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子どものやる気を引き出すコツ(2)

新学期のスタートです。春から1年生になったり、新しい習いごとを始めたり、受験モードに切り替えたり、先生やお友だちの顔ぶれががらりと変わったりして、生活が一新するお子さまも多いのではないでしょうか。
それに伴ってこの時期は、「もう○年生なんだから、自分で身の回りのことをさせる!」といった決意の言葉が、保護者の方から聞こえます。でも一方で、「去年もおなじことを言っていたのよね」の声も・・・。
どうしたらお子さま方のやる気を育て、自立につなげることができるのでしょうか。3日坊主で終わらせないコツは?
2016年度さぽナビ「ことばのチカラで自立しよう」の連載でおなじみの高取しづか先生にヒントをいただきました。
(取材・文 松田 慶子)

ほめることとおだてることは違う できたことを認めるのが上手なほめ方

――「できたことをほめる」にはどうしたらよいでしょうか。

上手なほめ方というのは、実際に子どもができていることをほめるということなんですね。子どものモチベーションがアップします。
 ほめ方のコツは、「すごいね」「えらいね」「立派だね」といった言葉を言うよりも、小さな事実を具体的に認め、言葉にすることです。「靴を揃えられたね」「プリントを用意できたね」と、あたりまえに見えることも言葉にします。すると子どもは「見てもらっている」という安心感や達成感が得られ、「またやってみよう」という気持ちになるのです。

――何をほめたらいいかわからない場合には?

今できていることをあたり前と思わずに認めてあげてください。ピアノの練習を30分すべきところ、10分であきてしまっても、その10分のがんばりは認め「10分がんばったのね」と言葉に出す。子どもはほめられた分野をどんどん伸ばします。
 その際は「おだて」にならないように注意しましょう。

――「ほめ」と「おだて」はどう違うのでしょうか。

よく、「いくらほめても言うことを聞かない」という方がいらっしゃいます。ほめ言葉は、「あなたを見ているよ」というメッセージです。それに対して、大人の意図に沿ったことをしたときだけほめ言葉を言うとか、言葉で子どもをコントロールしようとするのは、おだてになります。子どもは親の意図を敏感に察知するもの。察知した途端、やる気が引っ込んでしまう子もいれば、図に乗ってしまう子もいます。今すでにできている事実を認めている限り、おだてにはなりませんよ。

――とはいえ、子どもにはやるべきことをやってほしいものです。

そうですね。だからこそ①のリストアップを先にしておくことが大事です。「これは自分がすること。しないと困るのは自分」と子どもが理解することがキモです。
 宿題をさせたくても、いきなり否定したり命令するのはNG。少しでもできている事実ややろうとする姿勢を見つけて、言葉にしてみてください。たとえば「字がきれいだね」「やろうと思って、ノート出してるんだ」などと、いいところを探して言ってみると、やる気が出てきますよ。いかに自発的に行動するように促すか、工夫が必要なのです。

 ――ほめ方は子どもによって変えたほうがよいのでしょうか。

言葉のかけ方は、子どもの個性に応じるといいですね。人の役に立ちたいと思っているような子どもには、「ありがとう、助かった!」という言葉が響きます。ほめられると照れてしまう子どもには、短く事実を認めるだけのほうが有効かもしれません。親に対して素直になれない思春期の子どもなら、「○○さんが喜んでいたよ」という、間接的な表現がいいときもあります。
 学習習慣を身につけさせたいときなどは、言葉で認めるだけでなく、カレンダーにシールを貼ったり、「○日続いたら、△△に遊びに行こうか」などと目標を立てたりするのもいいと思います。親子で楽しみながら取り組める工夫をしましょう。

前向きな声かけが子どもを伸ばす ときには親子で悩む経験も大事

――「しからずに具体的・前向きに伝える」とは?

しからなくてはいけないときに、具体的に伝えることが大事です。また否定的な言葉を使わずに、前向きな表現に置き換えるといいでしょう。
 たとえば子どもが靴を脱ぎっぱなしにしているとき。「脱ぎっぱなしはダメじゃない!」としかるのではなく、「揃えてくれると玄関がスッキリする」に置き換える。具体的・前向きなフィードバックは、ほめ言葉に匹敵し、やる気を引き出すことが研究でわかっています。

――少し具体例を教えてください。たとえば、いちばん言ってしまいがちな言葉に「早くしなさい!」があります。これはどう言い換えればいいのでしょうか。

まず、タイミングを知らせるという方法がありますね。「もうすぐ8時だよ。○○ちゃんが迎えに来る前に準備できるといいね」「夕飯の前に宿題を終えられると気分がいいね」など。ときには「7時から夕食にするけれど、宿題はどうする?」と考えさせることも大切です。「早く片づけて早くおやつ食べようね」と、モチベーションをアップさせる作戦もいいでしょう。

――「宿題をまだやっていないの?」「Z会はやったの?」と、ついきつい口調で言ってしまいそうなときは?

子どもが宿題をやるべきものだとわかっているのかどうかを、まず確認しましょう。低学年だと、毎日するものだとわかっていないことがあります。その場合はリストアップした紙をもう一度一緒に見て、「お父さんは毎日、仕事に行っているでしょう? ○○ちゃんだって毎日することがあるのよ」と、やさしく伝えてあげてくださいね。
 わかっていてもやらない場合は、「宿題をしておくと、授業についていけるね」と声をかけてもいいし、高学年の子には「寝るまでの○時間で終えないといけないから、考えてやってね」と任せてもいいでしょう。

――中学受験をする子の場合、受験勉強のモチベーションを維持させたいときはどうしたらいいでしょう。思うように成績が伸びないと子どものやる気も削がれるし、親も費用と労力をかけている分、子どもに任せてはいられないものです。

わたしもそうでしたが、受験生をもつ保護者の方は大変ですね。「勉強しろ」と口には出さなくても、眉間にしわが寄っていることも(笑)。
 これは、親子で一緒にがんばる経験をする機会だと割り切るしかないと思います。「大変だね。一緒にがんばろうね」と励まし応援する。「このままだと落ちるよ」など、ネガティブな言葉をかけることは、よくありません。どうしてもそんな言葉が口をついて出そうなときは、その場を離れて深呼吸したり、おうちの他の人にバトンタッチしたりしましょう。
 中学受験でがんばった経験は、成否に関わらず子どもの財産です。親子でいい修行をしていると考えてほしいものです。
 受験期のお母さんに限らず、きちんとした子育てをしようと思うこと自体、きちんとしたお母さんの印です。子どもには自分で伸びていく力があります。社会の中で育ててもらえます。だからあまり1人でがんばろうと考えず、大らかに見守っていきましょう。

⇒次ページに続く 「お子さまのタイプ別・上手なほめ方」をご紹介します。

プロフィール

NPO法人JAMネットワーク代表・「ことばキャンプ」主宰

高取 しづか さん

消費者問題・子育て雑誌の記者として活躍後、1998年渡米。アメリカで出会った仲間や日本の友人とJAMネットワークを立ち上げた。「子どもの自立トレーニング」をテーマに新聞・雑誌・本の執筆や、各地で講演活動を行っている。神奈川県の子育て支援の委員をつとめ、子育てや教育の現場で支援にあたっている。また、東京都と神奈川県の児童養護施設で社会貢献活動を行っている。おもな著書に『子どもが本当に待っているお母さんのほめ言葉』(PHP研究所)、『子どもに英語を習わせる親が知っておきたいこと』(アルク)、『実用絵本 ことばキャンプ』1~5(合同出版)、『イラスト版気持ちの伝え方』(合同出版)など26冊

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