特集

学校でも、ご家庭でも! ICTで広がる学び(2)

ご家庭でも! 学びを深めるICTの活用法

 

「振り返り」を促し、「考える力」を伸ばす声かけとは

――ICTの活用で、授業中の子どもたちの学びが深まることはよくわかりましたが、環境が整っていない学校もまだまだ多いと思います。家庭でも、学びを深めるのにタブレットを役立てることができますか?

もちろんできますよ。たとえば、学校でその日に習ったのと似たような問題をZ会の教材で解くとしますね。一つ問題が解けたら、それを写真に撮って、説明してもらうのです。そのとき、おうちの方は、「振り返り」を促す声かけをするのが大事です。

――具体的にはどのように?

 “ボケ”と“ツッコミ”の関係でいえば“ボケ”役になることです(笑)。「えっ、そうやって解くんだ!」「どうして? もうちょっと教えてよ」というふうに。

説明してもらいながら、「じゃあ、こういう場合はどうなるの?」というように、考えることを促すといいですね。子どもが解けなくて考え込んでいても、「ほら、ここに例題があるでしょ。これを解いてごらん」とは言わない。「あれ? 似たような問題、さっきやったんじゃない? どれだったかなあ?」と声をかけて、子ども自身に探させる。子どもが自分で考えるための「足場をかける」イメージです。そして、解けたときには「すごいじゃない。どうやったの? 教えてよ」と尋ねる。そうすると、大人に答えを教えてもらったわけではなく、自分の力で解けたんだと認識できるでしょう? ギリギリのヒントで足場をかけてやりながら、「自分でできた」という経験を積み重ねていく。すると子どもの考える力はどんどん伸びていきます。

「振り返り」を促す声かけ

 

「振り返り」で、”今”の学びが”過去”とつながる

ふだんの家庭学習でもぜひやってみていただきたいのは、「あっ、わかった!」というときのノートや教材を写真に撮ったり、お子さまが説明しているところを動画で記録したりすることです。その日の勉強が終わったら一緒に指さしながら「振り返り」をするといいですね。紙のノートや教材そのものを見ながら説明させると、教材を広げる場所やある程度のまとまった時間が必要になるので、続けていくのが大変ですが、タブレットで画像を見返すだけなら気軽にできます。

お子さまの「わかった!」という瞬間のアルバムができるので、たまに昔のものを眺めると、復習になるだけでなく、自分の成長を実感でき自信になります。

また、画像を見て「振り返り」をするうちに、今できたこととかつて学んだことが改めて結び付いて、知識が再構成されることもあります。点と点だった学びがつながって、線になるのです。

 

日常生活のあらゆる学びを記録し、「見えない学力」を伸ばす

――「振り返り」が大事なのですね。

そうです。学び全般に言えることですが、やりっぱなしではなく「振り返り」をすることはとても大事。だから、保存が手軽にできるICTが非常に効果を発揮するのです。

たとえばサッカーをやっているなら、保護者の方が練習や試合の様子を動画で撮り、終わってから一緒に見て、「ゴールが決まったね。何がよかったのかな?」「次にやるときはどうする?」とお子さまに考えさせてみるといいですね。

すでにタブレットを持っているのなら、親子で一緒に、学びの道具として使う習慣をつけていってはどうでしょう。写真を撮って指さしながら「ここをもっとこうするといいフォームになるかも」などと話す。気づいたことがあれば画像の中に書き込む。教材やスポーツなら「今日いちばんがんばったこと」、はじめて料理をつくったら「今日できるようになったこと」、旅行に行ったら「新たに発見したこと」などを写真に撮ってためていく。それこそが学びの記録、成長を記したポートフォリオになるわけです。

――なるほど、生活のあらゆる場面で、学びを記録しておくということですね。

そうです。慣れてきたら、子ども自身に写真を撮らせるといいですよ。

子どもに写真を撮ってごらんというと、何を撮るべきか探し始めますよね。サッカーなら、足を中心に撮るべきか、上半身も含めた体全体なのか、チームの動き全体なのか。教材なら、今日勉強した中でとくに大事だと思ったのは何か、とか。その時点で子どもが主体的になっているわけです。それを見ながら、友だちや家族と対話をする。振り返る。これも非常に主体的な活動ですよね。これだけ見ても、タブレットが学びを主体的にしてくれるツールであるということがわかると思います。

 

人間の能力は「氷山」にたとえられるというのをご存じでしょうか。知識・技能など、テストで測れる「見える学力」が氷山の水面より上の部分。でもそれは一部であって、水面下には関心・意欲とか感性・経験といった「見えない学力」があって、「見える学力」を支えているという考え方です。

文部科学省は、学力の3つの柱を「知識及び技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」といっていますが、家庭でぜひやっていただきたいことは、実はこの「学びに向かう力・人間性等」、つまり「見えない学力」の部分を育てること。興味のあることを追究していく主体性とか、「まずはやってみよう」という前向きさ、友だちと学び合うコミュニケーションの力など、いろいろあります。こうした力を育てていくと、子どもたちはより輝いていけるし、教科の学び、「見える学力」にも必ずつながってきます。

 

小学生のICTリテラシー

――ICT、とくにタブレットが教育の中で活用されている理由がわかりました。

繰り返しになりますが、タブレットはただのツールに過ぎないのです。でも、大きな可能性を秘めたツールです。学びの瞬間を切り取って保存しておける。過去の自分と成長した自分を比べることができる。それをもとに考えが深まる。いつの間にか、学びが主体的になっている。これほど夢のある学習ツールは今までになかったのではないでしょうか。

せっかくこんなすばらしいツールがある時代に生きているのだから、子どもたちにはぜひ、うまく利用して、自分の学び方を見つけてほしいと思いますね。

子どもに使わせるのは心配だ、と考えていらっしゃる保護者の方も、タブレットを子どもの学びを記録するツールとして、親子で共有しながら信頼関係を築いていくんだ、と考えるといいかもしれません。学びを記録したアルバムを親子で一緒に作っていく、それをもとに会話をしていくというのは、保護者にとってむしろ安心なのではないでしょうか。子どもの考えていることがよくわかりますから。その過程でリテラシーを育て、成長に合わせて、少しずつ子どものプライバシーとして使い方を委ねる部分をつくっていけばいいのです。

先ほど言った「見えない学力」を育てるのは中学生くらいまでが本当に大切な時期ですから、ぜひタブレットを活用してほしいと思いますね。

 

――ありがとうございました。

 小学生とICTの付き合い方について、2016年度の特集でもご紹介しています。

<特集>今知りたい、子どもとICTのつきあい方

 

プロフィール

森本 康彦(もりもと・やすひこ)

東京学芸大学情報処理センター教授。博士(工学)。1991年学習院大学理学部数学科卒業後、企業の情報技術研究所にてソフトウェアの開発に従事。その後、中学校、高校、大学で数学や情報の教鞭をとる。2007年、長岡技術科学大学大学院工学研究科後期博士課程情報制御工学専攻修了。2009年、 東京学芸大学情報処理センター准教授に。2017年より現職。教員や児童、学生を対象に、ICTを使った学び方を紹介する講演やセミナーも多数実施している。

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