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子どもの思春期を上手に迎えるために(2)

思春期の子どもに対して、親ができること

子どもをよく観察し、反抗の芽をつぶさないで

――「うちの子、あまり反抗しない……」と不安に感じる保護者も多いかもしれません。

もちろん心のバランスが保たれていて落ち着いている子どももいます。そういう子はストレスに対して自分なりに対処できているので、しょっちゅうは反抗的な態度を見せませんが、たまにストレスを感じたときはきちんと表現する。頻度は少なくとも、そんな姿が見られるなら心配する必要はありませんよ。

そういう子どもの意思に気づき、尊重することが大切ですね。「こうしなさい」で片づけないで、「どっちがいいの?」「どうしていやなの?」と聞いて、答えを待つ。どうしても子どもの意見を否定しなければいけない場合は、頭ごなしではなく、根拠をもって話すことが大切です。

ストレスを感じるような場面でも子どもが何も言わない場合、自分では判断ができず、本当にストレスを感じていないか、あるいは自分は変わる必要はなくて、環境が変わってくれる、というふうに思いこんでしまっていることもあります。その場合、親御さんは手を引っこめて待つべきですね。子どもに考えさせ、選ばせるように心がける。子どもが汗をかいていたら、お母さんがクーラーをつけてあげるのではなく、「暑い?」と聞き自分で上着を脱ぐのを待ち、できないようなら「脱いだら?」と対処のしかただけを教えるという方法です。よく気のつくお母さんほど、ついつい不快を与えないように先回りして行動しがちですが、ストレスに対して自分で対処する、という訓練を積ませる必要があるんです。

親がすべきことは感情の処理のしかたを教えること

――では反対に、感情をむき出しにした反抗に対しては、親はどのような態度をとればいいのでしょうか。

実際には子どもの反抗は、これがいやだから文句を言うとか、やりたくないからしないといったように、筋道立った行動として表れてくるとは限りません。多くはストレスを感じると、黙りこんだり全く関係ないことをしたり人や物にあたったりと、自分なりに発散しようとするものです。ストレスの対象と行動の関連がわかりづらい。

それは「やりなさい」と言われたことに対して「いやだ」という感情がわいても、納得できないからいやなのか、やり方がわからなくて怖いのか、自分で識別できていないのです。だから感情をそのままどこかにぶつけてしまう。したがって大人は、反抗的な態度を見たら、その態度をしかるのではなく、子どもが何にストレスを感じているのか、気持ちを整理する手助けをすることが大切です。

先生に指されて答えられずに机をけった子どもがいるとしましょう。「むかついたから」と本人は言います。でもそれはだれに対してなのか、悔しいのか恥ずかしいのか、本人のなかで区別できていない。そこで大人が「どうしたの?」「何がいやなの?」と整理するきっかけを与えるわけです。答えられなくて恥ずかしかったのなら、机をける必要はなく予習しておけばいいのだし、苦手な問題に限って指されて悔しかったのなら、「あっちの問題だったら解けるんだけどなあ」と交渉してみる手もあるかもしれません。いやなことに対しては、ふさわしい表現のしかたがあり、解決策があることを教えるのです。

このように、たくさんの感情がからまっている状態を解きほぐし、ふさわしい表現をする経験を繰り返すことで、子どもは、この感情にはどう対処したらいいのか理解するし、感情の高ぶりにブレーキをかけることもできるようになっていきます。また、人と人がかかわるとどんなストレスが生じるのか理解し、やがてはストレスを回避する行動をとることもできるようになっていくでしょう。

それを学ぶことが児童期の「反抗」の意味であり、親は反抗を学びにつなげる手助けをしたいものです。

ほどよい距離感を保つ「グッドイナフペアレント」をめざして

――とはいえ、目の前で反抗的な態度をとられると、親もつい感情的になってしかりつけてしまうものです。また、子どもの意見を待つことが苦手だという人もいるようですが。

親だって完璧な人間ではありませんから、いつも正しく冷静に、なんてできませんよ。「ほどよい親=グッドイナフペアレント」でいいんです。感情的になったなら、「さっきは言いすぎた。ごめんなさい」と素直に謝れば、子どもはわかってくれるものです。

また、母親の言うことは素直に聞けなくとも、父親やほかの家族の声であれば届く、ということもありますので、そのあたりはバランスがとれるといいですね。父親が怒っているときに、母親まで一緒になって責めてしまうと、子どもは行き場をなくしてしまいますから、父親が前に出るときは母親が引っこむなど、互いにフォローしあいましょう。何も、「うちの考えはこうだ」という部分を曲げる必要はないと思います。よく「うちは好きにさせているので」と言う方もいらっしゃるのですが、ルールも信頼もなしに自由にさせてしまうのは、自立ではなく放任です。放任では親子の関係は育ちません。核となる最低限のルールや考えを示して、ほかは子どもの判断を尊重する、というような距離感がちょうどよいのではないでしょうか。

今の反抗を好機ととらえて思春期への準備を進めよう

――思春期に向けて、親も準備が必要ですね。

思春期は通過儀礼ですから、大なり小なり、今以上の反発はあると思います。ですから、気づいたときから、心がまえを始めるといいですね。早すぎる、遅すぎるということはありません。

子どもが幼児のうちは、親は子どもの前を歩く存在です。こういうときはどうするべきなのか、見本となって教える。そして小学生になったら、伴走するコーチになる必要がある。ふだんは子どもをそっとしておいて、何かに衝突したときは、もがく子どもと正面から向きあう。「どうしたらいいと思う?」と考えさせる、または考え方を教えるコーチになるべきです。

思春期になったら、親は後ろを走る存在になってほしい。転んでも手を出さない。でも悩んで振り向いたときはそこにいて、「大丈夫だよ!」と押し出す。そうするには、親が「この子は自分で何とかできる」と信じなくてはいけない。子ども自身に考えさせ、つまずいたときには向きあい、信頼関係ができているという実感があれば、なんのてらいもなく「この子なら大丈夫」と思えるのではないでしょうか。

小学生の時期の小さな反抗は、その予行練習をする絶好の機会です。今、親子の信頼関係ができていれば、思春期の反抗を目にしたときも、慌てず、受け止めることができるはずです。

――ありがとうございました。

⇒次ページに続く 保護者の皆さまから寄せられた“わが子の思春期エピソード”をご紹介!

プロフィール

本田 恵子(ほんだ・けいこ)

1960年生まれ。コロンビア大学大学院修了。教育学博士。NY市などでスクールカウンセラーとして勤務後、帰国。玉川大学文学部助教授を経て、現在、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。アンガーマネージメント研究会代表。
おもな著書に、『キレやすい子の理解と対応――学校でのアンガーマネージメント・プログラム』『キレやすい子へのアンガーマネージメント――段階を追った個別指導のためのワークとタイプ別事例集』(ほんの森出版)、『脳科学を活かした授業をつくる――子どもが生き生きと学ぶために』(C.S.L. 学習評価研究所)などがある。

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