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子どものやる気を引き出すコツ(1)

新学期のスタートです。春から1年生になったり、新しい習いごとを始めたり、受験モードに切り替えたり、先生やお友だちの顔ぶれががらりと変わったりして、生活が一新するお子さまも多いのではないでしょうか。
それに伴ってこの時期は、「もう○年生なんだから、自分で身の回りのことをさせる!」といった決意の言葉が、保護者の方から聞こえます。でも一方で、「去年もおなじことを言っていたのよね」の声も・・・。
どうしたらお子さま方のやる気を育て、自立につなげることができるのでしょうか。3日坊主で終わらせないコツは?
2016年度さぽナビ「ことばのチカラで自立しよう」の連載でおなじみの高取しづか先生にヒントをいただきました。
(取材・文 松田 慶子)

保護者の働きかけがやる気を引き出す 先回りせず、でも手間はかけて

――そもそも、大人の働きかけしだいで、子どものやる気は育つものなのでしょうか。

育ちますよ。ただわたしはやる気も意思も可能性も、すべて子どものなかにあるものだと考えています。だから大人が育てるというより、子どもから引き出す、子ども自身に気づかせるというほうが適当だと思います。
 日本人のお母さんは、「ダメじゃない」「早くしなさい」など否定、命令、伝達の言葉が多いように思います。「〇〇ができていない」「〇〇しなさい」という言葉は働きかけとして一方的なので、子どものやる気はなかなか育ちません。

――確かに、そうかもしれません。

日本では子どもの評価が、すなわちお母さんの評価であると考えられがちです。子どもの失敗はお母さんの失敗・・・。そのため、お母さんは大変なプレッシャーを抱えているように思います。だから、わたしもそうでしたが、子どもに失敗させまいと、つい先回りしてやるべきことを伝達・命令し、失敗しそうになると「ダメでしょ」と言ってしまいがちです。

――なぜ、先回りするのはダメなのでしょうか。

子どもの自分で考える力が育たなくなってしまうからです。「今日は学校に何を持って行くんだっけ」と考える前に、「ほら、プリントを忘れちゃダメでしょ!」と差し出されては、自分で考えて準備する経験ができません。先回りをすることは失敗するチャンスを子どもから奪ってしまうのですね。もしかしたら忘れ物をして注意をされるほうが、子どもにとって大切な気づきの機会になるかもしれないのに。

――でも、忘れ物をさせるのは・・・。

そうですね。だから先回りして指示するのではなく、持ち物の準備のしかたを丁寧に教えることが大事なんです。 意外かもしれませんが、私の住んでいたアメリカでは中学生まで、学校の持ち物を揃えたか、連絡帳に親がサインしていたんですよ。自立を急がせるのではなくて、ゆっくり身につけさせていくという考え方でした。「〇年生だからこのくらいできてあたりまえ」ではなく、できないときはそのつど「こうするのよ」と教えていきます。

――丁寧に教えるのは、なかなか大変そうです。

日本に来たオーストラリア人女性が、使ったバスタオルを放ったらかしにしていた子どもに、お母さんはガミガミ言うけれど結局は片づけてあげる様子にビックリしていました。
 彼女は「あなたが使うものなんだから、自分で片づけるのはあたりまえ」としからずに根気強く伝え、自分でやるまで待ってあげたそうです。時間はかかりますが、自分でやるのがあたりまえになれば習慣化し、結局後でラクになるのです。
 親がガミガミ言い、やってあげていると自立心は育たないのです。片づけないと困るのは子ども自身だと、お母さんが自分と子どもを切り離して考えることが大事なのです。

まずはやるべきことのリストアップから ○年生だから、と枠にはめないこと

――では具体的に、やる気を引き出す方法をお教えください。

家庭ですぐできることとして、①やるべきことの見える化、②できたことをほめる、③しからずに具体的・前向きに伝える、この3つをあげることができます。
 それぞれの進め方は後述しますが、3つを実践するうえで心掛けてほしいことがあります。
まず、「もう〇年生なのだからこうあるべき」と枠にはめないこと。子どもの成長は個人差がとても大きいし、何年生であっても、できないことがあるならやり方を教えればいいのです。また、言葉だけで子どもをコントロールしようとしないこと。一緒に手を動かしたり、「競争だよ」などといって楽しんだりしながら、モチベーションを高めるようにしましょう。

――さっそく、「やるべきことの見える化」について教えてください。

子どもがやるべきことを、親子で書き出し、子どもにわかるようにしましょう。
 実は子どもは、自分のやるべきことが理解できていないケースが多いのです。お母さんが「どうして片づけないの!?」としかっても、子どもは「片づけは自分のすべきこと」と認識していないという具合です。
 そこで、朝起きてから寝るまでの間に、自分でしなくてはいけないことを、お子さん自身に書き出してもらいましょう。お母さんは極力口出しをしないこと。書き出せない場合は、「学校に行くまで、何をしたらいいんだっけ?」「帰ってきたら、どうする?」などと、ヒントをあげてくださいね。

――着替え、ご飯を食べる、宿題、家庭学習、明日の準備などという項目でいいのですか。

はい。でも、ご飯を食べるという行為はお茶碗を流しに下げることまで含まれる、といったことも教えられるといいですね。これは、実際にやりながら身につけていくほうがいいかもしれません。
 低学年のうちは、1日の間にやるべきことの項目を書き出すだけでいいでしょう。高学年になったら、「やるべきこと」を1日のスケジュール表に当てはめ、さらに「やりたいこと」も書き出して、スケジュール表に当てはめていく。「やるべきこと」と「やりたいこと」をはっきり認識することでものごとを計画的に進める力がつきます。
 書き出したら見えるところに貼っておきましょう。

――やらないときは、どうしたらいいでしょうか。

しからずに「何をするんだっけ?」とまず聞いてみます。子どもだって忘れてしまうことがあるし、やりたくない気分のときもあります。せっかちに指示されるのは、親にコントロールされていると感じます。長い目で見て、自分から行動するように促していってください。
 促すコツは、穏やかにゆっくりわかりやすい口調で、具体的に伝えること。また「ご飯の時間までに、テーブルの上を片づけてね」などと、行動のタイミングを知らせること。「このままテーブルにお料理を置くと、どうなっちゃう?」と、子どもに考えさせる質問をすることも、自発性を伸ばすことにつながり、とても大事です。「もうちょっとだね!がんばろう」といった励ましも必要です。

⇒次ページに続く 次のページでは「ほめる」と「おだてる」の違いについてご紹介します。

プロフィール

NPO法人JAMネットワーク代表・「ことばキャンプ」主宰

高取 しづか さん

消費者問題・子育て雑誌の記者として活躍後、1998年渡米。アメリカで出会った仲間や日本の友人とJAMネットワークを立ち上げた。「子どもの自立トレーニング」をテーマに新聞・雑誌・本の執筆や、各地で講演活動を行っている。神奈川県の子育て支援の委員をつとめ、子育てや教育の現場で支援にあたっている。また、東京都と神奈川県の児童養護施設で社会貢献活動を行っている。おもな著書に『子どもが本当に待っているお母さんのほめ言葉』(PHP研究所)、『子どもに英語を習わせる親が知っておきたいこと』(アルク)、『実用絵本 ことばキャンプ』1~5(合同出版)、『イラスト版気持ちの伝え方』(合同出版)など26冊。

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