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親のストレス対処法 〜 高野 優さんに聞くイライラとの向き合い方(1)

子どもの言動に対してついイライラして叱ってしまう経験は誰もが一度はあるのではないでしょうか。その原因はどこにあり、どのように対処すればよいのでしょうか? NHK Eテレ『となりの子育て』(2009〜2011)の司会を務め、2015年には日本マザーズ協会よりベストマザー賞(文芸部門)を受賞された、育児漫画家の高野優さんにうかがいました。
(取材・文=浅田 夕香)

目次

 

親のイライラ、原因はどこにある?

――親はなぜ、子どもを叱ってしまうのでしょうか? その原因や親が抱えるストレスについてどのようにお考えですか?

親が子どもを叱ってしまう原因は、「自分の思い通りにならないから」というのが大きいように思います。「思い通りにならない」には2通りあって、1つは、子どもが自分の思い通りにならない場合。そもそも子どもは思い通りにならないものだということは、みんなわかっているつもりだけど、なんでも許容できる菩薩にはなれなくて、イライラしたり叱ったりしてしまうんですよね。

もう1つは、仕事や体調など、自分自身が思い通りにならない場合。そうしてストレスを抱えているところに子どもの言動が引き金になり、子どもにストレスをぶつけてしまうこともあると思います。

わたしの子どもは今、上から大学4年生、大学2年生、高校1年生で、全員女の子なのですが、今でもイライラしたり、ストレスを抱えて怒ったりしてしまいます。ちょうど今朝も、次女がスマホで朝の5時からお友だちと会話しながらオンラインゲームをしている声に起こされて、カチンときて次女のスマホをソファに投げ捨てて、このインタビューに来てしまいました。わたしの場合、自分なりに決めた道筋から外れるとダメですね。

 

イライラ、ストレスへの対処法――怒りのポイントを知ろう

――そんなイライラには、どのように対処するのがよいのでしょうか?

1つは、子どもに何をされるとイライラするのか、自分の怒りのポイントを知ることだと思います。そうすれば、対処できることが増えます。たとえばわたしの場合、子どもたちが幼いころはコップの中身をこぼされることが一番カチンとくることでした。とくに牛乳やコーヒー牛乳をこぼされたときの怒りがすごくて。このことに気づいたとき、それまで子どもによかれと思って与えていたプラスチック製の軽いコップを、重い湯飲みやマグカップに変えました。すると、子どもたちも慎重になって中身をこぼさなくなり、わたしも怒らずに済むようになったんですね。

それからは、自分が何に怒りがちなのかを冷静に考え、あらかじめ怒りの芽を摘むことを心がけるようになりました。イライラしそうだなと思ったら、先に子どもたちに声をかけるんです。たとえば、床にたくさんの物が散らかっているときには「ごはんの前に一度きれいにしてから食べよう」とか「帰ってきたときに部屋が散らかっていると気分が落ち込むから、ぱーっと片付けてから出かけよう」といったように。

あとは、「自分は何をされると喜ぶか」を考えてみるのもいいと思います。たとえば、わたしの場合、好きな香りのハンドクリームを手に塗ってその香りを味わうのが大好きで、ケンカばかりする子どもたちにイライラしてくると、いつも手に塗って気持ちを切り替えていたんです。やっぱり、心も身体も健康でなければ、フラットな気持ちで子どもたちに接することはできないので、こんなふうに「自分は何をされると喜ぶか、何をするとうれしいか」と考え、自分をいたわることもすごく大事だと思います。子育てをしていると自分のことを後回しする期間が長くなってしまうので。

――ほかにも、イライラへの対処法はありますか?

「〜しないといけない」という考えを捨てると、楽になりますよ。子育てをして、家事をして、仕事もして……というなかで「〜しないといけない」が積み重なっていくと、自分だけでは抱えきれなくなってしまいます。「〜でもいい」「〜しなくてもいい」と考えた方がきっと楽。たとえば「お弁当は手作りじゃなきゃ」と考えてしまいがちですが、それにがんじがらめになって疲弊するよりも、「手作りの方がいいかもしれないけど、冷凍食品を使ってもいいし、コンビニのおにぎりやお惣菜でもいい」と思えばすーっと楽になりますよ。肩の力を抜いていきましょう。

――でも、子どもから「お弁当は冷凍食品でもいいよ」なんて言われると、「え?作るよ?」と意地になってしまうときもあるように思います。子どもが気をつかった一言がプライドを刺激するというか……。

そうなんですよね。わたしもまさにそういうときがあります。親としての意地なんでしょうね。でも、最近はその言葉を素直に受け止めて「ありがとう」と応えています。栄養満点の手作り弁当を作っても、疲れて不機嫌にダンッとテーブルに置いて子どもを送り出していては、自分も子どもも嫌な気分になりますよね。冷凍食品やコンビニのものをうまく使って、笑顔で「行ってらっしゃい!」と送り出す方が気持ちがいいということにしましょう。

⇒次ページに続く 大人だって失敗するもの。不本意に叱ってしまったときは謝ろう

プロフィール

育児漫画家・イラストレーター

高野 優(たかの・ゆう)

育児漫画家であり、大学生、高校生の三姉妹の母。
マンガを描きながら話をするという独特なスタイルで講演をおこなっている。
NHK Eテレにて「土よう親じかん」、「となりの子育て」の司会ほか、日本テレビ系「スッキリ!」にコメンテーターとして出演。2014年 第62回日本PTA全国研究大会記念講演。2015年 日本マザーズ協会よりベストマザー賞(文芸部門)を受賞。
『よっつめの約束』(主婦の友社)、『思春期ブギ』(ジャパンマシニスト社)等、著書は40冊以上になり、台湾や韓国等でも翻訳本が発売されている。最新刊は「思春期コロシアム」(東京新聞出版)。

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