特集

キッチンで自由研究~身近なもので科学を実感しよう~(2)

やってみよう!② ~色が変わる?! カラフル焼きそば~

アントシアニンの性質を使って、ちょっと変わった焼きそばを作ることもできます。 

材料(1人分)

  • 焼きそば麺または中華麺(原材料欄に「かんすい」と書かれているもの) 1玉
  • 紫キャベツ(ざく切りにしておく) 70g
  • 焼きそばの具(豚肉、玉ねぎなど) 適宜
  • 食塩、こしょう 少々
  • 鶏がらスープの素 小さじ1と1/2
  • 水 75ml
  • サラダ油 小さじ1
  • レモン汁 少々

【作り方】
①具を炒める。
フライパンにサラダ油を熱し、焼きそばの具を炒めます。火が通ったら、食塩、こしょうで下味をつけて取り出します。
②紫キャベツをゆでる。
同じフライパンに水を入れて熱し、沸騰したら紫キャベツを加えます。
③麺を加える。
紫キャベツがしんなりとして、水が紫色に色づいたら、麺を加えます。菜箸で麺をほぐしながら、水がなくなるまで炒めましょう。

【チェックポイント①】
麺を加えると水や麺が緑色に染まります。

④味付けをする。
①の具と鶏がらスープの素を加えてよく混ぜ合わせたら火を止めます。

【チェックポイント②】
緑色になった焼きそばを少し取り出してレモン汁をふりかけると、その部分だけ麺がうすいピンク色に変化します。

【チェックポイント①】
【チェックポイント②】

麺が緑色に変化したり、ピンク色に変化したりしたのはなぜでしょうか。アントシアニン液の実験をもとに考えてみましょう。

  • 紫キャベツを煮出した液(アントシアニン液)に麺を加えたら緑色になった
  • アントシアニンはアルカリ性にすると水色や緑色に色が変化する性質がある

以上のことから、どうやら麺にアルカリ性の成分が含まれているのではないかという推測ができます。

中華麺や焼きそば麺には、生地をのばしやすくしたり、麺に独特の食感や風味をつけたりするために「かんすい」というアルカリ性の成分が使われています。これが③で麺が緑色に染まった理由です。

では④でレモン汁をかけたらピンク色になったのはなぜか。これはもうおわかりかと思います。そう、レモン汁が酸性だから。レモンにはクエン酸という酸が多く含まれているため、アントシアニンがピンク色に変化したというわけです。

色が変わる実験は「変わった!」という驚きだけでも楽しむことができますが、その驚きを「なぜだろう?」という疑問に変えていくことで、好奇心や探究心を養い、関心を広げていくことができるのではないでしょうか。お子さまと実験をする際にはぜひ、「!」を「?」につなげる手助けをしてあげてください。

1回実験しておわり! にならないために……

――せっかく貴重な時間を使って自由研究に取り組むので、1回やって終わりにはならないようにしたいのですが、興味が続くようにするにはどうしたらよいでしょうか?

今回の色素の話であれば、「紫キャベツ以外にアントシアニンを含むものってどんなのがあるのかな?」と考えてみるとよいと思います。たとえば、ぶどうジュースとか紫玉ねぎとかみょうがとか、ほかのものでも試してみると実験の発展形になるんですね。やってみた実験のなかで、何か1つだけ条件を変えてみて、知識の実証を増やしていく……。

たとえば、焼きそばの実験であれば、うどんやラーメンなど他の麺に変えてみると色が変わらないものが出てきます。うどんだと色は変わりません。そこで、色が変わらないものと変わるものの違いはなんだろうと成分表示を比べてみる。色を変えている犯人はかんすいです。かんすいってどんなものだろうと調べてみるとアルカリ性のものだとわかります。「アルカリ性のものってどういうものがあるだろう?」と探してみると、たとえば重曹水が見つかります。これをうどんに入れると焼きそばと同じように色が変わる。このとき、変える条件は1つだけにすることが大切なポイントです。何が原因でその現象が起こったかをつき止められるからです。1つだけ変えて、いろいろとやってみることが深堀りにつながり、知識が広がっていくんですね。

――実験をしていて、失敗してしまったときは、どうしたらよいでしょうか。

失敗するのはとてもよいことです。今回の焼きそばの実験でもきちんと実験したのに思ったほどの結果が出ないことがありえます。次は成功したいからいろいろ考えますよね。「焼きそばの麺の種類が違ったのかな?」「レモン汁の量が足りなかったのかな?」といったようにそれを検証してみるんです。実際、かんすいが入った焼きそばでもメーカーによって結果が出やすいものと出にくいものがあったりします。どの焼きそばがうまくいくんだろうと試してみてもいいですね。

また、焼きそばの麺に興味をもったら、スーパーの麺コーナーをよく見ることになるでしょう。旅行先のスーパーでは見たことのないメーカーの焼きそばを売っていたりします。そこで、地域によって品揃えが違うんだ! ということに気がついたら、その違いについて、研究してみてもおもしろいですね。

1つ実験しておしまいとなりがちな自由研究ですが、検証の仕方、考え方、興味の広げ方は無限大です。保護者の方が理科のスペシャリストである必要はまったくありません。ただ、お子さまが「なんでだろう?」「こんなことやってみたい!」と興味をもったときに一緒に材料を買いに行ってみたり、図書館に行って「この辺に関係する本があるんじゃない?」とヒントを出してみたり、対応に困ってしまったときは身近な専門家である学校の先生に相談するようすすめてみたりして、お子さまの興味を受け止めていただければと思います。長い夏休みをお子さまと楽しくお過ごしください。

「もっといろいろな実験を楽しみたい!」「もっといろんなことを知りたい!」という方へ

平松 サリー さんが小学生向けに書かれた「おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)」という書籍もあわせて、ぜひご覧ください。わかりやすくておもしろい夏休みの自由研究のヒントがたくさん見つけられると思います。

「おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉) 」
平松サリー(著)講談社 1,296円(税込)

プロフィール

科学する料理研究家、料理・科学ライター

平松 サリー(ひらまつ・さりー)

科学する料理研究家、料理・科学ライター。京都大学農学部卒業、京都大学大学院農学研究科修士課程修了。生き物がつくられる仕組みを学ぼうと、京都大学農学部に入学後、食品科学などの授業を受けるうちに、科学のなかに「料理がおいしくできる仕組み」があることを知る。大学在学中に、科学をわかりやすく楽しく伝えたいとブログを始め、2011年よりライター、科学する料理研究家として幅広く活躍している。著作には『おもしろい! 料理の科学 (世の中への扉)』(講談社)などがある。

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