特集
親のストレス対処法 〜 高野 優さんに聞くイライラとの向き合い方(2)
2018.9.27
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大人だって失敗するもの。不本意に叱ってしまったときは謝ろう
――子どもの叱り方で高野さんが心がけていらっしゃることはありますか?
1つ心がけていることは、気分のムラで怒らないことですね。常にフラットな気持ちで接したいと思っています。だからこそ、先ほど申し上げたような、イライラしてきたらハンドクリームを塗るとか、怒りの芽はあらかじめ摘んでおくといったことをしています。そうはいってもなかなかうまくいかないときもたくさんあるんですけどね。
――叱っていいときとよくないときについては、どのように考えていらっしゃいますか?
叱っていいときというのは人それぞれだと思うのですが、わたしが心がけているのは、叱るときは叱るけれど、叱ったらそれでおしまいにすることですね。「あのときは……」と思い出して叱ったりはしないようにしています。
一方、叱らないようにしているのは、子どもが失敗したときです。というのは、わたし自身、両親からできのよい姉と比べられて育ったので、「なぜ姉ができてわたしはできないのかなんて自分ではわからない。だから、できないことを責められてもどうしようもない」という思いをずっと抱いていました。なので、子どもが習いごとでうまくいかなかったり、テストの点がよくなかったりしても、一番しんどい思いをしているのは本人だと考え、叱らないようにしています。
――なるほど。とはいえ、気持ちを抑えられなくて無意味に叱ってしまうこともあるかと思います。そんなときはどうすればよいでしょうか?
そうなったときは、子どもに謝っています。あとから反省して、子どもの寝顔に向かって「明日からは怒らないお母さんになるから」と誓うことも100万回くらいありましたが、でも、枕元で謝っても子どもには伝わりませんから、「さっきはイライラしちゃってごめんね」と謝る。親だって失敗するものですし、案外子どもは切り替えていて「いいよ〜」と言ってくれたりもしますしね。
子どもの成長に合わせて、親も成長していこう
――子どもの成長に合わせて親はどんな声かけやコミュニケーションを心がけるとよいでしょうか?
つい親は「子どもはずっと子どものまま」という感覚で子どもに接してしまいがちですが、子どもの成長に合わせて、親も成長していかないといけないなと思います。わたし自身、昨年、あるテーマパークのテレビCMを見て、何気なく子どもに「行こうか」と声をかけたところ、「なんで?」と返されたんですね。いつも誘うとくるくると回って喜ぶ子どものイメージがあったので「『なんで?』ってなんで?」とわたしは思ったんですが、よく考えるとそんなのはもう何年も前のことで、子どもは「なんで親と行かないといけないの?」という気持ちになっていたんですね。わたしが成長しないでどうするんだと思ったできごとでした。そのつどそのつど、子どもが求めていることを知って、学んで、その子に合ったコミュニケーションを取っていかないといけないなと学びました。難しいことではあるのですが……。
あとは、子どもの生き霊にならないことを心がけています。どういうことかというと、たとえばわたしの三女はサッカーをやっていますが、ずっとベンチなんです。なかなかレギュラーがとれない。でも、それは親の悩みではなく、子どもの悩みなんです。だから、一緒になって泣いたり、悔しがったりはしない。同じように悩んでいたら、一緒に沈んでいくだけですから。もちろん、話は聞くし、共感もしますが、「これはわたしの悩みではなく、子どもの悩みだよね」と冷静に境界線を引いて、じゃあどうやって励ますか、どう背中を押すか、ということを考えていくのが、親の役割だと思います。
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プロフィール
育児漫画家・イラストレーター
高野 優(たかの・ゆう)
育児漫画家であり、大学生、高校生の三姉妹の母。
マンガを描きながら話をするという独特なスタイルで講演をおこなっている。
NHK Eテレにて「土よう親じかん」、「となりの子育て」の司会ほか、日本テレビ系「スッキリ!」にコメンテーターとして出演。2014年 第62回日本PTA全国研究大会記念講演。2015年 日本マザーズ協会よりベストマザー賞(文芸部門)を受賞。
『よっつめの約束』(主婦の友社)、『思春期ブギ』(ジャパンマシニスト社)等、著書は40冊以上になり、台湾や韓国等でも翻訳本が発売されている。最新刊は「思春期コロシアム」(東京新聞出版)。