特集
親のストレス対処法 〜 高野 優さんに聞くイライラとの向き合い方(3)
2018.9.27
9.1K
こんなときはどうすれば? 保護者からの質問 Q&A
ここからは、保護者の皆さまからの質問に答えていただきました。
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Q
子どもがのんびり屋で、イライラしてしまいます。朝ごはんも着替えものんびりで、帰ってきてからも宿題を始めるまでに時間がかかるので、何度も「早くしなさい」と怒ってしまいます。
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A
逆に「ゆっくりでいいよ」と声をかけてみてはどうでしょう。
まず、子どもは大人に比べて体が小さく、動作も遅いので、早くできなくて当たり前だということは理解しておく必要があると思います。そう考えると、小さな子どもが、見上げるほどの背の高さの大人から何度も「早くしなさい」と怒られると、やっぱり怖いですし、焦ってしまって早くできるものもできないかもしれません。ですので、逆に「ゆっくりでいいよ」と声をかけてみてはどうでしょうか。その方が気持ちも落ち着くでしょうし、「早くしよう、頑張ろう」と思えるかもしれません。あとは、やり始めたらほめるなど、言い方を工夫してみるところから始めてみてもいいですね。
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Q
最近、反抗期なのか言うことを聞きません。声をかけると「わかってる」「今やろうとしてた」と言い返してきたり、親を無視したりします。低学年のときは言うことを聞いてくれたのに……。その態度や口ごたえにイライラして、叱ってしまいます。
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A
反抗期は、子どもと同じ土俵に乗らないのがポイント。見守りましょう。
第三者目線で見ると、「いよいよきましたね、反抗期。ちゃんとした成長の証ですね」と思えますが、いざ自分の子となるとそうはいかないですよね。ただ、親を無視することも成長なので、同じ土俵に乗らないのがいちばんいい気がします。親は「ふーん」という気持ちでいて、反抗するだけしてもらって、憑(つ)き物が落ちるのを待つ。頭ごなしに怒ったりはしない。それまでのべったりとした関係から一歩進んで、ちょうどいい距離をお互いが測る時期だと思って、子どもとの付き合い方を考える機会にしましょう。
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Q
学校のできごとを聞きたいのですがまったく話してくれず、友だちや先生とどんな付き合いができているかわかりません。不安でしつこく聞いてしまいます。
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A
無理に話を聞こうとせず、本人が話してきたときにしっかりと聞いてあげましょう。
うちも三女が何も話さない子なので、よくわかります。でも、親の不安はすぐに子どもに伝わるので、しつこく聞くと、子どもは余計に面倒に感じてしまいます。なので、親としては、子どもが話しかけてきたときにしっかりと聞いてあげることが大事。少し大げさにリアクションするなどして、お子さまが話しやすい雰囲気をつくってあげましょう。また、何か言いたそうだな……と感じたときは、横に並んでみるのがオススメです。たとえば、車に乗せたり、横に座って食事をしたり、並んでテレビを見たり……。向かい合わせだと圧迫感が出ますからね。そうして何か話し始めたら、しっかり聞いてあげることです。
あとは、参観日や保護者懇談会など、学校行事に参加したときの掲示物や学校での様子、また、子どもの友だちが遊びにきてくれたときのやりとりなどから子どもの人間関係を垣間見ることもできると思います。
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Q
参観日や学校行事でいつも友だちは発表したり役についたり目立っているのですが、うちの子はぱっとしません。目立たない姿を見てなぜかイライラしてしまい、「○○くんや△△ちゃんはすごいね」とほかの子と比較してしまいます。
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A
目立たなくても、ぱっとしなくてもいい。その子らしさを認めてあげましょう。
保護者の方がそう感じているなら、お子さま自身も「自分はぱっとしない。なんで目立つことができないんだろう?」と思っているかもしれません。そこに輪をかけて「○○くんや△△ちゃんはすごいね」と声をかけると、お子さまは自分の気持ちをどこに置けばいいのかわからなくなってしまうのではないでしょうか。ぱっとしている、目立つ、ということ以外にも、人にはそれぞれよいところがあります。たとえば、人を応援する姿勢、縁の下の力持ちであること、頼まれたことをしっかりとやり遂げることなど……。そういった、お子さまのよさを認めてあげることが大事だと思います。
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Q
