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プログラミング教育必修化で学校の授業はどうなる?(1)

2020年度から、小学校でプログラミング教育が必修化されることはご存じですか? 2021年度からは中学校、2022年度からは高等学校でも必修となるため、現在小学5・6年生のお子さまにとっても無関係ではありません。なぜ、今、プログラミング教育が必要とされ、小学校の授業はどう変わっていくのか? 6月28日と7月12日の2回にわたってZ会のプログラミング教育担当が解説します。

目次

小学校の授業はどう変わる?

そもそもなぜ「プログラミング教育」なの?

 

小学校の授業はどう変わる?

Q 「プログラミング」という教科ができるの?

A いいえ。「プログラミング」という教科ができるのではなく、これまでの教科の中で「プログラミング」を扱います。

《さらに詳しく》

国語や算数など、学校で教えられる「教科」は「学習指導要領」で決められています。2020年度以降の小学校では、次の10教科が扱われることになっています。

国語、社会、算数、理科、生活、音楽、図画工作、家庭、体育、外国語(=英語)

「学習指導要領」には、プログラミングについて次のように書かれています。

各教科の指導に当たっては、……(中略)……各教科等の特質に応じて……(中略)……児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身につけるための学習活動(を計画的に実施すること。)

これと同じように書かれている項目には、たとえば「児童が学習の見通しを立てたり学習したことを振り返ったりする活動」があります。学習の振り返りなどと同じレベルで「プログラミング」が行われることになるのです 。

Q 実際には「プログラミング」の授業をする先生としない先生が出てくるんでしょう?

A 文部科学省は「確実に行うこと」と指示をしています。

《さらに詳しく》

文部科学省が公表している学習指導要領の「解説書」では、プログラミングについて次のように書かれています。

教科等における学習上の必要性や学習内容と関連づけながら計画的かつ無理なく確実に実施されるものであることに留意する必要がある

まわりくどい言い方ですが、趣旨は明確です。先生方は「プログラミング教育」を行わなければなりません。新たな試みですので、ときにはやり過ぎなほどの扱いであったり、ときにはほとんど扱えなかったりすることはあるかもしれません。

ただし学習指導要領の解説書では、小学校でのプログラミング教育は「プログラミング言語を覚」えたり、「技能を習得」したりするものではないと明言されています。「プログラミングの授業」という言葉から想像されるような授業が行われるのではないことには注意が必要です。

Q それでは、学校の授業ではどういうことを行うの?

A 学習指導要領で例として挙げられているのは、算数の「正多角形」の単元や、理科の「電気の性質」などです。授業の具体的な実践例もいくつか公開されています。

《さらに詳しく》

算数の「正多角形」を題材とした場合、小学校でよく使われる「スクラッチ」という「プログラミング言語」を用いて次のような授業がイメージされているようです。

<スクラッチ画面>


<授業イメージ>

先生「正多角形って、どんな図形か、思い出してみよう。」

生徒「すべての角の大きさと、全ての辺の長さが同じ図形です。」

先生「そうだね。例えば正四角形、つまり正方形だったら、角の大きさは何度になるのかな。」

生徒「90度です。」

先生「そうだね。そこで先生はこんなプログラムを作ってみたんだ。これを動かしてみよう。」

先生「じゃあ続いて、正三角形がかけるように改造してみよう。」

生徒「『90度回す』部分と、くり返しの回数を変えれば、ほかの正多角形も作図できそうですね。じゃあ正三角形なら、『3回くり返す』にして『60度回す』とすればいいのかな?」

生徒「あれ、これだとうまくいかないぞ……!」

先生「それでは、正三角形を描くにはどの数字をどのように変えればよいのか、またそれはなぜなのか、考えてみよう。」


このあと、なぜ思ったとおりの動きにならなかったのかを考え、試行錯誤することで、プログラミング的な思考の経験を積むことができます。

定規と分度器を使って「全ての辺の長さが等しく、全ての角の大きさが等しい」図形を描くこともできますが、複数の例を正確に素早く試すことができるのはコンピュータならではのことです。「プログラミング」を導入することで教科をより深く理解することが、プログラミング教育必修化で求められる目に見える成果なのでしょう。

Q パソコンを使った授業が増えるの?

A 増えるでしょう。学習指導要領でも「コンピュータや情報通信ネットワークなど」を「適切に活用した学習活動の充実」を図ること、とされています。

《さらに詳しく》

学習指導要領の「総則」では、「コンピュータや情報通信ネットワークなど」を活用するための環境整備、これらを活用した学習活動が求められています。つまり、そもそも「コンピュータや情報通信ネットワーク」を活用することが前提なのです。

「プログラミング」はコンピュータ上で行うものですから、「プログラミング教育」が行われることでこれまで以上に「コンピュータを使う時間」は増えることでしょう。また、文部科学省の調査によれば、小学生のタイピング速度の平均は1分間に5.9文字だそうです。ローマ字入力で「こんにちは」と打つのに1分以上かかってしまう速度です。この結果を受け、文部科学省では(一定以上の速度の)キーボード入力など、「情報手段の操作」に慣れ親しむことも指導要領に盛り込んでいます。コンピュータの「操作」を教えることが目的ではありませんが、少しでも「親しむ」時間を確保するためにもコンピュータの使用が増えることが考えられます。

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