題であることがわかったら、どうしたらいいのでしょうか?

助けを求めましょう。外に助けを求めることは勇気がいるかもしれませんが、親が困ったときに助けを求める姿を見せることは、子どもにとっても「困ったときはだれかに助けを求めていいんだ」ということを理解する大切な機会になります。外へ助けを求めることで「一人でがんばらなくてもいいんだよ」「無理なら助けを求めてもいいんだよ」と子どもに伝えておくことは、これからの人生を生き抜くうえでも大切なことだと思います。

ストレスに強くなるには


――ストレスに対してある程度強くなるにはどうしたらいいのでしょうか? ポイントがありましたらお教えください。

ゼロにすることができないストレスにうまく対処していくポイントは次の3つです。

  • ポイント1:自分のなかにある「つらさ」を認めること
    人は「つらさ」の存在を認めることで、初めてその「つらさ」に対峙することができます。最悪なのは「つらい感情」を「つらくないんだ」と完全否定して、認めようとしないこと。怒っていること、落ち込んでいること、悲しんでいることに気づいてあげることが、ストレスと上手につきあう第一歩です。ネガティブな感情を嫌悪する人もいますが、感情そのものには正も負もありません。自分の感情を無視したり、抑え込んだりしようするとかえって自分を苦しい状況に追い込むことになります。感情にまかせて行動しないようにすればいいのですから、ありのままの状況を「ああ、こうなってしまったんだ」「今、自分はつらいと感じているんだ」と受け止めて、ひと息置き、どうしようか考えるようにしましょう。(※)

  • ポイント2:自分の状況を上手く伝えられるように、自分へ問いかける経験を重ねる
    日ごろから、自分に注意を向けて、自分のなかで起こっている変化・変調をとらえて言語化し、周りに伝える経験を積み重ねて、自分の今の状況を上手に把握できるようになろうと意識してみましょう。
    小さいころは語彙もそれほど多くないので、親が「それはこういうこと?」と助け船を出すかたちで精緻化していくのでもいいと思います。小さいころから自分のなかの思いや考えを表現するという経験をたくさんさせてあげてください。(※※)

  • ポイント3:子どもが安心して助けを求められる環境があること
    子どもにとって家庭はいやなことがあったとき安心して逃げ込むことができる唯一の場です。大人ほど生活圏が広くない子どもには避難できる場所は多くありません。家庭が子どもにとって居心地のよい場所であり続けられるようにするには、まず、親が自分自身のストレスとうまくつきあい、大人の世界のストレスを子どものいる空間に持ち込まないようにする必要があります。子どもは親の話を実によく聞いています。本来なら大人だけがいる場所でするべき会話を子どもの前でついついやってしまうという経験はだれにもあるかと思いますが、子どもに聞かせないほうがよい話題であるときが多いので、極力避けるのが賢明です。


――最後に先生からメッセージをお願いします。

子どもたちに対しては「つらいと思っていいんだよ」と伝えたいですね。怒ったり、落ち込んだり、悲しんだりするのは人間にとってごくごくあたりまえのこと。抑え込む必要はありません。自分のなかのいろいろな気持ちを大切にしてほしいと思います。

親御さんたちには、まずご自身のストレスとうまく付き合ってくださいと言いたいです。そして、子どものことをふだんからよく観察していただければと思います。


――ありがとうございました。

プロフィール

伊藤 絵美 (いとう・えみ)

臨床心理士、精神保健衛生士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。千葉大学子どものこころの発達教育研究センター特任准教授。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程修了、博士(社会学)。専門は臨床心理学、ストレス心理学、認知行動療法、スキーマ療法。大学院在籍時より精神科クリニックでカウンセラーとして勤務。その後、民間企業でのメンタルヘルスに従事、2004年より認知行動療法に基づくカウンセリングを提供する専門機関を開設。2011年より千葉大学で教育・研究に携わる。近著に『イラスト版子どものストレスマネジメント』(合同出版)がある。

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