中学受験を考えています。テストで悪い点数を取ると「どうしてできなかったの?」「これじゃあ受からないよ」などと言ってしまいます。
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A
子どもの性格に応じた声かけをしてあげましょう。
そうやって声をかけるということは、お子さまを発奮させたいんですよね。ただ、どんな言葉が発奮材料になるかは、本当に子どもの性格によります。「これじゃあ受からないよ」と言われて発奮する子がいれば、落ち込む子もいますし、できたことを褒めることで伸びる子がいれば、手を抜き始める子もいますから。こればかりは100人100通りですから、お子さまの性格をふまえて、塾や学校の先生とも相談して、その子にとっていちばんの発奮材料になるような言葉や声のかけ方を考えることが大事だと思います。
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Q
共働きです。忙しく、子どもの習いごとの送り迎えもあり疲れがたまってしまいます。そのときの体調で子どもに当たってしまうことがあります。
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A
本当に必要な習いごとか、一度整理してみるのも手です。
子どもが「やりたい」と言った習いごとであれば、やらせてあげたいのが親心ですよね。でも、親が疲れてしまうと生活が回らなくなってしまいますし、それで子どもに当たってしまうのは悪循環です。疲れをためないために、そして、子どもに当たらないために、その習いごとは本当にお子さまがやりたいことなのか、あるいは、本当に必要なものなのか、ということを、一度整理してみるのも手ではないでしょうか。自分が疲れないことを考えるのも大事だと思いますよ。
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Q
ママ友との付き合いにストレスを感じています。もともと人付き合いが苦手なのです。
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A
ママ友は、いてもいなくてもいいもの。「同じ年の子どもがいる知り合い」くらいに考えましょう。
ママ友とは気が合うわけがないくらいに考えるのが楽だと思います。だって、ママ友との共通項というと「子どもの年齢」くらいで、学生時代の友人のように同じ体験をした相手ではありませんから。友だちはほかにいて、たまたま子どもの関係で付き合っている人くらいに考えましょう。わたしの勝手な解釈ですが、ママ友の関係って、幼稚園の3年間、小学校低学年3年間、高学年の3年間という、だいたい3年サイクルで変わっていくと思うんです。3年というと少し長い感覚があるかもしれませんが、3年後には自分の周りにいる人が変わると思えば、少しは気持ちが楽になりませんか?
あとは、べったり依存しない・されないというのも大事です。極端に言えば、ママ友がいなくても生活は成り立ちます。いてもいいけどいなくてもいいもの、と考えるのもアリだと思います。力を抜いて付き合うと、いつしか気が合うママ友ができるかもしれませんよ。
自分を大事にしながら子どもを見守っていこう
――ありがとうございました。最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
自分と子どもたちを振り返ると、子どもたちの小学校時代って、楽しくもあり、大変でもありました。でも、あのとき、笑ったり泣いたりを繰り返した日々が、その後にも繋がっています。迷ったり悩んだりしたことは、1つも無駄になっていません。
「大変」という言葉は「大きく変わる」と書きますよね。「大変だ……」と悩んでいるときは、何かが変わるとき、自分が成長するときなんだと思います。だから大変。でも、そのあとにはまた1段階段を上がった世界が広がっているので、迷いながらもしっかりと子どもを見守り、向き合っていけるといいのではないかと思います。「乳児はしっかり肌を離すな/幼児は肌を離せ 手を離すな/少年は手を離せ 目を離すな/青年は目を離せ 心を離すな」という言葉がありますが、この言葉のとおり、小学生の時期にがっちりと子どもと遊び、けんかをして、という濃密な年月を過ごすことはとても大事なことだと思います。そこで子どもとの関係の根っこがしっかりとできれば、子どもとの距離が少し離れるときがあっても、なんとでもなると思います。
一方で、自分を大事にすることも忘れずに。自身が不満を抱えたり、疲れたりしている状態で「子どもを大事にしよう」と思ってもできません。もっともっと自分を甘やかして、自分を大事にしていいと思いますよ。
プロフィール
育児漫画家・イラストレーター
高野 優(たかの・ゆう)
育児漫画家であり、大学生、高校生の三姉妹の母。
マンガを描きながら話をするという独特なスタイルで講演をおこなっている。
NHK Eテレにて「土よう親じかん」、「となりの子育て」の司会ほか、日本テレビ系「スッキリ!」にコメンテーターとして出演。2014年 第62回日本PTA全国研究大会記念講演。2015年 日本マザーズ協会よりベストマザー賞を受賞。
『よっつめの約束』(主婦の友社)、『思春期ブギ』(ジャパンマシニスト社)等、著書は40冊以上になり、台湾や韓国等でも翻訳本が発売されている。最新刊は「思春期コロシアム」(東京新聞出版)。